宇宙の暗闇を生きぬけ
地球から60万メートル上空。そこは音もなく、気圧もなく、酸素もない、全てが完璧な世界。スペース・シャトルの船外ミッション中、突発的な事故に見舞われたライアン・ストーン博士と宇宙飛行士マット・コワルスキーは、共に宇宙空間に放り出されてしまう。
メキシコを代表する監督アルフォンソ・キュアロンが、VFXを駆使した圧倒的な映像美で描き出す宇宙空間サスペンス。2014年アカデミー賞で10部門にノミネート、最多7部門(監督賞、撮影賞、視覚効果賞、作曲賞、音響編集賞、録音賞、編集賞)受賞。世界興収600億円を記録した現代のSF映画を代表する1本だ。
ストーン博士役にサンドラ・ブロック、ベテラン宇宙飛行士マット役にジョージ・クルーニー。二人のオスカー俳優が、宇宙空間に放り出された極限の心理状態を体現してみせる。また、ここから3年連続でアカデミー撮影賞を受賞したエマニュエル・ルベツキの長回しによるカメラワークは圧巻である。
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を観る前に知っておきたいこと
- 3.1 現代を代表するSF映画
予告
あらすじ
メディカル・エンジニアのライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)は初のスペースミッションに参加し、ベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)のサポートのもと、データ通信システムの故障の原因を探っていた。その船外活動中、ヒューストンの管制から突然の緊急避難指示連絡が入る。多量の宇宙ゴミが拡散し、シャトルに衝突する危険があるというのだ。
© 2013 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
船内への避難を指示された二人だったが、衝突に巻き込まれ宇宙空間に放り出されてしまう。宇宙空間で現在位置を見失い、酸素も残りわずかのライアンはパニックに陥る。しかし、彼女はマットの声で我に返る。的確な指示を出し続けるマットはライアンを発見、自分の体に固定し、なんとかシャトルまで辿り着いた。
© 2013 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
しかし、そこで彼らは自分たち以外に生存者がいないことを知る。ヒューストンの管制とも通信が途絶え、二人は自力で地球に戻るため国際宇宙ステーションにある宇宙船ソユーズを目指す。しかし、無情にも地球帰還のためのソユーズは1機が既に離脱、残る1機の機体も損傷していた……
Sponsored Link映画を観る前に知っておきたいこと
監督のアルフォンソ・キュアロンは、この作品のテーマを“逆境”だと語る。宇宙空間を漂流する宇宙飛行士が暗喩しているのは、ままならない人生を闘う人の姿。この映画の中で描かれる全ての逆境は、日常生活における逆境の暗喩であるという。そして、キュアロンはそれらを言葉ではなく、視覚的に伝えようとしている。しかし、その映像の圧倒的なまでのリアリティが、“逆境”の暗喩という監督の意図から観る者を遠ざける。
まるで深遠な宇宙を漂っているかのような錯覚。この映像体験に一旦引き込まれれば、もはやメッセージなど二の次。僕たちは完璧な宇宙空間を漂流する極限の緊迫感に、ただ夢中になる。
現代を代表するSF映画
© 2013 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
『ゼロ・グラビティ』は、明らかにこれまでのエンターテイメントとしてのSF映画とは一線を画す。殆ど全編に渡って宇宙空間を漂流するストーリーはシンプルそのもの。登場人物が二人だけな上に、1時間近くは画面に一人しか映らない。そして、外から見る地球の美しさ、完璧な宇宙空間を描写した映像美の連続は、もはやSFの域を超えて芸術的ですらある。サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーの共演を除けば、いわゆるヒットの法則からは大きく外れた映画だ。
しかし、この静寂と淡白さが、宇宙空間を彷徨う者の孤独と焦りをどこまでもリアルなものにしていく。むしろ、生と死を分かつ緊迫感が一切途切れることのない極上のSFエンターテイメントとして成立しているのだ。
そして、この映画を語る上で欠かせないのが3D映像との相性である。僕は、かつてここまで3D映像の破壊力を見せつけた映画を知らない。漆黒の宇宙空間に奥行きさえ感じさせ、2Dで十分と思われたリアリティをもう一歩上回ってみせる映像は、まさに圧巻の一言だ。
3D映像は現代の映画技術の象徴でありながら、その真価を発揮できた作品は極端に少ない。そういう意味でも、『ゼロ・グラビティ』は現代を代表するSF映画と言える。
作品データ
原題 | 『Gravity』 |
---|---|
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2013年 |
公開日 | 2013年12月13日 |
上映時間 | 91分 |
上映方式 | 2D/3D |
キャスト
キャスト | サンドラ・ブロック |
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ジョージ・クルーニー | |
エド・ハリス |
監督・スタッフ
監督 | アルフォンソ・キュアロン |
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脚本 | アルフォンソ・キュアロン |
ホナス・キュアロン | |
製作 | アルフォンソ・キュアロン |
デビッド・ハイマン | |
製作総指揮 | クリス・デファリア |
ニッキ・ペニー | |
スティーブン・ジョーンズ | |
撮影 | エマニュエル・ルベツキ |