映画を観る前に知っておきたいこと

ある天文学者の恋文
トルナトーレが愛の真理を紐解く

ある天文学者の恋文

その<謎>を解き明かしたとき、極上のミステリーは切ない愛の物語に生まれ変わる

著名な天文学者エドと教え子エイミーの秘密の恋。エドの突然の訃報を受け入れられないエイミーの元へ、彼の優しさとユーモアが詰まったメールやプレゼントが届き続ける。

『ニュー・シネマ・パラダイス』(88)で知られるイタリアの名匠ジュゼッペ・トルナトーレが、ついに男女の愛に切り込む。オスカー俳優ジェレミー・アイアンズとウクライナ出身の女優オルガ・キュリレンコを主演に迎えたミステリアスかつ切ないラブストーリー。

2016年アカデミー賞作曲賞に輝いたエンニオ・モリコーネが、再びトルナトーレ作品で音楽を手掛ける。


予告

あらすじ

著名な天文学者エド(ジェレミー・アイアンズ)と彼の教え子エイミー(オルガ・キュリレンコ)は、周囲には悟られぬよう秘密の恋を謳歌していた。様々な土地で講演活動を行うエドを、いつものように見送り、しばしの別れを惜しむエイミーだった。彼女は大学に通う傍ら、映画のスタントの仕事をしながら、エドからの連絡を受ける日々を送る。

ある天文学者の恋文

© COPYRIGHT 2015 – PACO CINEMATOGRAFICA S.r.L.

そんなある日、エイミーは大学の講義の中で、エドの突然の訃報を知らされる。つい最近も連絡を取り合っていた彼女にとって、それはあまりにも信じ難い現実。どうして、エドは病気のことを自分に黙っていたのか?そんな思いを抱える彼女の元に、エドからの優しさとユーモアに溢れた手紙やメールが届き続ける。それは、いつもエイミーを見ているかのような内容ばかりだった。

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エドの遺した謎を解き明かそうと、エイミーは彼が暮らしていたエディンバラや、かつて二人で時間を過ごしたイタリア湖水地方のサン・ジュリオ島を訪れる。そこで、エイミーは誰にも言えずに封印していた自分の過去を、エドが密かに調べていたことを知るが……


映画を観る前に知っておきたいこと

天文学者のエドと教え子のエイミー。歳の離れた二人にとって、いずれはエドが先に亡くなり、エイミーが一人残される未来は決して避けられない。それは、宇宙に輝く星々の一つ一つに寿命があるように、誰にも変えようのない真実である。真っ当であれば、最愛の人を持つ全ての者が、自分と相手を同時にこの世界から消すことはできないのだから。

そんな時、永遠に続く愛は存在するのだろうか?ジュゼッペ・トルナトーレは、この作品でその大いなる問いに答えようとしている。

誠実な愛のかたち

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幾千億もの恒星の地球からの距離と光の速度の関係から、星が死に存在しなくなった後も、その姿を見続けることができるという。つまり、僕たちが現在見ている星は、既に存在していないかもしれないのである。天文学者たちが存在しない星と対話するように、エイミーもまたエドが施した魔法によって、存在しないはずの恋人との対話を繰り返す。

まるで、いつもエイミーを見ているかのようなエドからの不思議なメッセージ。その優しさが、時にエイミーを縛り、時に彼女の成長を促す。そして、届くはずのないエドの元へ返信を続けるエイミー。それは、微かに無限の愛の存在を感じさせる甘美な愛の物語である。

しかし、その甘美な瞬間も愛が持つ一つの側面に過ぎない。なぜなら、エドからのメッセージは数百万光年離れた場所から送られてくるわけではないからだ。見栄っ張りな年上男の涙ぐましい努力の結晶こそが、エイミーに掛けられた魔法の正体である。

愛の探究者とは、常にその苦痛に身を投じた者であり、またその苦痛の中でしか愛の深淵には触れることができない。トルナトーレは究極とも言える愛の真理について、最も誠実な愛のかたちをもって答えてくれる。

あとがき

この作品の心証を大きく左右するのが、エドとエイミーの関係性である。周囲には悟られぬよう逢瀬を重ねる彼らは不倫関係だったのか。観る方からすれば、感情移入の境目にすらなり得る疑問だ。

しかし、エドの娘の口から家族を傷つけたことが語られる一方で、エドの妻は物語に一切登場しない。つまり、妻との離別や死別の可能性も捨てきれない描き方がされている。そこは、敢えてトルナトーレが残した余白か。いずれにせよ、僕たちに与えられた確信は、エドが身勝手な愛の殉教者であるということだけだ。

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