映画を観る前に知っておきたいこと

【団地】日本映画界で特別な意味を持つタッグによる人間関係コメディ!

何でもありの昭和の集合住宅。噂が転がる小宇宙。それが団地!ごく平凡な夫婦の全然普通じゃない日常を、独特のオフビート感覚で描き出した人間関係コメディ。

大阪近郊にある古ぼけた団地で暮らす山下ヒナ子・清治の夫婦。団地内のちょっとした事件をきっかけに、ヘソを曲げた清治は「僕は死んだことにしてくれ!」と床下の収納庫に隠れてしまう。しばらくすると団地内では「山下さんていう人、殺されてると思う!」という噂が……

隣人への噂や好奇心がエスカレートして妄想へと変わり、些細な物事の始まりはどんどん一人歩きして、やがて観客を予想だにしなかったラストへと誘ってゆく!


  • 製作:2016年,日本
  • 日本公開:2016年6月4日
  • 上映時間:103分

予告

あらすじ

大阪近郊にある昭和の面影を残す古ぼけた団地。山下ヒナ子・清治の夫婦は、元漢方薬局店主の夫が半年ほど前に店を閉め引っ越してきたばかりだった。団地腰は低いがどこか世を捨てた雰囲気に、住民たちは好奇心を隠せない。調子のいい自治会長の行徳と、妻で“ゴミ監視役”の君子。クレーマーで次期会長を狙う吉住に、暇を持て余した奥さま連中。ときおり訪れる妙な立ち居振る舞いの青年・真城だけが、山下夫妻の抱えた過去を知っていた。団地そんなある日、団地内で起きた些細な事件でヘソを曲げた清治が「僕は死んだことにしてくれ!」と床下に隠れてしまう。夫の姿が団地から消えても、淡々とパートに通い続けるヒナ子の言動に、隣人たちの妄想は膨らむばかりだった。団地二ヶ月が経った頃、「山下さんていう人、殺されてると思う。」と一人がつい口にしてしまった言葉をきっかけに、噂は一気にあらぬ方向へと走りだす……


映画を見る前に知っておきたいこと

『顔』とは違う表情を見せる監督・阪本順治と主演・藤山直美のタッグ

本作の監督・阪本順治と主演・藤山直美のタッグは日本映画界で特別な意味を持つ。それは2000年に日本アカデミー賞監督賞を始めとした国内の賞を総なめにした映画『顔』がこのタッグだったからだ。

この作品は、強盗殺人を犯し約15年に及ぶ逃亡劇を見せた実在の女性逃亡犯をモチーフに“哀しくも力強い人間の業”を余すところなく描ききった異色の犯罪映画だった。一転、本作は同じタッグでもコメディ映画なので『顔』を彷彿とさせるような作品ではない。

『顔』とは違う人間の側面、“人生にある可笑しみや切なさ”といったものを独特のユーモアに包んで届けてくれる。しかし、リアルとシニカルを同時に持ち合わせた映画という点は『顔』と本作の重要な共通点である。本作はコメディではあるが、滑稽さだけがそこにあるわけではなく、どちらかというと人間を愛おしく切なくさせるような映画だ。

舞台女優である藤山直美は父が喜劇俳優であったことも影響して、喜劇を演じることが多い女優だ。本作ではそんな藤山直美の主演を想定して阪本順治監督が自ら脚本を書き上げている。それが本作がコメディタッチな作品となった大きな要因だと思う。悲劇であった『顔』よりも本作の方がこの二人の真骨頂と言えるかもしれない。

昭和の空気を思い出させてくれる映画

作品のテーマである“人生にある可笑しみや切なさ”を描く上で、重要となるのが団地という舞台だ。言い換えれば、それは昭和の空気とも言えるかもしれない。

子供の頃から長らく団地暮らしを経験した僕にとって、劇中で描かれるご近所との関係や噂の広がり方なんかは、団地のあるあるみたいなものだし、そこにはどこかほっこりさせられる。

これは別に阪本順治監督が意図するところではないと思うが、他人への関心が希薄となってしまった現代にこういう映画に出会えると安心する。

実際、団地暮らしと言っても、2000年代になってからは近所付き合いも減り、昭和の空気みたいなものはどこかへ消えてしまった。子供が減ってしまったこともあるだろうが、外で団地の子供同士が遊ぶ絵もあまり見なくなった。今思えば、昔は団地が一種のコミュニティのような役割を担っていたように感じる。本作のキャッチコピーで団地を小宇宙に例えていたのは印象的だった。

この映画は勝手に僕の寂しさを和らげてくれると同時に、現代に届けたい作品である。

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