映画を観る前に知っておきたいこと

【メニルモンタン 2つの秋と3つの冬】名作『赤い風船』が生まれた街の新しい恋愛映画

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メニルモンタン 2つの秋と3つの冬

名作『赤い風船』が生まれた街、パリの外れメニルモンタンから届けられた新しい恋愛映画。

1975年生まれ、フランス出身、美術学校卒の新鋭監督セバスチャン・ベベデールが生み出した、自身を投影したともいえる主人公アルマン。70年代生まれ、美大卒の職無し、もちろん独身、ぱっとしないまま青春時代を終えようとしている33歳のアルマンが、メニルモンタンで織り成す恋物語は、遠く離れた日本で暮らす若者たちにも身近で親密なものとなるはずだ。愛嬌たっぷり、魅力的な主人公アルマンを、あなたもきっと大好きになる。

この親愛なる主人公アルマンを見事なはまり役として演じているのは、現在フランス映画界で大きな注目を集めているヴァンサン・マケーニュ。2013年の第66回カンヌ国際映画祭では彼の出演した作品が3本も上映され、ここ日本でも2011年に『女っ気なし』、2013年には『やさしい人』、そして2014年の『EDEN/エデン』と、主演・出演作の公開が続いている。

章仕立てにエピソードを積み重ねる構成や、アルマンをはじめとする登場人物たちが観客に語りかける演出、8ミリビデオや16ミリフィルムで撮影した映像など、本作はフランス映画界の新しき才能と評されるベベデール監督による仕掛けも興味深く面白い。そしてこの作品の細部を豊かにしているのが多岐からの引用群だ。映画関連からはアラン・タネールの『サラマンドル』やジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』やジャド・アパトー監督が。美術の世界からはムンク、そして音楽界からはジョイ・ディヴィジョンといった具合に。ピンとくる人には、この様々な引用も大きな楽しみとなるはずだ。


  • 製作:2013年,フランス
  • 日本公開:2015年12月5日
  • 上映時間:90分
  • 原題:『2 automnes 3 hivers』

予告

あらすじ

パリの外れメニルモンタン。この街で暮らす30代のアルマンは、美大を卒業後、定職にも就けず、ぱっとしない日々を送っていた。メニルモンタン 2つの秋と3つの冬33歳の誕生日を迎え、アルマンは生活を改める為に「仕事を見つけ、運動を始め、タバコを止める」ことを決意をする。メニルモンタン 2つの秋と3つの冬公園でのジョギングを開始したアルマンは、そこで偶然知り合ったアメリという女性に恋をしてしまう。ある晩、アメリが夜道で二人の男に襲われそうになっていたところをアルマンが助けに入る。アルマンは刃物で刺され怪我を負うのだが、この事件をきっかけに二人の仲は親密になっていく。メニルモンタン 2つの秋と3つの冬アルマンとアメリ、そして親友たち。ぱっとしない大人たちの恋の物語の行方は……


映画を見る前に知っておきたいこと

メニルモンタンの街

本作の舞台となったメニルモンタンというのは少し風変わりな特徴ある街だ。独特の発展の歴史があり、映画文化とも関わりをもつようになったメニルモンタンの街に想いを馳せながら本作を見てほしいので、簡単に紹介しておく。

メニルモンタンはパリ北東部の高台にある労働者地区で、移民が多い下町情緒溢れる街だ。19世紀前半までパリではなく、「パリ近郊の独立した村」であった。酒場やダンスホールが増え、怪しげな刺激を求めて多くの人々が集まった。

20世紀になり、ポーランドやロシアなど多くの亡命者を受け入れ、その後アラブ・ユダヤ・アフリカ移民が多く住み始め、国際色豊かな街として知られるようになった。しかしパリの観光地として取り出されることはなく「庶民だけのエリア」であり続けた。「メニルモンタン大通り」は丘の上からパリの中心部の景色がが一望できる。この丘はかつてブドウ畑が広がっていた。そのため曲がりくねった小さな坂道が今でも残っている。

坂道とは反対に続くメインストリートの「オベルカンフ通り」。今若者たちに人気の地区となっている。新しいカフェやバー、小劇場ができ、今まで観光地として取り上げられることもなかった下町が変化を見せている。

多くの写真家、映画監督がこの地区を訪れるようになり、この地区を愛した芸術家は多い。アルベール・ラモリス監督の映画「赤い風船」の舞台になった。この映画の中でメニルモンタンはストーリーと見事に溶け合い、魅力的な街として描かれている。

細かいチャプターから物語を構成する手法

新鋭監督セバスチャン・ベベデールは本作を自由な手法で撮っている。そこが映画の見所となっているわけだが、低予算での製作を逆手に取ったような発想は素晴らしい映画を生み出した。

例えば、物語全体を細かいチャプターに分けているところもおもしろい。本作は2分から3分で一つのことを表現していき、それが全部で50章からなって全体を構成している。この手法は低予算という状況に対してはとても有効だ。編集の手間はあるかもしれないが、その分現場の時間は短くなる。

しかし、これは低予算であったから用いた手法というわけではない。ベベデール監督はむしろ自由に撮りたいから、出資者の意見を聞かずにすむようあえて低予算での撮影を選択した。新しい才能の前では予算の問題は些末なことのようだ。

-ヒューマンドラマ, 洋画
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