映画を観る前に知っておきたいこと

【教授と呼ばれた男】ジュゼッペ・トルナトーレ監督処女作

教授と呼ばれた男

これはイタリアの犯罪組織「カモッラ」のボスを取り巻く実態を、実話から脚色したフィクションである。

『ニューシネマパラダイス』で世界中から脚光を浴びたジュゼッペ・トルナトーレ監督のデビュー作。「あの『ニューシネマパラダイス』の監督がこんな映画を!?」とよく驚かれるが、トルナトーレ監督のことを知るとこれが実に彼らしい一面を覗かせる映画なのだ。

日本では2001年から始まったゴールデンウィーク恒例イベント・イタリア映画際で上映された。


予告

あらすじ

貧しい家に生まれた少年は犯罪組織に生活を保障してもらっていた。その代わりに、彼は殺人の片棒を担がされる。

やがて成長した少年は姉をからかった男を殺害し、20年の実刑を受けることになった。詐欺や盗難の受刑者が多い中、殺人という罪は彼に箔をつけた。刑務所内で権力を振るっていた男にも、その物怖じしない度胸に一目置かれた。教授と呼ばれた男獄中であらゆる知識を修めた男は、冷酷な性格とその賢さからいつしか“教授”と呼ばれ、受刑者たちからは畏敬の念を抱かれるようになっていく。

そして“教授”は、自分を崇拝する受刑者達を集めた犯罪組織「新カモッラ」を立ち上げる。あらゆる策を巡らせ、刑務所内にいながら組織を巨大化させていった。
教授と呼ばれた男そして“教授”は刑務所内で手にした権力を利用し、裁判を裏で操り脱獄を果たす。さらに組織を巨大化させるために暗躍し、莫大な活動資金を手にするのだった。

一方、ナポリに点在していた「旧カモッラ」のボスたちは結束し、急成長した「新カモッラ」のボスである“教授”を排除する機会をうかがっていた。警察もまた“教授”の居場所を突き止めようと躍起になっていた。

やがて「新カモッラ」は政治家や警察も巻き込み、イタリア全土に影響力を持つ巨大な組織へと成長していくが……


映画を見る前に知っておきたいこと

カモッラとは?

カモッラ タトゥー
19世紀初頭に刑務所内から発祥したと言われているイタリアの犯罪組織「カモッラ」の話だということは押さえておきたい。

“マフィア”という言葉は犯罪組織を指して使われるのが一般的となっているが、犯罪組織も活動拠点によってそれぞれ呼び名が違う。本来“マフィア”とはシチリアを活動拠点としている犯罪組織を指し、一方“カモッラ”はナポリを活動拠点としている犯罪組織を指す。

組織の人間は“血の掟”により絶対の沈黙と服従を遵守しなければならない。もし裏切れば凄惨な制裁が加えられるのはどちらも同じだ。

『ニューシネマパラダイス』『海の上のピアニスト』などのメランコリックな感動作で知られるジュゼッペ・トルナトーレ監督の処女作だが、それだけの理由で観るには荷が重たい映画だ。淡々と長尺で綴られるノワール(犯罪者を描いた映画)の中に、ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品を掘り下げる努力が求められる。

ジュゼッペ・トルナトーレ監督らしさ

ノワールにしばしば見られる“のし上がっていく爽快感”のようなものはこの映画には存在しない。映画の冒頭に流されるテロップが作品のテーマを象徴している。

「法の重要性を感じてくれれば幸いである。」

『教授と呼ばれた男』冒頭より

ノワールにしては派手さに欠ける淡々とした暴力シーン。スピード感を排除し、3時間に及ぶ長尺で丹念に綴られる物語。実話を脚色したフィクションであるこの映画は、あくまでイタリアの暗部を映し出す。

一見、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の作風とかけ離れた作品のようにも映るが、彼の言う“法の重要性”にこそドラマが潜んでいる。

善良な市民はもちろん法律に守られている。法なき世界の人間もまたルールに守られている。それはイタリアの暗部に存在するルールかもしれないが、映画はルールを破った人間の末路を映し出す。

登場人物にはそれぞれ規範があり、それは“教授”も例外ではない。ルールを守るかどうかに、善人と悪人は関係なく、破れば報いを受ける羽目となる。それがルールというものだ。

一般人、政治家、警察、“教授”に組した人間が手のつけられない程の闇に沈んでいく一方で、“教授”の犯罪者としての始まり日も丹念に描かれている。ここには間違いなくトルナトーレ監督らしいメランコリックなドラマが存在している。

ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品

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