映画を観る前に知っておきたいこと

サンドラの週末
ダルデンヌ兄弟らしからぬ爽やかな感動作

投稿日:2015年4月15日 更新日:

サンドラの週末

月曜日、見つけ出すのは
自分が生きる証

ある金曜日に解雇を言い渡されたサンドラ。仕事を続けるための条件は、月曜日までに16人の同僚の過半数にボーナスを放棄させることだった。

本作で史上初となる6作品連続でカンヌ国際映画祭コンペティション部門出品を成し遂げた名匠ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟が、等身大の想いを伝えることの大切さを描いた感動作。

史上2人目のフランス人オスカー女優マリオン・コティヤールの慎ましい演技が、ダルデンヌ兄弟の映画に親しみをもたらす。

予告

あらすじ

飲食店で働く夫マニュ(ファブリツィオ・ロンジョーネ)と二人の小さな子供と暮らすサンドラ(マリオン・コティヤール)。彼女はうつ病から回復し、ようやく復職できることになった矢先のある金曜日、勤務先の工場から突然解雇を言い渡される。会社の言い分は、社員たちにボーナスを支給するためには誰か一人を解雇しなければならないというのだ。

サンドラの週末

© Les Films du Fleuve – Archipel 35 – Bim Distribuzione – Eyeworks – RTBF(Televisions, belge) – France 2 Cinema

しかし、同僚の取り成しによって週明けの月曜日に16人の同僚たちによる投票を行うこととなり、サンドラはとりあえずの解雇を免れた。ボーナスを諦めてサンドラを選ぶ者が過半数を超えれば仕事を続けられるのだ。サンドラは週末の二日間を利用し、一人ずつ説得して回ることに。同僚たちは共に働く仲間を取るか、ボーナスを取るか、シビアな選択を迫られる。

サンドラの週末

© Les Films du Fleuve – Archipel 35 – Bim Distribuzione – Eyeworks – RTBF(Televisions, belge) – France 2 Cinema

ボーナスがなければ自分たちも生活ができないと言う者。仕事で得る賃金だけでは足らず、休日さえも別の仕事に従事する者。やがてサンドラは後ろめたさから、自分が彼らを追い込んでいると感じ始める。そんな中、サンドラに投票すると約束してくれる者が現れるが……

映画を観る前に知っておきたいこと

前作『少年と自転車』(11)まで5作品連続でカンヌ国際映画祭の主要賞を獲得してきたカンヌの申し子、ダルデンヌ兄弟が自身初の無冠に終わった本作は、かつてないほど爽やかな感動に満ちている。

ダルデンヌ兄弟特有の息苦しいまでのヒューマンドラマは鳴りを潜め、ケン・ローチばりの社会派ドラマとなったことで、ファンにとっては物足りなさを残すかもしれないが、そもそも物語の作り方からして、これまでのダルデンヌ兄弟とは大きく異なっている。

社会派ドラマとして

本作にはダルデンヌ兄弟がこれまでに見せてきたような唐突な幕切れはやって来ない。これは決してネタバレではなく、彼らが初めて僕たちにゴールを想像しながら映画を鑑賞することを許したという事実である。

ダルデンヌ兄弟はまず、週明けの月曜日までというタイムリミットを設けることで、観客に物語の全体像を把握させる。そして、同僚16人から過半数の支持を得るという数的サスペンスによって、“サンドラの解雇か復職”どちらかの結末に向かっていくことをあらかじめ予見させているのだ。

これまで徹底して観客を主人公の視点へと誘ってきたダルデンヌ兄弟が、僕たちにここまで映画を俯瞰させる理由は、社会派ドラマとしてあらゆる視点から底辺で喘ぐ労働者の葛藤を見つめさせたいからだろう。

1000ユーロ(12万円弱)のボーナスを取るか、仲間を取るか。

この厳しい選択を、それぞれの事情を抱える登場人物の視点から見つめ、そして己に問うた時、原題の『二日と一夜』の間に成長していくサンドラの姿は、あたかも僕たちの希望であるかのように映し出されていくのである。

その先には、ダルデンヌ兄弟の映画とは思えないほど爽やかな感動が待っている。

-ヒューマンドラマ, 社会派
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