映画を観る前に知っておきたいこと

きっと、うまくいく
インディアンドリームの破綻

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きっと、うまくいく

あなたの人生が光り輝くヒントがきっとある!

 インド屈指の名門工科大学ICEに入学してきた自由奔放で天才肌のランチョー、工学よりも写真を愛するファラン、なんでも神頼み苦学生のラージュー。競争社会を支持する鬼学長と対立しながらも、3人は“Aal Izz Well(うまーくいーく)”を合言葉に未来を切り開いていく。

 インド映画初となる興行収入100億円突破の大ヒット作『PK』(14)の監督ラージクマール・ヒラニ×主演アーミル・カーンが初めてタッグを組んだ青春コメディ。学園青春グラフィティと並行させた10年後の物語がロードムービー仕立てで描かれる。

 2010年インドアカデミー賞で作品賞を始め史上最多16部門受賞。2009年公開当時、インド映画の歴代興行収入記録を塗り替えたマサラムービーを代表する1本である。


予告

あらすじ

 インド屈指の難関工科大学ICEに入学してきたファラン(R・マーダビン)とラージュー(シャルマン・ジョーシー)、そして自由奔放な天才ランチョー(アーミル・カーン)。寮でルームメイトとなった3人は何をするにも一緒だった。しかし、学生たちに厳しい競争を強いるウイルス学長にランチョーが反発したことから、3人揃って目の敵にされることに。

きっと、うまくいく

© Vinod Chopra Films Pvt Ltd 2009.

 ある日、ランチョーたちの先輩ジョイは卒業製作が間に合わず、競争社会から脱落したことを苦に自殺してしまう。成績最下位のファランとラージューは家族の期待を一身に背負いエンジニアを目指していたが、彼らもまたプレッシャーに押しつぶされる寸前だった。情熱さえあれば成功は後からついてくると、ランチョーはいつも親友たちを励ました。

きっと、うまくいく

© Vinod Chopra Films Pvt Ltd 2009.

 10年後、ファランとラージューはかつての同窓チャトルから突然母校に呼び出される。大学時代の成績が常に2位止まりだったチャトルは、出世した今の自分を見せつけるためだけに、卒業以来ずっと行方不明のランチョーを捜し出していた。ファランとラージューも親友との再会を胸にランチョーが暮らす家を訪れるが、そこにいたのは同姓同名の別人だった……


映画を観る前に知っておきたいこと

 日本におけるインド映画人気の火付け役となったのが、1998年に公開された『ムトゥ 踊るマハラジャ』(95)だった。この作品以降、日本でも年に数本ペースでインド映画が公開されるようになったが、後の韓流人気に押され最初のインド映画ブームは呆気なく終息した。

 第二次インド映画ブームとも言うべき兆しが訪れたのが2012年。インド映画としては破格の制作費が投じられたSFアクション『ロボット』(10)によってインド映画は再び注目を集める。そして、インド映画ブームを今度こそ決定的なものにしたのが2013年に公開された『きっと、うまくいく』(09)である。

 歌とダンスに多様なジャンルをミックスさせた3時間前後の娯楽大作。日本でマサラムービーと呼ばれる大衆向けインド映画の中において、この作品は若者の自殺問題から競争社会に鋭くメスを入れる。しかし、そんな社会派なテーマがあるからこそ、逆に元気ももらえる。これぞ日本人に愛されるマサラムービーだ。

インディアンドリームの破綻

きっと、うまくいく

© Vinod Chopra Films Pvt Ltd 2009.

 インドでは子供が生まれると、男の子ならエンジニア、女の子なら医者にさせたいと願う親が多いという。しかし、人生の成功を象徴するそれらの職業に就くことは決して簡単ではない。貧富の差が著しいインドにおいて、経済格差はそのまま子供の教育格差へと繋がっている。小学校と中学校の8年間が義務教育とされているが、中退して家計を支える子供も多い。貧困層ほど生活を圧迫しながら子供の教育に投資しなければならないのが現実である。

 カーストや貧困からの脱却を意味する一流企業への就職。家族一丸となって厳しい競争を勝ち抜いた先には、確かにアメリカンドリームならぬインディアンドリームがある。しかし、それは本当に本人が望んだ人生なのだろうか。成功を夢見る若者ほど、途中で降りることが許されない競争社会にさらされ、時に自らの幸せさえ見失っていく。名門工科大学ICEの卒業を目前に脱落したジョイの自殺は、まさに典型的なインディアンドリームの破綻である。

 本作は大衆向け娯楽映画という枠の中で、競争社会に対する批判がストレートに表現される。社会の暗部をついた重たいテーマにも、笑って泣けるマサラムービーの魅力が詰まっている。何か教訓めいたものというよりは、呪文のような言葉“Aal Izz Well(うまーくいーく)”がよっぽど心に残るのだ。副作用なし、効能弱め。競争社会に疲れた人々にとって、ビタミン剤のような映画である。

-コメディ
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