映画を観る前に知っておきたいこと

愚行録
妻夫木聡主演、日本が誇る戦慄の群像ミステリー

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愚行録

他人を語り、本性を現すのは、誰だ?

ミステリー文学界の魔術師・貫井徳郎による第135回直木賞候補作『愚行録』。原作者自ら映像化不可能と言わしめたこの超問題作の完全映画化に挑んだのは、なんとこれが長編デビューとなる石川 慶監督。本作は2016年ベネチア映画祭オリゾンティ部門で日本から唯一の長編実写作品として正式上映されるなど、いま新たな才能に期待が集まる。

エリートサラリーマンとその妻、そして一人の子供が何者かによって惨殺された一家殺人事件から一年。週刊誌の記者・田中は、改めて事件の真相に迫ろうと取材を開始する。関係者のインタビューを通して炙り出されるのは、理想的な夫婦の外見からはかけ離れた実像だった。それぞれの証言から浮かび上がる“人間の本音”とは ──

事件の真相を追う週刊誌記者・田中役に妻夫木聡、秘密を抱える田中の妹・光子役に満島ひかり。小出恵介、臼田あさ美、市川由衣、松本若菜、中村倫也、眞島秀和、濱田マリ、平田 満ら日本映画界を牽引する実力派俳優たちが二人の脇を固める。

決して先を読むことのできない展開。仕掛けられた3度の衝撃。日本が誇る戦慄の群像ミステリーがここにある。

予告

あらすじ

閑静な住宅街で起こった一家惨殺事件。被害者・田向浩樹(小出恵介)は大手デベロッパーに勤めるエリートサラリーマン。友季恵(松本若菜)は物腰柔らかで近所でも評判の妻。二人が娘を連れて歩く仲睦まじい姿は、まさに絵に描いたような理想の家族だった。

愚行録

© 2017「愚行録」製作委員会

田向は1階で、友季恵と娘は2階の寝室で刺殺された姿で発見され、世間を騒然とさせた事件は未解決のまま一年が過ぎようとしていた。

愚行録

© 2017「愚行録」製作委員会

週刊誌の記者・田中(妻夫木聡)は改めて真相を探ろうと関係者の証言を追い始める。しかし、そこから浮かび上がってきたのは田向夫妻の外見からは想像もできない噂の数々だった……

映画を観る前に知っておきたいこと

コンペティション部門ではないにしろ長編デビュー作でいきなり、ベネチア国際映画祭に正式出品されたことで石川 慶という監督がどのような映像作家なのかは気になるところだ。また、オリゾンティ部門というところが鬼才の片鱗を感じさせる。

また、本作はポーランドの撮影監督ピオトル・ニエミイスキが参加しており、どこか北欧映画のような美しさも漂う映像は、映画をよりミステリアスで緊迫感溢れる雰囲気へと誘っている。

ただ、貫井徳郎の原作も人間の本性を抉り出すような問題作なので、オリゾンティ部門での上映は物語の評価自体の方が大きいのかもしれない。

ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門

まず、ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門について簡単に触れておきたい。オリゾンティ部門は、本選であるコンペティション部門とは異なり、革新的な映画を集めた部門となっている。カンヌ国際映画祭でいうところの「ある視点」部門に近い役割を担っている。

少し語弊があるかもしれないが、独特の切り口を持つマニアックな映画が扱われることが多いのがオリゾンティ部門だ。

貫井徳郎

1993年、自身の失業期間を綴った『慟哭』が第4回鮎川哲也賞の最終選考まで残り、これが貫井のデビュー作となった。推理作家・北村 薫がこの小説の帯に「題(タイトル)は『慟哭』書き振りは≪練達≫読み終えてみれば≪仰天≫」というコメントを寄せたことがきっかけで、50万部を超えるヒットを記録した。

長らく文学賞とは無縁であった2010年、『後悔と真実の色』で山本周五郎賞を、『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞を受賞。映画の原作である『愚行録』以外にも、『乱反射』、『新月譚』、『私に似た人』でも直木賞候補となっている。

その作風は読後感が非常に暗く重いことで知られるが、近年は『転生』『さよならの代わりに』『明日の空』といった爽やかな作品や、『被害者は誰?』『悪党たちは千里を走る』といったユーモアミステリーなど、明るい作品も見受けられる。『愚行録』は、もちろん前者だ。

受賞歴が物語っているが、『愚行録』のような作品こそが貫井徳郎の真骨頂と言える。

キャスト紹介

本作で主人公の週刊誌記者・田中と、物語のキーパーソンとなる田中の妹・光子を演じる妻夫木聡と満島ひかり。二人は日本アカデミー賞の常連であり、国内でその演技を高く評価されている俳優だ。そんな二人の演技がベネチア国際映画祭のスクリーンに映し出されるわけだ。

妻夫木聡

妻夫木聡

© 2017「愚行録」製作委員会

映画初主演となった『ウォーターボーイズ』(01)で人気を集め、『ジョゼと虎と魚たち』(03)では第77回キネマ旬報ベストテン最優秀主演男優賞を受賞。満島ひかりと共演した『悪人』(10)で第34回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝いた。

満島ひかり

満島ひかり

© 2017「愚行録」製作委員会

『愛のむきだし』(09)でで多くの新人賞を受賞すると、その後は映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍。近年の主な出演作には映画『駆込み女と駆出し男』、ドラマ『トットてれび』、舞台『100万回生きたねこ』などがあり、これまでに日本アカデミー賞で4度の優秀助演女優賞を受賞している。

配役

  • 田中武志:妻夫木聡
    一家惨殺事件の真相を追う週刊誌記者
  • 田中光子:満島ひかり
    育児放棄の疑いで逮捕された田中武志の妹
  • 田向浩樹:小出恵介
    一家惨殺事件で殺害されたエリートサラリーマンの夫
  • 夏原友希恵:松本若菜
    一家惨殺事件で殺害された田中武志の妻
  • 宮村淳子:臼田あさ美
    夏原友希恵の大学時代の同期
  • 稲村恵美:市川由衣
    大学時代の田向浩樹の恋人
  • 尾形孝之:中村倫也
    宮村淳子の元恋人
  • 渡辺正人:眞島秀和
    田向浩樹の会社同僚
  • 橘美紗子:濱田マリ
    弁護士の女
  • 杉田茂夫:平田 満
    精神科医

-ミステリー・サスペンス, 邦画
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