映画を観る前に知っておきたいこと

キャロル
自分の心に正直に生きるということ

投稿日:2016年1月20日 更新日:

キャロル

このうえもなく美しく、
このうえもなく不幸なひと、キャロル。
あなたが私を変えた。

1950年代のニューヨークを舞台にした女同士の慕情。真実の愛を妨げる、時代としがらみ。

物語と時代を同じくした1952年に、人気作家パトリシア・ハイスミスが別名義で発表しながらも大ベストセラーとなった幻の小説『キャロル』を、映画『エデンより彼方に』(02)で1950年代を忠実に再現して見せたトッド・ヘインズ監督が現代に映し出す。

ワールドプレミアとなった2015年カンヌ国際映画祭で喝采を浴び、見事主演女優賞に輝いたルーニー・マーラとオスカー女優ケイト・ブランシェットの共演がそのまま大きな見どころとなる。


予告

あらすじ

クリスマスを目前に控えた1952年のニューヨーク。飾り付けられた街はどこか活気を帯びていた。

マンハッタンにある高級百貨店で働くテレーズ・ベリベット(ルーニー・マーラ)は、娘へのプレゼントを探すキャロル・エアード(ケイト・ブランシェット)に応対する。テレーズの視線がエレガントでミステリアスな魅力を湛えるキャロルを追った。その視線に気付いたキャロルは彼女と一緒プレゼントを選び、イブまでに届くように手配するのだった。

キャロル

© NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014

その時キャロルが忘れた手袋を、テレーズは彼女の家へと丁寧に郵送した。それを契機に二人は会って話すようになり、テレーズは彼女が娘の親権をめぐって離婚訴訟中の夫と争っていることを知る。

キャロル

© NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014

テレーズもまた、恋人からの求婚に漠然とした空虚感をぬぐえないでいた。娘に会えないキャロルはテレーズを誘い、二人は思いつくままに西へと向かう ──


映画を見る前に知っておきたいこと

当時、パトリシア・ハイスミスがこの原作をクレア・モーガンという別名義で発表していたことからも、如何に同性愛というテーマに寛容さがない時代であったかを想像する。

セクシャルマイノリティに対する理解が深まりつつある現代でも偏見や差別が無くなったとは言えないが、1950年代多くの国で同性愛は犯罪であり、病気であった。アメリカでは性的趣向を理由に解雇された事例がいくつもあり、そうした時代背景が物語のプロットとなっている。

しかし、それはあくまでこの時代に立っている二人の女性にとってのしがらみとして描かれ、映画はその先に辿り着くことでようやく普遍性を手に入れる。

変わらぬ真実を伝えた映画

ルーニー・マーラ&ケイト・ブランシェット

© NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014

これは同性愛についての映画ではない。しがらみに翻弄された女性たちが、如何に自分の心に正直に生きるかを問うた成長の物語だからこそ、多くの人の胸を打つのである。

ルーニー・マーラとケイト・ブランシェットの視線ひとつからも感情を掬い取れるような細やかな演技の積み重ねによって、二人の女性が一線を超えてしまうことすら、僕の目には静かに、ただ美しいものに映る。あたかも二人のための映画であるように、俯瞰して同性愛を見つめるようなことはしないのだ。

監督のトッド・ヘインズがゲイであることが関係しているかは知る由も無いが、彼の監督作品で賞を獲得した女優は数知れない。かつてケイト・ブランシェットも『アイム・ノット・ゼア』(07)でベネチア国際映画祭女優賞を受賞し、本作ではルーニー・マーラの演技に最大の賛辞が贈られた。

人が理由なく惹かれるのも、偽りなく生きようとすることも、時代を超えて変わることのない真実は、彼女たちがこの映画にもたらした功績である。

またしても、トッド・ヘインズが才能ある女優の最高の演技を引き出してしまった。

-ヒューマンドラマ
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