映画を観る前に知っておきたいこと

【ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~】芸術的ヴァンパイア・ホラー

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ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~

まったく新しいヴァンパイア・ホラー誕生。イランの架空の町を舞台にペルシャ語で展開される物語とモノクロの映像美とイラン・ミュージックが融合し、かつてない斬新な世界観で描かれる。デヴィッド・リンチ監督『イレイザーヘッド』、ジム・ジャームッシュ監督『ストレンジャー・ザン・パラダイス』と“鬼才”と呼ばれる監督たちの長編デビュー作と並び鮮烈な才能を開花させた女性監督アナ・リリ・アミリプール。

サンダンス映画祭で脚光を浴び、シッチェス国際映画祭で審査員賞&監督賞、ゴッサム・インディペンデント映画賞ブレイクスルー監督賞を受賞するなど、今最も才能あふれる作品だ。


  • 製作:2014年,アメリカ
  • 日本公開:2015年9月19日
  • 上映時間:99分
  • 原題:『A Girl Walks Home Alone at Night』
  • 映倫区分:PG12

予告

あらすじ

ここはイランの何処かにあるゴーストタウン“バッド・シティ”。ジャンキー、ポン引き、娼婦・・・

「彼女の牙は、美しい」

ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~そこは死と絶望に満ちている。 暗闇が覆い尽くす夜、町に現れる黒衣の美しい少女。静かにそして冷たく、町にはびこる悪人たちを襲うその正体は、残忍で美しい牙を持つヴァンパイア。ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~バッド・シティに住む青年アラシュは、ヤク中の父親の借金のカタに、売人兼ポン引きのサイードに愛車を奪われてしまう。裕福な家の庭師として働くアラシュは、令嬢の部屋から高価なピアスを盗み、愛車と交換するためにサイードの家へ向かう。だがその頃、サイードは、ナンパして家に連れ込んだ少女に噛み殺されていた。アラシュは死体を隠し、愛車とともに彼の仕事をそっくり引き継ぐ。

ハロウィンパーティーの夜、運命的に出会ったアラシュと少女。2人はその場で恋に落ちるが、互いの素性を打ち明ける事はできない。やがて、2人を繋ぐ人々の身に起こった事件をきっかけに、運命が大きく動き出す。それはまるで血塗られた壮絶な世界へとふたりを導くように・・・


映画を見る前に知っておきたいこと

新鋭女性監督アナ・リリ・アミリプール

こんな斬新な映画を長編デビュー作で撮ってしまう監督を紹介しないわけにはいかない。しかも斬新と一言に言っても、それは奇抜なアイデアや革新的な手法によるものではない。フィルム・ノワール(1940年代前半から1950年代後期にかけて、主にアメリカで製作された犯罪映画)やマカロニ・ウェスタン(1960年代から1970年代前半に作られたイタリア製西部劇)などのこれまでにあったエッセンスを作品に取り入れでいるが、本作が斬新であるのはそれらを融合させた時のバランス感覚に他ならない。

そうしたエッセンス以外にも、アナ・リリ・アミリプール自身が手掛けた脚本と、モノクロの映像美、そこに挿入されたイラン・ミュージック、それらも絶妙なバランスで融合され、映画として高い芸術性を要している。これを長編デビュー作でやってしまうのは驚異的な才能だと思う。

アナ・リリ・アミリプール監督は、絵画や彫刻、さらにはインディーズ・ロックバンドのフロントマンとして各地をツアーして回るなど、これまでさまざまなジャンルの芸術に精通してきた。こうした経歴が本作を芸術的にしたセンスのもととなっているはずだ。

映画に関しては、彼女がまだ12歳の頃、パジャマパーティーに来ていた友達を登場させたホラー映画を撮ったのが始まりで、手がけた数々のショートフィルム作品は、ベルリン国際映画祭、ロンドン映画祭、エディンバラ国際映画祭、ハンブルグ国際短編映画祭、スラムダンス映画祭、ナッシュビル映画祭、ニューヨーク・シティ国際映画祭、韓国子ども映画祭など、世界中の映画祭で上映された。本作を撮る以前にその才能の片鱗はあった。

そして、次回作『The Bad Batch』はキアヌ・リーヴス、ジム・キャリーが出演することが決定しているなど、世界で活躍する俳優陣からも期待されている。とりあえず本作を見ればそんな世界中の評価も納得できるはずだ。おそらくこの監督、どんなジャンルを撮ってもおもしろい。エンターテイメント性もあると思うので興行的にヒットする作品も出てくるはずだ。

公式サイトで引き合いに出されていた、デヴィッド・リンチとジム・ジャームッシュに続く監督というのもあながち大げさではないかもしれない。ちなみにジム・ジャームッシュは2013年に『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』という、デトロイトとタンジールを舞台に、現代に生きる吸血鬼のカップルを描いた異色ラブストーリー映画を撮っている。第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、パルム・ドールを争った作品だ。“鬼才”が撮るヴァンパイア映画という意味では比較してみるのもおもしろいかもしれない。ジム・ジャームッシュは“鬼才”の上に成熟しているが・・・

-ホラー, 洋画

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