運命の出会い。結婚。出産。
幸せなはずなのに、壊れてゆく心ー
それは愛か、狂気か。
『素数たちの孤独』(10)で天才の片鱗を見せたサヴェリオ・コスタンツォ監督が、愛情と強迫観念の間の境界線をサスペンスフルに描き出します。ニューヨーク、妊娠、妻の狂気、その内容は『ローズマリーの赤ちゃん』(68)や『こわれゆく女』(74)といった傑作を想起させるとも言われています。
物語の序盤にあるユーモアたっぷりのロマンチック・コメディのような空気から徐々にトーンを変え、気が付けば悪夢の只中に。そして世界から孤立したように夫婦を切り取るカメラワークが独自の世界を作り上げています。
そして、前作に続きヒロインに起用されたアルバ・ロルヴァケルと家族を繋ぎとめようと必死に奔走する夫役のアダム・ドライバーの演技は、それらの演出以上の存在感を放っています。
第71回ベネチア国際映画祭主演男優賞&主演女優賞W受賞作品。
10月1日(土)より東京・ヒューマントラストシネマ渋谷にて開催される「世界中のガツン!とくる映画集めました。」をテーマにした「ワールド・エクストリーム・シネマ」で上映される。
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を観る前に知っておきたいこと
- 3.1 観る前に心の準備を……
予告
あらすじ
舞台はニューヨーク。運命的に出会い、恋に落ちたジュードとミナ。やがて二人は結婚し、可愛い男の子が産まれる。それは幸せな人生の輝かしいはじまりのはずだった……
© Wildside 2014
しかし息子の誕生後、独自の育て方にこだわり神経質になってゆくミナ。息子が口にするもの、触れるものに対して次第に敵意と恐怖心を露わにしはじめる。やがてその攻撃の矛先は、医者や友人そしてジュードの母親、更にはジュード本人にまで向けられてゆく。
© Wildside 2014
ただ夫であるジュードはそんな妻の異常とも取れる頑なな愛情を、何とか理解し、支えようとする。しかしその結果、息子の体が徐々に変調をきたしはじめたことで、ジュードはついにある決断を迫られる。
果たして、その答えの先に、彼らを待ち受けるものとは……?
Sponsored Link映画を観る前に知っておきたいこと
「世界中のガツン!とくる映画集めました。」をテーマにした「ワールド・エクストリーム・シネマ」で上映される4作品に選ばれたのも納得の作品です。映画を観ることで日常に潜む強迫観念の存在に気付いてしまうかもしれません。それが必要なことかどうかは、個人の価値観に委ねられる。そんな映画です。
観る前に心の準備を……
「運命の出会い。結婚。出産。幸せなはずなのに、壊れてゆく心ーそれは愛か、狂気か。」
これは映画のキャッチコピーだが、ここに書かれた愛と狂気は同じ顔をしている。それは言い換えれば、誰にでも起こりうる強迫観念だ。
幸せな空気に包まれた序盤から徐々にトーンを変えていく映画のコントラストそのものが、まるで誰かの人生を切り取ったような錯覚を起こさせる。
サスペンス映画の神様と称されるアルフレッド・ヒッチコックを彷彿とさせるサスペンスという評価もあるが、この映画にはそれだけ観客の心に不安や緊張を強要する力がある。また、第71回ベネチア国際映画祭主演男優賞&主演女優賞W受賞となったアルバ・ロルヴァケルとアダム・ドライバーの演技がそれをさらに助長している。
映画を観る人にも起こりうるような状況をテーマにしていることで、観客はそれぞれの価値観を試されることとなる。そんな恐ろしさゆえ、万人受けする映画ではない。腹に鉛を仕込まれたい人にはおすすめの映画だ。