映画を観る前に知っておきたいこと

セル
スティーヴン・キングが世界の終末を捉えた原作

セル

携帯(セル)が世界を地獄に変えた ──

ボストンの空港に到着したクレイ。携帯で話していた人々が突然暴徒化し、空港は一瞬にしてパニックへと陥った。生き残るためには奴らを殺すしかない ──

アメリカ文学界モダン・ホラーの旗手、スティーヴン・キングが2006年に発表した小説『セル』を基に、自ら脚本を手掛けた衝撃のサバイバル・スリラー。

『パラノーマル・アクティビティ2』(10)のトッド・ウィリアムズが監督を務め、製作総指揮を兼任したジョン・キューザックが主人公クレイを演じる他、ハリウッドきっての名脇役サミュエル・L・ジャクソン、ニューヒロインとして注目されるイザベル・ファーマンが脇を固める。


予告

あらすじ

ボストンの空港に到着したコミック作家のクレイ・リデル(ジョン・キューザック)は別居中の妻と息子へ電話を掛けるが、話の途中で充電が切れてしまった。すると、携帯で話していた周囲の人々が突然暴徒と化し、空港は一瞬でパニック状態に。

セル

© 2014 CELL Film Holdings, LLC.

繰り広げられる突然の惨劇から地下鉄へと逃げ込んだクレイは、車掌トム(サミュエル・L・ジャクソン)と少女アリス(イザベル・ファーマン)の協力を得て、妻と息子が住むニューハンプシャーを目指すが……


映画を観る前に知っておきたいこと

スティーヴン・キングの原作の中でも、割と好きな部類に入るのがこの『セル』だ。彼が映画の制作に関わると失敗に終わることが多いとも言われるわけだが。

監督を手掛けたトッド・ウィリアムズは『パラノーマル・アクティビティ2』で知られているものの、寡作である上に日本で公開されなかった作品も多いためその手腕はまだまだ未知数である。

しかし本作は、もともと『ホステル』シリーズ(05/07)のイーライ・ロスが監督を務める話があったことからホラー映画としての敷居がぐっと高くなってしまったように感じる。キングの原作にロスが手を加えるとなれば、それだけでなかなかセンセーショナルだ。

これまですべての監督作品で脚本を執筆してきたロスだからこそ実現に至らなかったようだが、代わりにキングが脚本まで手掛けているので、観客の期待感も一概には測れないような状況を生んでしまっている。

世界の終末を捉えた原作

厳密には携帯によって怪物となった人々は生きているが、狂った彼らと正常な者の二項対立はゾンビものとしてのフォーマットを強く意識した作品と言える。

また、彼らがなぜそうなる必要があったのかという細かな説明がされないあたりは、圧倒的な描写でねじ伏せるスティーヴン・キングのホラー特有の切り口であり、しばしば彼の集大成とされる『ダーク・タワー』シリーズに、そこを読み解くヒントが用意されている。『セル』もそんな作品のひとつではあるが、それについて僕は熱心なファン以上の言葉を持たない。

しかし、その作業を抜きにしても原作が放つメッセージは十分強力だ。

キングによるゾンビ映画としてトッド・ウィリアムズは小説の世界観に近い映像化に成功しているものの、世界の終末を捉えた原作のインパクトはそれに勝る。

次々と携帯の電波によって変貌していく人々が正常な者を追い詰める様に、ふとすべての人が携帯を持っている現代の異常さに気付かされるのだ。怪物であるはずの彼らが知恵を身に付け数を増すごとに、正常な者が異端であるかのように錯覚し、多くを語らないからこそ、日常生活の中で既にセットされていた恐怖心を容易に呼び覚ますのだと。

映画化は原作以上にショッキングでなければならないとするなら、その評価は厳しいものになるだろう。

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