映画を観る前に知っておきたいこと

はじまりへの旅
ヴィゴ・モーテンセンが演じる愛すべき父親

はじまりへの旅

普通ってなんですか?

現代社会に背を向けアメリカ北西部の森深くで暮らすキテレツ家族。母の死をきっかけに父と6人の子供たちは森を飛び出した ──

『イースタン・プロミス』(07)のヴィゴ・モーテンセンが風変わりな大家族の父親を演じ、全米でロングランヒットを記録したユーモラスで感動的なロードムービー。

長編初監督作品『あるふたりの情事、28の部屋』(12)が高い評価を受けたマット・ロスが監督・脚本を務め、2016年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でスタンディングオベーションと共に監督賞が贈られた他、世界でも多くの映画賞に輝いている。

ジョージ・マッケイら若いキャストが演じる中、取り分けモーテンセンの演技が光る1本だと多くの批評家が口を揃えた。


予告

あらすじ

現代社会に触れることなくアメリカ北西部の森深くで暮らすキャッシュ家。6人の子供たちは父ベン・キャッシュ(ヴィゴ・モーテンセン)仕込みの訓練と教育で、アスリート並みの体力に6ヶ国語まで自在に操る。18歳の長男に至っては名立たる名門大学にすべて合格するほど頭脳明晰だった。

はじまりへの旅

© 2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS, LLC

ある日、躁鬱病で入院していた母レスリー(トリン・ミラー)が自ら命を絶ってしまった。レスリーの遺志に従い火葬を執り行いたいベンは、葬儀を巡って親族と言い争う。父と子供たちは母の最後の願いを叶えるため森を飛び出し、葬儀の行われるニューメキシコまでの2400㎞をトレーラーで移動する。

はじまりへの旅

© 2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS, LLC

チョムスキー(ノーム・チョムスキー=アメリカの哲学者)は知っていても、コーラもホットドッグも知らない世間知らずの彼らは、果たして母の願いを叶えることが出来るのか!?


映画を観る前に知っておきたいこと

カンヌの「ある視点」部門で評価された作品にしては珍しく、わずか4館での封切りスタートから全米600館まで拡大して4ヶ月以上に渡るロングラン上映となった。インディペンデント系の映画がこういう広がり方をみせた時は大概外さないものだ。

一風変わった設定ではあるが、キャッシュ家と現代社会とのカルチャーギャップをコミカルに活写し、驚きと笑いの行き着く先には普遍的な家族の絆が用意されている。

俯瞰から共感へ

現代社会に生きる人々にとって、キャッシュ家とはなんとも奇妙な変人一家に映るだろう。彼らの波乱万丈な旅路を俯瞰して眺めながら、マット・ロスのユーモラスな語り口に笑いを誘われていくわけだが、そんな中でもキャッシュ家の子供たちは様々な出会いと新たな発見を繰り返し少しずつ成長している。

自立したい年頃、反抗期、そんな普通の一面を子供たちが覗かせた時、子育てに人生の全てを捧げてきた父ベンの信念がついに揺らぎ始め、圧倒的マイノリティであったはずの彼らの物語は、じわじわと観る者の共感へと姿を変えていくのである。そこに生まれた爽やかな感動はすでに多くの人にとって心地良いものだ。

マット・ロスの軽快なタッチの裏に仕込まれた家族や教育についての教訓めいたメッセージは、グローバル社会における小さなコミュニティや個人のアイデンティティの在り方を問い掛けているようでもある。

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