映画を観る前に知っておきたいこと

ブレア・ウィッチ
正統な続編とされる理由とその評価

投稿日:

ブレア・ウィッチ

その森には、“何か”がいる ──

1999年、わずか600万円の制作費で255億円の興行収入を叩き出した伝説的ホラー映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の正統な続編。

20年前、魔女伝説を題材としたドキュメンタリー映画を撮影するためブラック・ヒルズの森に入り、そのまま失踪したヘザー。ネット上で彼女が映る映像を見つけた弟ジェームズは、“ブレアの魔女”の謎を解くためあの森に踏み込む……

『サプライズ』(11)『ザ・ゲスト』(14)のアメリカ・ホラー映画界の新鋭アダム・ウィンガードが監督を務める。

予告

あらすじ

“ブレアの魔女”をテーマにしたドキュメンタリー映画製作のため、ブラック・ヒルズの森に入り、そのまま消息を絶ったヘザー。彼女の失踪から20年後、弟のジェームズ(ジェームズ・アレン・マキューン)は、姉らしき人物が映った映像をYouTubeで見つける。

ブレア・ウィッチ

© 2016 Lions Gate Films Inc.

ジェームズは“ブレアの魔女”の謎を解き、姉を救うため、仲間たちとあの森に踏み込んだ。しかし、彼らの周囲には“何か”がいた……

映画を観る前に知っておきたいこと

『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の正統な続編は、2000年に『ブレアウィッチ2』としてすでに製作されているはずでは?

あまりにセンセーショナルだった前作の勢いは見る影もなくなっていたこの続編を掻き消すかのように、正統な続編と高々に謳う本作はいったい何が違うのか?

正統な続編とされる理由

1999年、社会現象にまでなった『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』。その大きな要因は、「魔女伝説を題材としたドキュメンタリー映画を撮影するために、森に入った三人の学生が消息を絶ち、1年後に彼らの撮影したスチルが発見された。三人の学生が撮影したビデオをそのまま編集して映画化した」という設定だった。

このファウンド・フッテージ(第三者によって発見された未編集の映像という設定)を駆使した手法と、物語の核心に繋がる部分の情報を極端に制限したメディアミックス戦略により、観客にあたかも実話であるかのような錯覚を起こさせた。作品そのものというより、この斬新な切り口が見事にハマったのである。

『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の大きな成功を受けて、翌年に製作されたのが『ブレアウィッチ2』である。前作のようなモキュメンタリー(ドキュメンタリー形式のフィクション)の手法を排し、「映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の影響で起こった殺人事件を追っていく」という設定が使われた。

製作側がここでも斬新な切り口を模索した結果かもしれないが、あえて『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を完全なフィクションとして物語に登場させたことがシリーズ全体の価値を落としてしまっている。

『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の監督を務めたダニエル・マイリックとエドゥアルド・サンチェスは製作総指揮としてクレジットされているが、この続編は彼らの意に反して製作されたという認識を示している。まったく、作った当人たちも認めていない作品を観客にいったいどう評価しろというのか。

本作では再び、製作総指揮としてダニエル・マイリックとエドゥアルド・サンチェスの名前はクレジットされているが、監督は前2作とも違う新鋭アダム・ウィンガードが勤めている。そんな中、『ブレアウィッチ2』と本作で決定的に違うのが、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』で描かれた世界の20年後が舞台になっている点だ。

これにが、本作が正統な続編とされている理由だ。

ただ、これはこれで『ブレアウィッチ2』は何だったのか?と思わせるような設定である。きっと観客の目には、名作ではなく、迷走に映るだろう。

当時、世界を席巻した『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の勢いは凄まじく、低予算ホラーを広く世間に知らしめた伝説的な作品でありながら、どうもホラー映画の金字塔という感じがしないのは続編の存在に原因がある。

評価(ネタバレなし)

アメリカではすでに公開されているが、残念ながらその評価は低い。

正統な続編とされる本作が、1999年の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を踏襲した作品になっていることは確かだ。モキュメンタリーによる臨場感、多くを語らない謎を残したまま展開されるストーリー、それらは健在だが、正統な続編ゆえ焼き増し感は否めない。

ましてや、当時目新しかったメディアミックス戦略もなく、完全にフィクションだと認識された状態での公開は、大目に見ても『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』ファンにしか届かないだろう。

まるで『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』が戦略ありきの作品だったと、自ら露呈しているようで少し心苦しい。

エドゥアルド・サンチェス

-ホラー, 洋画
-, ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。