映画を観る前に知っておきたいこと

【ブルックリン】2つの運命の間で揺れる無力な女性の成長物語

投稿日:2016年6月20日 更新日:

ブルックリン

1950年代、故郷アイルランドから新天地アメリカへ。内気な少女は愛が見えない街で未来を探して、洗練された女性へと成長してゆく。そして彼女は2つの運命の間で揺れながら未来を選択する。

誰を愛するかを決めることが、どんな自分になりたいかという答えになる。手紙の時代の物語りが、永遠の真実に気付かせてくれる……

2016年のアカデミー賞で作品賞、脚色賞、主演女優賞の主要3部門にノミネートされ、世界最大の映画レビューサイトRotten Tomatosでも批評家98%、観客90%という高い支持を集めた。

少女が成長してゆく姿に静かな感動と共感が生まれる。

    • 製作:2015年,アイルランド・イギリス・カナダ合作
    • 日本公開:2016年7月1日
    • 上映時間:112分
    • 原題:『Brooklyn』
    • 原作:小説「ブルックリン」コルム・トビーン

予告

あらすじ

1950年代、アイルランドの小さな町で暮らすエイリシュは大人しく目立たない内気な少女だった。エイリシュとは対照的に美人でキャリアウーマンの姉は、そんな彼女の将来を心配し、ニューヨークへ行くことを勧める。

ニューヨーク・ブルックリンにやって来たエイリシュだが、そこでは生まれ育った小さな町とはあまりに違う都会的な生活が待っていた。ブルックリンの高級デパートでの仕事には慣れず、下宿先の同郷の女性たちは既に洗練されて会話もままならなかった。ブルックリンアイルランドから届く姉の手紙を読み返し涙に暮れるエイリシュの様子を見かねて、同郷の神父はブルックリン大学の会計士コースを受講するよう勧める。

そこでエイリシュは学ぶ喜びを知り、ホームシックから解放され、少しずつ前向きになっていった。そんな時、あるパーティーでイタリア系移民のトニーと出会う。毎週大学に迎えに来る彼の誠実さに少しずつ心を開いていく。ブルックリン最新の水着に身を包み、コニーアイランドでトニーと過ごすエイリシュは、すでに洗練されたニューヨーカーになっていた。

ある日、故郷から姉の訃報が届く。エイリシュはトニーと離れることを決断しなくてはならなかった。二度と彼女に会えないかもしれないと感じたトニーはエイリシュにプロポーズをする。ブルックリンそしてアイルランドへ帰郷したエイリシュは、トニーとは正反対のジムと再会し、2つの運命の間で揺れ動く。ブルックリンエイリシュは自分が二人いるような奇妙な感覚になった。ブルックリンで洗練された女性になって出会った人。アイルランドの本当の自分を知る人。それぞれが別の幸せな人生だった……

映画を見る前に知っておきたいこと

評価の高い原作と脚本

2016年のアカデミー賞で作品賞、脚色賞、主演女優賞の主要3部門にノミネートされたことからも映画の評価の高さがうかがえるのだが、中でも脚色を手掛けたのが「ハイ・フィデリティ」「アバウト・ア・ボーイ」の原作者ニック・ホーンビィだというのはファンにとってはそそる要素ではないだろうか。

ここでイマイチ曖昧な脚本賞と脚色賞の違いについて触れておきたい。

簡単に説明すると、脚本賞はオリジナル脚本に贈られる賞であり、脚色賞は原作(小説や戯曲)がある脚本に対して贈られる賞だ。

本作の基となったのは、2009年のアイルランドの作家コルム・トビーンによる小説「ブルックリン」だ。この小説はここ10年で最も高い評価を得た1冊と言われている。それをニック・ホーンビィが脚本に起こしたので、脚色賞にノミネートされている。

ただ、脚本賞と脚色賞でそうした違いはあるものの、賞としての価値は同等だ。どちらも映画の素晴らしい脚本に贈られるという意味では差がない。

男性より女性に見て欲しい映画

本作は、原作者のコルム・トビーンも脚色したニック・ホーンビィも男性であるが、女性が見た方がより感情移入できる映画だと思う。

本作のプロデューサーも原作を「アイルランドからアメリカに渡った無力な女性が、自分がなりたいと思っている女性になるまでの成長物語」と捉えて映画を撮っている。

また、脚色を務めたニック・ホーンビィは「ハイ・フィデリティ」「アバウト・ア・ボーイ」で中年男性の心情を綴ってきた作家だが、相対的に女性の心情も良く理解した作家だとも言える。

二人の男性の間で揺れるエイリシュは、男性からすると女性のズルい部分に写るかもしれないが、女性には共感できるところも多いのではないだろうか。

エイリシュを演じたシアーシャ・ローナンは、本作でアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞での主演女優賞ノミネートを始め、他に21もの主演女優賞を獲得している。同じアイルランド女性としてエイリシュが成長していく姿を見事に演じきっている。

ーシアーシャ・ローナンの本作での受賞歴ー
アカデミー賞/主演女優賞 (ノミネート)
ゴールデン・グローブ賞/主演女優賞 (ノミネート)
ニューヨーク映画協会賞/主演女優賞
ボストン映画批評家協会オンライン賞/主演女優賞
ハリウッド映画賞/ニュー・ハリウッド賞
ニューヨークオンライン批評家協会賞/主演女優賞
ワシントンD.C.映画批評家協会賞/主演女優賞
英国インディペンデント映画賞/主演女優賞
ロサンゼルス映画批評家協会賞/主演女優賞
ボストン映画批評家協会賞/主演女優賞
サンフランシスコ映画批評家協会賞/主演女優賞
サウスイースタン映画批評家協会賞/主演女優賞
デトロイト映画批評家協会賞/主演女優賞
セントルイス映画批評家協会賞/主演女優賞
ユタ映画批評家協会賞/主演女優賞
インディワイアー映画批評家協会賞/主演女優賞
全米映画批評家協会賞/主演女優賞
ノースカロライナ映画批評家協会賞/主演女優賞
ダラス・フォートワース映画批評家協会賞/主演女優賞
サンディエゴ映画批評家協会賞/主演女優賞
フロリダ映画批評家協会賞/主演女優賞
アイオワ映画批評家協会賞/主演女優賞
サテライト賞/主演女優賞

-7月公開, ヒューマンドラマ, ラブストーリー, 洋画
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