映画を観る前に知っておきたいこと

真夜中のゆりかご この善良な刑事の決断をあなたは裁けるか

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真夜中のゆりかご

「あなたはこの罪を裁けるか」。いじめと復讐をテーマにした『未来を生きる君たちへ』でアカデミー賞外国語映画賞受賞作したスサンネ・ビア監督と脚本家アナス・トマス・イェンセンの名コンビの最新作。幸せの絶頂から、どん底に落とされた善良な刑事。彼が下した決断は正義なのか、それとも過ちなのか。

  • 製作:2014年,デンマーク
  • 日本公開:2015年5月15日
  • 原題:『EN CHANCE TIL』
  • 上映時間:102分

予告

あらすじ

児童虐待の現場を目撃

敏腕刑事のアンドレアス(ニコライ・コスター=ワルドー)は、湖畔の家で美しい妻アナ(マリア・ボネヴィー)と生まれたての息子アレクサンダーとともに幸せに暮らしていた。ある日、通報を受けて同僚シモン(ウルリッヒ・トムセン)と駆けつけた一室で、薬物依存の男女と衝撃的な育児放棄の現場に遭遇する。

クスリで朦朧としている男は、刑務所を出て来たばかりのトリスタン(ニコライ・リー・コス)。女は娼婦のサネ(リッケ・メイ・アンデルセン)。殴られて顔はアザだらけだが、やはりクスリでハイになっている。赤ん坊は汚物まみれで放り出されている。すぐさまトリスタンを児童虐待で署に連行するが、すぐに釈放される。二人の刑事はこんな男女に赤ん坊を育てられるはずがない、という思いを拭い切れないでいた。
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幸せの絶頂から不幸のどん底へ

一方、アンドレアアスは夫婦交代で息子をあやし、愛に満ちた日々を送っていた。だが、突然の不幸が夫婦を襲う。ある朝ゆりかごから抱き上げたアレクサンダーが冷たくなっていたのだった。慌てふためきながらも、同僚のシモンに相談の電話をするがいつものように酔いつぶれて電話に出る気配がない。何かを思いついたアンドレアスは、アレクサンダーを助手席に乗せトリスタンの住宅に車を走らせるのだった。

案の定ドラッグで意識が飛んでいるトリスタンとサネ。ろくに世話もされず、汚物にまみれて寝ているソートスを裸にして、アレクサンダーにソートスのベビー服を着せる。アレクサンダーの遺体にソートスのウンチを塗り付け、ソートスを連れ出す。生後間もない二人の男の子。顔は同じに見える。そして何食わぬ顔をしてソートスを家に連れ帰りゆりかごに寝かせる・・・。
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映画を見る前に知っておきたいこと

スザンヌの映画

現代社会の抱えるさまざまな問題を取り込んだサスペンスドラマ。彼女は決して「これをやればウケるだろうか、観客は何を期待しているだろうか」と言った衆愚的なことを考えて映画を撮らない。スザンヌの映画には必ず、”スザンヌ・ビアがやる理由”がある。それでもサスペンスとして広い間口をもっているのは、彼女のアーティスティックな興味が誰もが過ごす日常の色彩に向けられているからだろう。

そして彼女の映画は常に”死”というテーマが隣り合わせにある。北欧の湖畔のノスタルジックな美しさを取り込みながら、死と生のコントラストの中に希望を見出せる作風が特徴的だ。本作のラストシーンにもひとすじの希望が描かれている。この救いようのないストーリーのどこにどう希望を見出すのかという切り口も面白い。
スザンネ・ビア

恐るべしアナス・トマス・イェンセン

スザンネ・ビアの映画は、何気ない日常が思いがけない事件に進展し予想外の方向へ進んでいく。スリルとサスペンスに背を突かれるが、この映画の本当の面白さは、自身の心の奥底の倫理観を見つめなおす観客の心の動きだ。

観客は例外なく、主人公を中心として彼の側に立つのか、それともアンチのサイドに立つのか、ストーリーが進行していくうちにコロコロと立場を変える。そこに次々とはらわたにハンマーを食らわすかの様な予想外の展開がやってくる。だが、最後には納得の行く形で腑に落とすというのだから、恐るべしアナス・トマス・イェンセン。

-ミステリー・サスペンス, 洋画

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