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【インデペンデンス・デイ】評価・感想/SF映画の20年を振り返る

投稿日:2016年7月12日 更新日:

インデペンデンス・デイ

1996年当時、最新のCG映像で観客の度肝を抜き、空前の大ヒットとなった『インデペンデンス・デイ』。あれから20年、2016年7月9日にいよいよ続編『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』の公開が始まった。

物語りの設定もちょうど20年後となっており、脚本にもこの20年の空白期間が活かされている。

タイトルの「リサージェンス」とは一度中断したことの再開を意味し、前作と同様ローランド・エメリッヒが監督を務める正統な続編だ。大きな違いはウィル・スミスは出演していないことか……

そんな今だからこそ、前作『インデペンデンス・デイ』にもう一度焦点を当てる事で、SF映画の20年を振り返る。

  • 製作:1996年,アメリカ
  • 監督:ローランド・エメリッヒ
  • 日本公開:1996年
  • 上映時間:145分
  • 原題:『Independence Day』

予告

感想・評価

1996年当時、映像技術は既に十分なリアリティを持っていた

『インデペンデンス・デイ』の話題性は今でも記憶に残っている。当時まだ学生だった僕にとって映画は娯楽でしかなかった。

同じ頃にハマっていたSF映画と言えば『ターミネーター2』(91)だ。しかし、たった5年でSF映画の映像は次のステージに進んだ事を確信させたのが『インデペンデンス・デイ』だった。

あの頃、衝撃的だった映像は今どう感じるのだろう。

そんな事を考えながら見直した『インデペンデンス・デイ』だったが、意外に映像は今見ても古く感じなかった。むしろ当時衝撃的だった事を再確認させられた。

全編CGを使った映像ではなく、ホワイトハウスの爆破やニューヨークが灰と化すシーンなど、ミニチュアを使った特撮が随所で行われていたようだが、これは当時のCG映像よりリアルに表現できたためである。

映画の中でも、SFは映像において常に最先端を走る事が求められてきたジャンルだ。SF映画の歴史は映像技術の歴史であり、観客に未知の体験を提供してくれる。

映像技術が進化する過渡期にあって、CGと特撮を上手く組み合わせたローランド・エメリッヒ監督の手腕は素晴らしく、リアリティという意味では、1996年の時点で十分な領域へと達していた。

これは現在のSF映画がリアリティ以上の地点にいる証拠である。もともとリアルかどうか判断しづらいSFの世界観において、観客は体験としての映像技術を求めるようになったのではないだろうか。

その最たる映像技術として生まれたのが3Dだ!もはやSF映画にとって3Dは当たり前の時代となっている。SF映画はアトラクションのような体験を提供する新しいジャンルへと生まれ変わり、2Dではその役割を果たせないのだ。

『インデペンデンス・デイ』は過去の大ヒット映画として、2013年に3Dリマスターでの公開が予定されていたが、結局『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』が先に公開される事となった。

どうせ『インデペンデンス・デイ』の3D版を体験するなら、映像から生まれ変わった新作の方がより衝撃的だろう。SF映画の現在地がここにあるはずだ!

商業主義=ご都合主義の脚本

映像は思った以上に素晴らしかった。当時、衝撃的だったのもうなずける。

しかし大人になった今では、ご都合主義の陳腐な脚本が目に付いてしまった。ゴールデンラズベリー賞最低脚本賞にノミネートされたのも納得だ。いかにもハリウッドらしいと言ってしまえばそれまでだが……

当時まだ映画を娯楽としてしか見ていなかった僕には十分楽しめたが、あれから色々な視点で映画を見られるようになった事で映画としての評価は下がってしまった。

「Mac上で作ったコンピュータ・ウイルスをWindows上で(あるいはその反対)書くことは非常に難しい。人間が作ったコンピューターによって、テレパシーで交信するエイリアンたちが作ったコンピューターに影響を与えるようなウイルスを首尾よく書き上げる見込みは限りなく小さい」という批判もあったが、これはまだパソコンがそこまで普及していなかった時代だと目をつぶったとしても、エイリアンの反撃が殆ど描かれていない点や、地球防衛に対して頼りないステレオタイプのメンバーは、映像に対してあまりにリアリティがない。

最先端の映像を観客に届けるという役割は当時完璧に果たした作品ではあるが、映像と脚本のクオリティが釣り合っていない。これだったら『ターミネーター2』やずっと古い『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズの方が断然面白い。

SF映画はアトラクションのような映像体験を求められるようになったが、やはりどこまでいっても映画の肝は脚本だという事だろう。

今にしてみれば、SF映画の商業主義が加速していったのはこの辺りからだ。1998年の『アルマゲドン』でもまったく同じような感想を抱いたのを覚えている。商業主義というだけで否定するつもりはないが、商業主義=ご都合主義というイメージが出来上がってしまった。

また『インデペンデンス・デイ』の5年後、アメリカは9.11を経験した事により、自国に対する攻撃というものに敏感になっている。いくら地球外からの侵略者といっても、観客は戦争に対するディテールを以前より求めているはずだ。

インデペンデンス・デイ:リサージェンス』は映像に関しては観客をネクストステージに誘ってくれる事は間違いないだろう。それに見合うだけの脚本に期待したい。

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