映画を観る前に知っておきたいこと

ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気
人を愛する自由とは?

投稿日:2016年11月3日 更新日:

ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気

愛があなたを強くする。

2008年アカデミー賞で短編ドキュメンタリー映画賞に輝いた『フリーヘルド』は、ローレル・へスターとステイシー・アンドレという実在する二人の女性の、愛と自由をかけた闘いを記録していた。それは2015年6月、米国最高裁が下した“同性婚を含むすべてのアメリカ人の婚姻を保証する”という画期的な判決に影響を与えた感動の実話。

本作は、38分の短編ドキュメンタリーであった『フリーヘルド』を新たに脚本化し、オスカー女優ジュリアン・ムーアを主演に迎えたことで、よりドラマチックに生まれ変わっている。

人を愛する自由。幸せになる勇気。あなたが教えてくれたこと……

予告

あらすじ

ニュージャージー州オーシャン郡。20年以上、警察官という仕事に打ち込んできた正義感の強い女性・ローレル(ジュリアン・ムーア)は、ある日、ステイシー(エレン・ペイジ)という若い女性と出会い、恋に落ちる。

ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気

© 2015 Freeheld Movie, LLC. All Rights Reserved.

年齢も取り巻く環境も異なる二人は、手探りで関係を築き、郊外に一軒家を買い、一緒に暮らしはじめた。家を修繕し、犬を飼い、穏やかで幸せな日々が続くはずだった……

ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気

© 2015 Freeheld Movie, LLC. All Rights Reserved.

しかし、ローレルは病に冒されてしまう。自分がいなくなった後もステイシーが家を売らずに暮らしていけるよう、遺族年金を遺そうとするローレル。しかし法的に同性同士に、それは認められていなかった。残された時間の中で、愛する人を守るために闘う決心をした彼女の勇気が、同僚やコミュニティ、やがて全米をも動かしていくことになる……

映画を観る前に知っておきたいこと

この映画の原作が、アメリカ社会に影響を与えた実話であることを知ってほしい。日本も少しずつ変わってきているが、同性愛に寛容な国とは言い難い。東京都渋谷区でのパートナーシップ制度開始はニュースでも大きく報じられたが、この制度にはまだまだ足りないものがある。

パートナーシップ制度と同性婚

原作となった映画『フリーヘルド』は、2008年東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(現レインボー・リール東京)でアジア初上映となった。セクシュアル・マイノリティに関する国際映画祭への招待が、この映画が持つ力とそれを必要とした人たちの存在を物語る。

そこには、多くの先進国で同性婚が認められる中、アジアが出遅れているという現状もある。日本では、2015年に東京都渋谷区で「“結婚に相当する関係”と認める証明書を発行する」という条例が定められた。そして現在では、東京都世田谷区、三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、沖縄県那覇市が後に続いている。

しかし、これらは条例であり、憲法で保障されるものではない。いわゆるパートナーシップ制度と呼ばれるものだ。

憲法の結婚に関する文言に“両性の”という表記がある以上、あくまで結婚は男女間でするものとなる。憲法のこの一言を変えるのには、大変な時間と労力を伴うため、こうしたパートナーシップ制度は重要な意味を持つ。

ただ、パートナーシップ制度と憲法で保障される婚姻には決定的な違いがある。パートナーシップ制度の多くは、親権に制限が設けられているのだ。

パートナーシップ制度ではどちらかに子供がいる場合、共同親権を持つことができない。この現実が、“結婚に相当する関係”とされるパートナーシップ制度と婚姻に明確な差を生んでいる。

2015年6月、米国最高裁が下した“同性婚を含むすべてのアメリカ人の婚姻を保証する”という画期的な判決は、これから世界の大きな流れになることは間違いない。

まだまだ同性婚に偏見が残っているのも事実だが、ここ数年でも、人権という観点からこの問題に取り組む動きは世界中で起こっている。2008年の『フリーヘルド』と本作では同じ実話を基にしていても、この数年でまた違った印象を与えるはずだ。

アメリカで同性婚が認められた今だからこそ、ローレル・へスターの物語はより切なく映る……

-ヒューマンドラマ, 洋画, 社会派
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