映画を観る前に知っておきたいこと

クリーピー 偽りの隣人
西島秀俊×香川照之で描く黒沢ワールド

クリーピー 偽りの隣人

あの人、お父さんじゃありません。
全然知らない人です。

「未解決の一家失踪事件×奇妙な隣人家族」2つの繋がりは本当の恐怖のはじまりだった!

日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した前川 裕の小説「クリーピー」を、『岸辺の旅』(15)でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞を受賞した黒沢 清監督が映像化する驚愕のサスペンス・スリラー。

ある夫婦が奇妙な隣人への疑惑と不安から深い闇へと引きずり込まれていく圧倒的恐怖は、近所付き合いが希薄になった現代、誰の身にも起こり得る日常に忍び寄る悪意だ。

2つの謎に迷い込んだ主人公の犯罪心理学者を西島秀俊、謎の隣人を香川照之、二人のコンビが黒澤監督作品で実現。さらに竹内結子、川口春奈、東出昌大、藤野涼子ほか豪華なキャストが顔を揃える。

2016年ベルリン国際映画祭正式出品作品。2016年香港国際映画祭クロージング上映作品。


予告

あらすじ

犯罪心理学者の高倉は、元同僚の刑事・野上から6年前の未解決の一家失踪事件の分析を依頼される。その事件では早紀という長女が唯一生き残っていた。高倉は早紀の記憶から事件の真相を辿ろうとするが、核心には迫れずにいた。

クリーピー 偽りの隣人

© 2016「クリーピー」製作委員会

一方、高倉が愛する妻・康子と引っ越した先の新居の隣人はどこか奇妙な家族だった。病弱な妻と中学生の娘・澪を持つ主人・西野との何気ない会話に翻弄され、困惑する高倉夫妻であった。

クリーピー 偽りの隣人

© 2016「クリーピー」製作委員会

そしてある日、隣人の娘・澪が言った言葉に高倉は衝撃を覚える。

「あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です。」

高倉が「未解決の一家失踪事件×奇妙な隣人家族」2つの繋がりに気付いた時、妻・康子には深い闇が迫っていた……


映画を見る前に知っておきたいこと

この映画には、日本ミステリー文学大賞新人賞の原作、西島秀俊&香川照之のコンビ、世界で評価される黒沢 清監督と期待できる要素が揃っている。

原作と映画の違い

前川 裕の原作「クリーピー」の世界観を残しながらも、本作は設定を変えるなど映画ならではの仕上がりとなっている。また、映画オリジナルの衝撃的な展開は小説とは違うアップテンポでスリリングな空気を醸し出している。

『CURE』(97)『回路』(00)などのスリラーを手掛けてきた黒沢 清監督の手腕が発揮され、まさに映像化の妙技と言える。しっかりとエンターテイメント性を持った原作のファンも楽しめる作品に仕上がっている。

また、小説では続編「クリーピー スクリーチ」が既に発売されている。スクリーチとは金切り声という意味で、現場に金切り声を残す「女子学生連続殺人事件」が描かれている。映画のその後という設定だ。

世界の黒沢 清

黒沢 清監督は、『CURE』で世界的な注目を集めた監督であり、それ以降は世界の映画祭に多く招待されるようになっている。

『回路』ではカンヌ国際映画祭批評家連盟賞を獲得し、『トウキョウソナタ』(08)ではカンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞に、そして『岸辺の旅』(15)でもカンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞に輝いている。

少し変わったところでは、黒沢監督が手掛けたテレビドラマ「贖罪」(11)がベネチア国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門(受賞の対象にはならない部門)を始め、トロント、釜山など世界の映画祭で上映された。これは異例のことである。

黒沢監督は日本が誇る数少ない世界的な監督の一人なのである。

実際にあった隣人恐怖体験

これは映画とはまったく関係ない話なのだが、「クレイジーすぎる隣人には気をつけろ!」という本作のキャッチコピーを見た時、僕が過去に味わった隣人恐怖体験が蘇ってきたので、ここに書きたい。

僕が20代の頃、東京の多摩川沿いに引っ越したのだが、当時はお金もあまりなく、家賃が安いことに惹かれて選んだマンションで恐ろしい目に合った。

実家も川沿いで、多摩川沿いというロケーションは僕にとって新生活への期待を膨らませる格好の材料だった。しかし、そんな期待はたった一日で裏切られることとなる。引っ越しを終えた日の夜、荷物を片付けていると、隣の部屋から叫び声が聞こえる。しばらくすると今度は壁を叩く音がした。引っ越し中にも隣の部屋の窓がヒビだらけだったことに多少違和感を感じていたのだが、最初は恋人と喧嘩でもしているのだろうと軽く考えていた。

作業も一段落した明け方に、今度は無視できない程大きなガシャーンという音がした。しばらくして外に様子を見に出てみると、僕のバイクが破壊されていた。ここで確信へと変わった。これは僕に向けられた敵意だと。そう思った瞬間に、引っ越しまでに感じた違和感が僕の頭の中ですべて線で繋がった。

まず、僕の部屋の郵便受けだけがなぜかボロボロだった。家賃が安いので仕方がないと勝手に思い込み、後で大家に相談しようと思っていたが、これは間違いなく隣人による嫌がらせだった。

次は、マンションの中で僕の部屋のドアだけが雑に塗られ、色が違っていた。これは後日わかったのだが、前の住民がいる時に隣人がドアにペンキをぶちまけたらしい。それを隠すため上からペンキが塗られていたのだ。

そしてこれには僕も得も言われぬ不安を感じたのだが、引っ越し立てのもぬけの部屋になぜか包丁だけが置かれていたのだ。始めは意味がわからなかったが、今思えばこれは前の住民からのメッセージだったのだ。「隣人は危険だ。これで自分の身を守れ!」という。

それから僕は警察に相談に行ったのだが、やはりそのマンションはしょっちゅう揉め事があったらしい。地元の交番でも有名な危険人物だったようだ。しかし、バイクを破壊されたにも関わらず、証拠がないとかで警察は一切動こうとはしてくれなかった。

そして朝になると、次は不動産屋へ怒鳴り込んだが、何の事やらという態度だった。結局、悪いのは大家だった。隣人が危険人物である事を隠して大手の不動産屋を仲介して部屋を貸していたようだ。しかもその大家が質の悪いオヤジで、一切返金はしないとごねてきた。しかも日割りの家賃は払えと言う徹底ぶりだ。

敷金礼金も返ってこない、引っ越し代は倍掛かる。まったく散々だった。

後日そこから引っ越すために、もう一度そのマンションに訪れたのだが、ドアに奇妙な張り紙があった。そこには「当方弁当持ちのため、トラブル無用」と書かれていた。始めは意味がわからなかったが、どうやら弁当持ちとは隠語で執行猶予中ということらしい。隣人は前科がある犯罪者であることがその時わかった。

家賃が安いのにはそれなりの理由があるのだと、良い勉強になった。ただ、あの大家は今も事実を隠して誰かに部屋を貸しているのかと思うと腹が立つ。しかし、僕にはどうすることもできなかったので、前の住人同様、部屋に包丁だけを残してそこを引っ越した。(この時、包丁の真実に気付いた)

これは実際にあったことなので『クリーピー 偽りの隣人』のようにサスペンスフルでもないが、僕はこの恐怖体験で皮肉にも作品に感情移入して楽しめるのだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。