映画を観る前に知っておきたいこと

【夏の夜の夢】シェイクスピア原作の舞台と映画のハイブリッド

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夏の夜の夢

シェイクスピア原作の舞台「夏の夜の夢」ニューヨーク・ブルックリンの劇場Theatre for a New Audience (TFANA)で2014年に上演され大ヒットとなった。トニー賞受賞演出家ジュリー・テイモアの新作として、その独創的な演出は多くの観客を魅了した。本作はジュリー・テイモア本人が監督を務め、自身の舞台「夏の夜の夢」を余すことなく伝えてくれる。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のロドリゴ・プリエトが撮影監督を務め、手持ちカメラやステディカムを駆使しながら舞台上を様々な角度から撮影し、生の舞台ではわからないような俳優ののクローズアップやリアクションまで映し出す。さらには、アカデミー賞受賞作曲家エリオット・ゴールデンサールが音楽を演出し、映画ならではの作品にまで昇華している。

豪華なキャストには、英国舞台界最高峰の賞とされるローレンス・オリヴィエ賞を受賞した経歴をもつキャサリン・ハンターや、映画「ブラッド・ダイヤモンド」に出演したデヴィッド・ヘアウッド、その他オクウィ・オクポクワシリなど、現在舞台で活躍するトップクラスの俳優が出演している。

身近な映画館でテイモアの新作舞台公演が見れるのはこの上ない贅沢だ!

    • 製作:2014年,アメリカ
    • 日本公開:2015年11月13日
    • 上映時間:148分
    • 原題:『A Midsummer Night’s Dream』
    • 原作:「夏の夜の夢」シェイクスピア

あらすじ

アテネの公爵シーシアスとアマゾン国の女王ヒッポリタとの結婚式は4日後に迫っていた。そこへ貴族イジーアスから訴訟が持ち込まれる。イジーアスは娘のハーミアをディミートリアスという若者と結婚させようとしたが、父の意向を無視して他の男と結婚すると言うのだ。アテネの法律では、親の意向を無視した娘に与えられる選択は死か、生涯を神々に捧げるか、どちらかしかない。公爵シーシアスは自らの結婚式までの4日間、ハーミアに考える猶予を与えた。しかし、ハーミアと恋人ライサンダーは駆け落ちを決意する。その夜、二人は森で会うことに。そしてハーミアはこのことを友人ヘレナに打ち明けていた。

ヘレナはハーミアの婚約者ディミートリアスを愛していた。ハーミアを想うディミートリアスも森に行くと考えたヘレナは、二人の後を追って森に向かう。その頃、森の中では公爵シーシアスと女王ヒッポリタの結婚式を祝うために芝居の稽古をする6人の職人がいた。ハーミアと恋人ライサンダー、友人ヘレナと婚約者ディミートリアス、芝居の稽古をする6人の職人、かくしてそんな10人が妖精の住む森へ集まってしまった。夏の夜の夢森の中では、妖精の王オベロンと女王ティターニアがインドから連れ帰った子供をめぐって夫婦げんかの真っ最中だった。怒った妖精王オベロンは、キューピッドの矢の魔法から生まれた媚薬を使って女王ティターニアに恥をかかせようと考えていた。この媚薬には、目を覚まして最初に見たものに恋してしまう作用があった。また妖精王オベロンは、ハーミアの婚約者ディミートリアスがヘレナを邪険に扱う様子見て、媚薬をディミートリアスにも塗ってやろうと、パックに命じるのだった。

しかし、パックはディミートリアスの顔を知らない。パックは間違えて駆け落ちの途中で眠ってしまったライサンダーに媚薬を塗ってしまう。ライサンダーが目覚めて最初に見たのはヘレナだった!間違いに気付いた妖精王オベロンは、自らディミートリアスに媚薬を塗るのだった。しかし結果は、ライサンダーとディミートリアスがヘレナを愛するようになり、4人の関係があべこべになってしまった。夏の夜の夢さらに、いたずら好きのパックは一人の職人の頭をロバの頭に変えてしまう。他の職人たちはこれを見て驚き逃げていってしまう。そんな騒ぎで目を覚ました妖精の女王ティターニアは、なんとロバ頭の職人に求愛する始末。妖精王オベロンはこれを見て気の毒になり、職人のロバ頭を元に戻す。すると女王ティターニアの魔法も解け、二人の夫婦喧嘩は無事に終わるのだった。

そしてライサンダーにかかった魔法も解かれ、ハーミアとは元通りの関係に。一方、ディミートリアスはヘレナに求愛し、ハーミアの父イージアスに娘の死刑を取りやめるよう説得するのだった。こうして公爵シーシアスと女王ヒッポリタとの結婚式で二組の恋人たちも一緒に式を挙げ、そこでは職人たちのおもしろおかしい悲劇が演じられた。

映画を見る前に知っておきたいこと

舞台を映画ぐらい身近に

最近では、この舞台演劇を映画化する試みは珍しくない。その代表的なものが、イギリス国立劇場ロイヤル・ナショナル・シアターが、世界で上演された舞台の中から、特に話題になった舞台を選りすぐって、映画館で上映するプロジェクト“ナショナル・シアター・ライヴ”だ。この企画はすでに5回行われている。そのおかげもあってか、舞台演劇を映画化する下地が出来上がってきているようにも感じる。そしてそれと同時に、世界の舞台が僕たちにとって身近なものとなってきている。

普通に生きていれば、なかなか舞台を見に行くきっかけとは出会わないだろう。それが本作や“ナショナル・シアター・ライヴ”によって映画と同じぐらい敷居が下がっている。それでも上映する映画館もまだまだ少ないのが現状だが、映画館で世界の舞台に出会えるのは贅沢だ。

ナショナル・シアター・ライヴ”は収録した内容に手を加えず、劇場の臨場感そのまま映画で味わえるように製作されているが、本作は手持ちカメラやステディカムを駆使しながら舞台上を様々な角度から撮影し、生の舞台ではわからないような俳優ののクローズアップやリアクションまで映し出し、アカデミー賞受賞作曲家エリオット・ゴールデンサールが音楽を手掛けるなど映画ならではの演出がされている。しかし、それは舞台の臨場感を損なうようなものではない。なぜなら、舞台を演出したジュリー・テイモアが本作の監督を務めているからだ。

「映像化にあたり様々なショットを映画的な手法で追加で撮影しています。まさに映画と舞台のハイブリッドと言えます」

ジュリー・テイモア

-コメディ, ラブストーリー, 洋画

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