映画を観る前に知っておきたいこと

3月のライオン 前編
羽海野チカもう一つの代表作ついに映画化

投稿日:2017年1月17日 更新日:

3月のライオン 前編

闘うことでしか生きられない。

累計発行部数800万部以上の大ヒット少女漫画『ハチミツとクローバー』の羽海野チカが、将棋を題材に挑んだもうひとつの代表作『3月のライオン』。連載10年目の今年、前後編の二部作でついに実写映画化される。

桐山 零、天才と称される17歳の若きプロ棋士。彼には家も、家族も、居場所も何もなかった。親子、兄弟姉妹、友達、師弟、人と人を結ぶ愛を求めて、魂がぶつかり合う感動のエンターテイメント。

『るろうに剣心』シリーズ(12/14/14)を始め、漫画原作の実写映画化を得意とするヒットメーカー大友啓史監督が、神木隆之介演じる孤独な青年棋士が三姉妹との出会いを通じて成長していく姿を描き出す。

主人公を癒す三姉妹を有村架純、倉科カナ、清原果耶。ライバルの二海堂を特殊メイクによってまるで別人に変身した染谷将太が熱演する他、佐々木蔵之介、伊藤英明、豊川悦司ら日本を代表する俳優たちが脇を固める。

予告

あらすじ

若き天才と呼ばれる17歳のプロ棋士、桐山 零(神木隆之介)は、東京の下町でひとり暮らす。幼い頃に交通事故で両親と妹を失い、父の友人である棋士の幸田に引き取られた彼は、ある事情から幸田家を出るしかなかった。

3月のライオン 前編

© 2017 映画「3月のライオン」製作委員会

深い孤独を抱えながら、強くあるために将棋を指し続けていたある日、零は川向うに住む川本家の三姉妹と出会い、彼女たちとのにぎやかな食卓に居場所を見出していく。

3月のライオン 前編

© 2017 映画「3月のライオン」製作委員会

様々な人生を背負った棋士たちが頭脳と肉体と精神のすべてを賭けて挑む、想像を絶する戦いが零を待ち受ける ──

映画を観る前に知っておきたいこと

今や映画のひとつのジャンルとして確立された少女コミックだが、2時間ほどの中に原作の情報量をすべて収めることはできないという前提が、多くの作品をシンプルな純愛ストーリーへと向かわせているのかもしれない。このジャンルは原作ファンのイメージを壊さないよう、相当神経をすり減らしながら製作されているのではないかと想像する。

そんな中でも『3月のライオン』は原作者・羽海野チカの独特の世界観が異彩を放つ少女漫画だ。映画は彼女の作家性をどこまで引き継げるのだろうか?

羽海野チカの作家性

羽海野チカという漫画家は、どこまでもゆっくりと丁寧に心を描写してゆく。それは人が実際に成長する速度のように。性的なモチーフを扱わない作風は青臭さを残しながらも、恋愛だけではない複雑な感情の機微に触れる彼女の優しいタッチは時折やけに大人びて映る。

そんな羽海野チカにしか描けないと感じさせるのが『3月のライオン』である。

なぜ『ハチクロ』の作者が棋士の世界に踏み込んだのか、初めは不思議でならなかった。羽海野チカ自身もその理由をうまく説明できないとし、どうしても気になったからだと答えを濁している。しかし言葉足らずなその表現も、ある程度漫画を読み終えた頃には腑に落ちた。作家としての感性がこの物語に彼女を引き寄せたのだろうと。

もちろん漫画で盤上の闘いをすべてトレースすることは許されない。だからこそ、彼女のような心の動きをつぶさに捉えられる漫画家にしか描き出せない世界なのだ。実際に一癖も二癖もある棋士たちの魂の削り合いは、『ハチクロ』以上におもしろい。

そんな彼女の得意とするゆったりとしたテンポが、映画化する上で物語の多くを語る足枷になることを意識してか、前後編の二部作として製作されるこの映画化には原作への敬意が感じられる。

あとがき

毎回、羽海野チカのコミックの最後には感謝を綴ったおまけ漫画が執筆されている。そこでの周りに気を遣い過ぎる人柄を逆手に取った、彼女の病的な語り口は妙に癖になる。愛猫がヒッチコックに似ているなんていう話を作者のコメント欄に載せる彼女が、どうか気に入るような映画であって欲しい。

-ヒューマンドラマ, 青春
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