ドイツの世界最強の暗号機と言われた”エニグマ”を解き明かした数学者”人工知能の父”アラン・チューリングの数奇な生涯を描いた伝記。アカデミー賞有力候補のひとつとしてかなり話題の作品。今回はこの映画を紹介するに当たって、彼の歴史的な人物像にフォーカスした。
- 製作:2014年,アメリカ・イギリス合作
- 日本公開:2015年3月13日
- 原題:『imitation game』
- 原作:数学者アンドリュー・ホッジス著『Alan Turing:The Enigma』
- 上映時間:115分
Contents
予告
あらすじ
第2次世界大戦下の1939年イギリス、若き天才数学者アラン・チューリングはドイツ軍の暗号エニグマを解読するチームの一員となる。高慢で不器用な彼は暗号解読をゲーム感覚で捉え、仲間から孤立して作業に没頭していたが、やがて理解者が現れその目的は人命を救うことに変化していく。いつしか一丸となったチームは、思わぬきっかけでエニグマを解き明かすが……。
-公式サイトより-
映画を見る前に知っておきたいこと
アラン・チューリングの仕事
アラン・チューリングは第二次世界大戦で連合軍側を勝利に導いたその人と言っても過言ではないほどの貢献をした人物。彼がいなければイギリスはドイツに負けていたと主張する人も大勢いる。それほど15京9000兆通りの暗号「エニグマ」は脅威だった。もう桁が想像の範疇を超えていて、どれくらい凄いのかよくわからない。
チューリングの功績はそれに限らず、コンピューターの概念を創造した「チューリングテスト」仮想計算機「チューリングマシン」など数学、物理学界に多くの影響を与えた。数多の名だたる学者達に”人工知能の父”と言わしめるほどに。
それほどの人物なのに、イギリス政府はチューリングの仕事を外部に公表することを硬く禁じていた。世は未曾有の大戦争中。しかも事は最重要軍事機密。彼のことは実の母親ですら「軍関連の仕事をしている」程度の事しか知らなかったという。公表されたのは、彼の死後20年後。英国政府は実に50年もの間、彼のことを機密として扱ってきた。
アラン・チューリングの人物像
チューリングの人物像は、天才で変人。高慢で不器用。無神論者で唯物論的。履歴書に宗教を書く欄がある海外で、無神論者はかなり異端だと思う。日本ではあまり想像出来ないけども。現在でも無宗教は全人口の15%程らしい。
彼の才能は幼い頃から存分に発揮され、周囲の大人たちを驚かせた。数学、物理学には特に深い関心を示し、パズルが大好きな子供で、その天才ぶりは16歳の時にはアインシュタインの一般相対性理論に文句をつける程。そんな子供だったので、付き合える人も限られていたのか人づきあいはあまり得意ではなく、かなり内向的な性格だったようだ。
アラン・チューリングとクリストファー・モルコム
この頃、彼を語る上で重要な人物であるクリストファー・モルコムに恋をしている。そう、彼は同性愛者だったのだ。彼自身、幼い頃から同性愛者であることを意識していたらしい。しかし、モルコムは牛結核症を煩い、18歳の若さで死去。この出来事はその後のチューリングの人生に重大な影響を与えた。
この事が原因で、チューリングは無神論者になり、唯物論的に物事を考えるようになった。キリスト教が一般的に普及しているイギリスにおいて、無神論を語るということに彼が想像を絶する絶望を抱いていたことが伺える。そして何より、当時のイギリスでは同性愛は犯罪だった。こうして、彼と世間の関係は奇妙な乖離を見せ始める。
天才であるがゆえに、同性愛者であるがゆえに、世界に重大な影響を与えながら世界から孤立していくチューリング。イミテーション・ゲームは彼の人生をどう描いていくのか、「模造品」というキーワードは一体どこに突き刺さるのか。
※imitation : 模造品、まがいもの
見た人の感想まとめ
酷評もなく、話題通りの名作だったよう。意外だったのは、チューリングを知らない人でも号泣して帰ってくるということ。大学で散々聞いたあのチューリングか!!と脳内でいろいろと繋がっている人も多いので、知らずに行くのも面白いかもしれない。今さらですが。
チューリングを知っている人も知らない人も、ホモが好物の人もそうでない人も、万人に概ね好評というのは素直にすごい。カンバーバッチに目覚めてしまいそうというコメントも多かった。あと、ラストのテロップが衝撃だったらしい。
イミテーションゲーム面白かったけど、後で調べたら実際に同名の遊びがあると知って、しかもその内容が内容だったので先に知っていれば……とすごい悔しかった
— きのこ (@kinoko_piza) 2015, 3月 27
その遊びというのがこれ。
イミテーションゲーム
別名:チューリングテスト
【英】imitation game
イミテーションゲームとは、コンピューターの思考能力を評価するために行なわれるゲームのことである。人工知能(AI)の開発に利用される。
コンピューターと人間に同じ質問をして、それぞれがどちらの回答であるかを隠し、第三者に提示してどちらがコンピューターの回答であるかを判定させるというものである。人間とコンピューターの区別が付かないならば、そのコンピューターは優秀である(より人間に近い)とされる。
タイトルの由来はこれか。こんなに安直なタイトルだったとは・・・。記事の後半に「模造品というキーワードが・・・!」なんてドヤ顔で言ってしまって、まことに恥ずかしい。
飛行機の行き帰りでイミテーションゲーム見たのだけれども
ベネちゃん、キーラナイトレイ、ほも
大好物だらけの映画でした。
ネタバレになるから内容はあれですが、最後はめっちゃ泣いた。お涙頂戴の映画ではないけど泣けた。
— maxho (@maochiho22) 2015, 3月 27
そういえば母がベネディクト・カンバーバッチが好きだという理由でイミテーションゲームを公開日に見に行ったけどすっごい切ないホモ映画だった…予想だにしていなかった…素晴らしかった…実話とか…
— きよすけ@くろけカ76b (@kiyosu_k) 2015, 3月 28
監督・キャスト
監督:モルテン・ティルドゥム
ノルウェー出身の監督で、イミテーション・ゲームが英語圏に贈る初の映画作品。ノルウェーでは歴代1位の興行収入を記録した大監督。
ベネディクト・カンバーバッチ:(アラン・チューリング)
米タイム誌「2014年俳優による演技TOP10」第1位。ベネディクトの実力もさることながら、米国におけるこの映画の評価が相当高いことが伺える。イギリスのテレビドラマシリーズ「SHALOCK」でシャーロック・ホームズを演じていることでも話題。
キーラ・ナイトレイ:(ジョーン・クラーク)
ジョーン・クラークはチューリングが結婚を申し込んだ女性。彼女が同性愛者であることを受け入れていた。
キーラ・ナイトレイはデビュー当時から「絶世の美女」と各方面から絶大な評価を受けた。自他共に認める”極度の貧乳”でよく拒食症や摂食障害を疑われるが、自身は否定している。その関連で起訴を起こし勝訴したこともあり、勝ち取った賠償金を摂食障害のための基金に寄付した。なんとも男らしいメンタリティを持った美女である。