映画を観る前に知っておきたいこと

【アイアムアヒーロー】世界三大ファンタスティック映画祭で観客に選ばれたゾンビ映画

アイアムアヒーロー

優柔不断で冴えない平凡な男・鈴木英雄が「ZQN(ゾキュン)」と呼ばれるゾンビ化した人々で埋め尽くされた街で生き残る道を模索していくサバイバルホラー。リアルな描写が人気を博す花沢健吾の同名コミックの映画化作品だ。

監督は、原作にどこまでも忠実な作風で知られる『GANTZ』『図書館戦争』シリーズを手がける佐藤信介。今年2016年はあの『デスノート』の夜神月とLが消えた8年後の世界を描く続編が控えている。

主人公の英雄を演じるのは虚言ネタの帝王・大泉洋。映画祭でも例外なく大ホラを吹いて爆笑を掻っ攫った。

反狂のヒロイン、女子高生の比呂美役を『ビリギャル』『僕だけがいない街』の有村架純。持ち前の度胸とバイタリティでZQNに立ち向かう元看護婦の藪役を長澤まさみがそれぞれ演じている。


  • 製作:2016年,日本
  • 日本公開:2016年4月23日
  • 上映時間:127分
  • 映倫区分:R15+
  • 原作:漫画「アイアムアヒーロー」花沢健吾

予告

あらすじ

鈴木英雄。漫画家デビューに失敗し、アシスタントで生計を立てる崖っぷちの35歳。恋人とは破局寸前。平凡で変哲のない、何の面白みもない毎日を過ごしていた。

そんな英雄の普通の毎日は、恋人の変貌で突如終わりを告げる。血管が浮き出て、人のものとは思えない目と、動き・・・。それは異形そのものだった。

アイアムアヒーロー

異形の「何か」へ変わってしまったのは、彼女だけではなかった。やつらは『ZQN(ゾキュン)』と呼ばれる、理性を失い人を襲う原因不明の感染症患者。襲われた人もまた『ZQN』へと変貌していく。街に溢れた『ZQN』に街はパニックに陥っていた。

標高の高い場所では感染しないという情報を掴んだ英雄は、富士山を目指す。その道中で女子高生の比呂美と元看護婦の藪と出会い、行動を共にすることに。

アイアムアヒーロー

夢も希望もない英雄の平凡な日常は、絶望と隣り合わせの人間vsZQNの生き残りをかけたサバイバルへと変貌していた――。


映画を見る前に知っておきたいこと

平凡な男が英雄になっていく物語

『アイアムアヒーロー』のタイトル通り、この映画は平凡な主人公が成長し、やがて英雄(えいゆう)と呼ばれる男になっていく物語・・・ではあって欲しくない。

漫画「アイアムアヒーロー」平凡な主人公が成長したいと頑張りながらも、基本ヘタレでどうしようもない奴なのでじたばたともがき続ける物語である。英雄(ひでお)はどこまでいっても英雄(ひでお)なのだ。そしてそこが面白い。

終末の世、これは『アイアムアヒーロー』で主体的に描かれる社会的弱者にとっては、今までの人生を全てをリセットしてやり直せるチャンスでもある。

世界の終わりに社会では認められなかったポテンシャルを発揮して英雄になる・・・そんな妄想を描いたことがある人はたくさんいると思う。しかし、そんなものはやはり妄想である。弱者はどこまでいっても弱者でしかない。

そんな現実をしっかりと携えてのホラーファンタジー。コミカルさと現実の陰鬱な空気とのバランス感覚こそが、花沢健吾の真骨頂だ。

漫画アイアムアヒーローの面白さ

アイアムアヒーロー

漫画「アイアムアヒーロー」の面白さは何と言っても、現実とファンタジーの境界をしっかりと線引きし、斬新な描画演出と伏線のための細かい設定で描かれる綿密なプロットだ。

例えば、1巻まるまる使って主人公の日常を描ききり、ラストの10ページで突然非日常が襲い掛かる演出はこの漫画の語り草であるし、至る所で回収される伏線は、読者に深い考察の楽しみをもたらしている。

しかし、果たしてこれを2時間の尺で映画にして面白くなるのというと、個人的には少し疑問が残るところではある。

世界三大ファンタクティック映画祭・観客賞受賞

アイアムアヒーロー

映画『アイアムアヒーロー』は、世界三大ファンタスティック映画祭のうち、シッチェス・カタロニア国際映画祭、ポルト国際映画祭で観客賞を受賞した。最後のひとつのブリュッセル・ファンタスティック国際映画祭への出品は3月29日。三大ファンタスティック観客賞制覇に期待がかかる。

これほど権威のある映画祭での観客賞受賞は、この映画の実力を知らしめた結果になったと言って良いだろう。なにせ僕らと同じ立場である観客が「一番面白かった」と言って選ぶ賞だ。

いくら日本の漫画文化がスゴイと言っても、映画祭で映画を見た人の中で、漫画「アイアムアヒーロー」のことを知っている人は相当少ないと思う。もしかしたら一人もいないかもしれない。

「アイアムアヒーロー」の映画化を知ったとき、正直「また漫画の映画化か・・・」と少し辟易する気持ちであった。

漫画は漫画だから面白いのであって、それを映画にするなんていうのは、話題性に乗っかった商売の話。日本の映画文化がどうこうという話ではないとも思っていた。「映画はどうせエンタメ商売根性丸出しのつまらないものになっている」という意見は、どんな漫画の映画化作品についてもよく耳にする意見だ。

しかし、そんな映画がこうして世界の映画祭で楽しまれていると、日本人として少し嬉しく誇らしい気持ちになったりもする。映画と原作漫画を比べてしまう見方は、「映画を楽しむ」という意味では邪魔なだけなのかも知れない。

「ひょっとして僕はなにやら高尚“ぶっているだけ”で、その実ただ単純に頭が硬くなっているだけなのではないか・・・」

もちろん、漫画を映画化した作品に漫画を超える傑作が稀なこと、時には漫画の名前で売るだけ売って中身は最低のものを見せられることもあった経験から、世間にそんな意見が蔓延っている事実は否定できない。

しかし、そもそも映画と漫画なんて比べようのないものだし、せめて見るときぐらいは「漫画は漫画で面白かった。映画は映画で最高だった。」そんなふうに肩の力を抜いて楽しめた方が、自分にとっても周囲にとっても健全でお得である。

映画『アイアムアヒーロー』の観客賞受賞は、そんなことを考えさせられたニュースだった。

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