映画を観る前に知っておきたいこと

アイ、ダニエル・ブレイク
最もケン・ローチらしい映画で2度目のパルムドール受賞!

アイ、ダニエル・ブレイク

2016年カンヌ国際映画祭は、イギリスが誇る社会派映画の巨匠ケン・ローチが『アイ、ダニエル・ブレイク』で2度目のパルム・ドール(最高賞)受賞という結果で幕を下ろした。ケン・ローチ監督が2006年の『麦の穂をゆらす風』以来、10年の時を経て再びパルム・ドールに輝いたのはどんな映画なのか?


初のオフィシャル映像

あらすじ

イングランド北東部最大の都市ニューカッスル・アポン・タイン。そこで暮らす59歳の熟年労働者ダニエル・ブレイクは心臓発作を起こし、医師から大工の仕事を続けられないと診断される。政府から援助がなければやっていけないダニエルだったが、福祉当局に就労可能と判断され福祉手当すら受け取れない。

アイ、ダニエル・ブレイク

そんな時、ダニエルは2人の子供と共にロンドンからニューカッスルに引っ越してきたシングルマザーのケイティーと出会う……


『アイ、ダニエル・ブレイク』は最もケン・ローチらしい社会派映画

まず、ケン・ローチ監督のファンである僕にとってこの結果は、喜びとこの映画が公開される期待をもたらしてくれた。しかもそれは、2006年の『麦の穂をゆらす風』でパルム・ドールを受賞した時よりも大きい。

その理由は『アイ、ダニエル・ブレイク』がケン・ローチ監督が最も得意とする社会派映画だからである。もちろん『麦の穂をゆらす風』も最も好きな映画の一つだが、アイルランド独立戦争を描いたこの映画はケン・ローチ作品の中では異端な部類に入る。

これまで『レディバード・レディバード』(94)、『SWEET SIXTEEN』(02)を始め、労働者階級をテーマに社会派映画を撮り続けてきたケン・ローチ監督の真骨頂は、やはり『アイ、ダニエル・ブレイク』のような映画である。

妻を失った熟年労働者とイギリスの福祉制度を描き、緊縮財政による社会保障費の削減によって生じる社会問題をテーマとしている。しかし労働者階級者の悲惨な日常を描きながらも、劇中でのダニエルと福祉当局の問答などコミカルなシーンも多く用意されている。ケン・ローチ監督は決してユーモアを忘れない。

ここが僕がケン・ローチ作品を敬愛して止まない一番の理由だ。イギリスの労働者階級者や僕たちのような庶民が、厳しい現実と戦う唯一の武器がユーモアだ。これはケン・ローチ監督に教えられたものではなく、僕が身を以て知っていることをケン・ローチ監督が共有させてくれたのだ。こんなに嬉しいことはないし、これが映画の持つ力だ!

作品に込められたそれらのユーモアは決して本題をぼやかせるものではない。むしろそれが労働者階級者の現実なのだ。ケン・ローチ監督の扱うユーモアは作品にリアリティをもたらしながら同時に、少しの希望も与えてくれる。

また社会派映画の巨匠というイメージが強いが、ケン・ローチ監督の作品は常に脚本が素晴らしい。『アイ、ダニエル・ブレイク』はカンヌ国際映画祭の前にプレス向けに上映されているが、そこで多くの人の涙を誘ったという。

社会派でありながら心揺さぶる感動作であり、最大限のリアリティと同時に多くの人が共感するエンターテイメント性を持ち合わせる。このバランス感覚こそがケン・ローチ監督の真骨頂だ!

『アイ、ダニエル・ブレイク』はきっと、これ以上ない最もケン・ローチらしい映画なのではないだろうか。

「私たちは希望のメッセージを伝えなくてはなりません。こんな世界ではなくてもいいのだと。私たちが暮らしている現代社会は危険な状態です。新自由主義という考え方によって引き起こされた緊縮経済における危険な政策に支配され、私たちの生活に大惨事をもたらされています。」

ケン・ローチ

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