映画を観る前に知っておきたいこと

【全力スマッシュ】バドミントン版『少林サッカー』

投稿日:2015年9月28日 更新日:

全力スマッシュ

日本でも興行収入30億円を超える空前の大ヒットとなった『少林サッカー』(01)のバドミントン版とも言われている本作。前作『西遊記~はじまりのはじまり~』で『少林サッカー』のチャウ・シンチーと共同監督&脚本を務めたデレク・クォックが監督を務めることもその要因の一つとなっている。ビジュアル・エフェクトの第一人者ヘンリー・ウォンとのコンビで誕生した熱血バドミントン・コメディ。本国では『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を上回る興行成績を収め大ヒットしている。

マイナースポーツと思われがちだが、アジアはもちろん日本でもバドミントン人口は多く、サッカーや野球よりも多い940万人もの愛好家がいる超人気スポーツ。そんなバドミントンというスポーツを通じて互いに手を結び合い、再び生きる喜びと居場所を見出していく姿を、何よりも主題として描き出そうとしている。これは「努力を続けるすべての失敗者に捧ぐ」映画だ。


  • 製作:2015年,香港
  • 日本公開:2015年10月10日
  • 上映時間:108分
  • 原題:『Full Strike』

予告

あらすじ

かつてバドミントンの女王として君臨していたサウ(ジョシー・ホー)は、プライドの高さと短期な性格が災いし、試合中に暴力事件を起こしてしまう。以来10年間、バドミントン界から永久追放されていた。7年連続チャンピオンという並外れた実力も人気もあったのだが、今は兄が経営するレストランで目標もなく淡々と雑用をこなす毎日を送っていた。ある晩、シャトルの形をした隕石が落ちたかのような不思議な厳格を体験したサウは、その奇妙な出来事をきっかけに、強烈な個性を持つ男4人組と出会うこととなる。

酔っぱらいのバトミンドン師匠ッ・クンクワン(アンドリュー・ラム)、片腕のラム・チウ(エドモンド・リョン)、弱視のマー・クワン(ウィルフレッド・ラウ)と、最も危険な男、リーダーのラウ・タン(イーキン・チェン)。 12年前、性悪なチンピラだった彼らは強盗を繰り返していたが、刑期を終えて出所して以降、新しい人生を送ってきた。全力スマッシュ更生した彼らは、“決して諦めるな。必ず逆転できる”を合言葉に「ラウ・タン バドミントン同好会」を作り、失った青春を取り戻すかのように日々トレーニングに精を出していた。全力スマッシュそんな“負け組”の彼らが必死で頑張る姿を見たサウは、長年忘れていたバドミントンへの情熱を取り戻していく。


映画を見る前に知っておきたいこと

香港映画

中国映画とも少し異なる香港映画。それは香港が中国の一部でありながら、「特別行政区」という特殊な場所であることが関係している。どこの国の映画史も、その国の歴史に大きな影響を受けているものだが、香港は第二次世界大戦 (1941–45) の間は日本に占領され、その後は1997年までイギリスの植民地であった。イギリスから中国に返還された後も、返還前の法律、制度、流通通貨などを返還後も向こう50年は変えないという「一国二制度」の原理の下「特別行政区」となった。これは世界でもかなり稀な例と言える。また、香港はイギリスの植民地時代から資本主義で、中国は社会主義という点も大きな違いである。

中国本土の映画が常に政治状況に大きく左右されるのに対して、香港はイギリスの植民地であったためにイデオロギーからは自由であり、商業で栄えた土地柄から商業主義に徹した徹底娯楽映画で特異な発達をするようになった。その中で生まれた香港映画を代表するスターがブルース・リーやジャッキー・チェンだ。カンフーアクションが人気なのは中国と同じだが、別の形で発展してきたものである。現代の『少林サッカー』や本作『全力スマッシュ』なども商業主義に徹した徹底娯楽映画の発展から生まれた作品と言えるだろう。なのでタイトルとは裏腹に全力で見る必要なしな映画である。

少し付け加えると、『全力スマッシュ』で扱われるバドミントンも、その起源はイギリスからだと言われている。1820年代にイギリスの植民地時代のインドのプーナというところで行われていた遊びをイギリスに持ち帰ったのが始まりという説で、1870年代にイングランド(イギリス)のグロスターシャー州のバドミントン・ハウス(村)でさかんに行われていたことからそのように呼ばれるようになったとされる。本作中でチッ師匠がまことしやかにバドミントン誕生の秘話を語るシーンがあるが、「1870年の夏のこと」というのはおそらく上記のエピソードを意識しているものと思われる。ある意味イギリスなくしては生まれなかった作品であり、そこに歴史の因果を感じる。もちろん、そんなことに想いを馳せながら見るような映画ではないが……

それでも、作品のルーツや作品が生まれた土地柄などを知ることによって“くだらなさ”も倍増するはずだ。そうすれば映画がよりおもしろくなる。

-コメディ, 洋画

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