映画を観る前に知っておきたいこと

【イントゥ・ザ・ウッズ】見た人の心を映す鏡のような映画

投稿日:2015年1月13日 更新日:

イン・トゥ・ザ・ウッズ タイトル

ディズニーが贈る巨匠ソンドハイムのミュージカル。数々の童話を映画化してきたディズニーが、今度はソンドハイムのミュージカルを映画化する。ジャックと豆の木、シンデレラ、赤ずきん、ラプンツェルそれぞれの童話の物語が交錯し、新しい物語を織り成していく。

  • 製作:2014年,アメリカ
  • 日本公開:2015年3月14日
  • 原題:『into the woods』
  • 上映時間:124分

予告

あらすじ

森のはずれでひっそりと暮らすパン屋の夫婦。2人は魔女の呪いで子供を授かれないでいた。呪いをとくためには”ミルクのように白い牛””赤い頭巾””黄色い毛””金色の靴”が必要だと魔女は言う。夫婦は魔女の要求を飲み、それらを探すために森の中へと入っていく。そこでシンデレラ、赤ずきん、ジャックと豆の木、ラプンツェルなどの童話の登場人物たちと出会う。

イントゥ・ザ・ウッズ シーン1

タイムリミットは、青い月が出る3日後の午前0時。パン屋の主人、シンデレラ、ジャック少年、赤ずきんは、それぞれの目的(シンデレラは、舞踏会に出たいという願い、ジャックは牛を売りに行くことを命じられて隣町に行く目的、赤ずきんは祖母に会いに行くため)を叶えるため、森の中へ入っていく。森の中では、御伽噺にまつわるさまざまな事件が起こる。パン屋は無事に呪いを解いて子供を授かることが出来るのだろうか・・・。

Click ※ネタバレ

あらすじ ※ネタバレ

さまざまな困難を乗り越え、あの手この手で魔女の指定した4つの物を揃えて、パン屋の主人は帰ってきた。途中すこし不手際はあったものの、見事魔法は発動。醜い魔女は美しい若い女性の姿を取り戻し、パン屋の妻は子供を授かった。
魔女の呪いは解け、シンデレラは王子と結婚、ラプンツェルも王子と結婚、ジャックと母親は、金の卵を売って裕福になり、パン屋の夫妻は元気な赤ん坊を授かった。

イントゥ・ザ・ウッズ シーン2

しかし、めでたしめでたし・・・とはならなかった。シンデレラと王子の結婚式の日、大きな地震が起こり何もかも崩壊してしまう。パン屋の主人は父親らしく振る舞えないことに悩んでいた。シンデレラは王室での退屈な暮らしに幻滅、ラプンツェルは外の世界が怖くてしかたなかった。魔女も若さと引き換えに、魔法の力を失ってしまったことを嘆いていた。そして、ジャックのところへは巨人の妻が「夫を殺した報いを受けろ」と復讐にやってきた。

幸せになったはずの主人公たちに、不幸が訪れる。パン屋の妻は、巨人の妻から逃げている際に崖から落下して死んでしまう。赤ずきんの母親と祖母、ジャックの母親も、巨人の妻に殺されてしまう。ラプンツェルは王子と逃げたため、魔女はラプンツェルを失ってしまった。シンデレラは夫の王子がパン屋の妻と不倫したのを知り別れてしまう。
シンデレラ、赤ずきん、ジャック、パン屋の主人らは、結局のところ、魔女が全て悪いと責め立てた。

イントゥ・ザ・ウッズ シーン4

責められた魔女は、再び呪いをかけて姿を消した。生き残ったシンデレラと赤ずきん、ジャック、パン屋の主人は、巨人の妻を倒すことを決意、無事に退治する。退治はできたものの、皆もう帰るところがなかった。孤児となったジャックと赤ずきんは、パン屋で住み込みで働くことに。シンデレラもジャックに誘われ、パン屋を手伝うことにした。

パン屋の主人は幼い息子をあやしながら、どうしても親として振舞えない自分を省みて「子供を持つべきではなかった」と悩む。そこへ亡き妻の亡霊が現われ夫を励ましていく。そして、夫は子供たちに『イントゥ・ザ・ウッズ』のお伽話をするのだった・・・。
お伽話こそが呪文、子供はいつも聞いている・・・。

映画を見る前に知っておきたいこと

ミュージカルの巨匠、スティーヴンソンドハイム

スティーブン・ソンドハイム“その後を描いた”というキャッチフレーズで気になる映画。スティーヴン・ソンドハイムの同タイトルのミュージカルが原作となっている。この人、ミュージカル界ではかなりの大物。それどころかミスター・ミュージカルと言っても良いほどの人物。ミュージカルの他にオペラも製作していて、ほとんど全ての作品で作詞、作曲を手がけ、高い評価を得ている。日本プロ野球界の長嶋茂雄、アニメ界の宮崎駿、ミュージカル界のソンドハイム、そんなイメージ。

彼の作品の特徴は、ほとんど踊りがないこと。つまり、音楽とセリフと役者の表現だけでほとんどが構成されている。劇団四季に代表されるいまどきの派手なミュージカルとはかなり趣が異なっているよう。にもかかわらず、米国のミュージカル、オペラファンのみならず大人から子供まで本当に幅広い層から不動の人気を誇っている。

圧倒的なオリジナリティとユニークさで”アメリカのミュージカル界を芸術としての新たな次元に引き上げた巨匠”というソンドハイムへの評価だけでもこの映画はかなり気になる。

ミュージカル『into the woods』※English Only

ミュージカル「イントゥ・ザ・ウッズ」はどんな作品か?

さて、今回ご紹介する映画『イントゥ・ザ・ウッド』はソンドハイムが手がけ、1987年から今まで、世界中で上演されてきたミュージカルを映画化した作品だ。童話の登場人物のその後を描いたというよりは彼らが登場する新しい物語という印象。とは言え童話の筋書きが変わっているというわけではなく童話の物語と「イントゥ・ザ・ウッズ」の物語がどう絡むのかは楽しみなところ。

おとぎ話のキャラクターがたくさん登場するので、子供でも楽しめる見やすいミュージカル・・・というわけにはいかないかもしれない。脚本への凝りようが尋常でなく、意外な方向へ進む物語は”人の生き方、幸せとは何か、命とは何か、見る人によって様々な事を考えさせられる鏡のようなミュージカル”という評価があちらこちらに見られる。

ソンドハイムほどの作家が既にある物語の人物を登場させるということは、彼らじゃなければならない理由があるということ。ただ「おとぎ話の主人公達のその後」というだけの視点をもって見にいくのは、少しもったいない気も。シンデレラ、赤ずきん、ジャックと豆の木、ラプンツェル。ソンドハイムがそれぞれの物語のメッセージをどう解釈して『イントゥ・ザ・ウッズ』という新しい物語でどう昇華していくのかも見所のひとつ。

しかしディズニー

しかし、今回映画化するのはディズニーだということは忘れてはならない。あれやこれや難しいことを考えなくても気軽に笑って、泣いて、感動して、楽しめて、そして考えさせられる作品になっているのではないかと思う。スティーヴン・ソンドハイムの芸術をディズニーがどんなエンターテイメントに仕上げてきたのかも見どころと言えるかも。

そして、この作品はぜひぜひ映画館で観てほしい映画。というのも、この映画のキャスティングはハリウッドでバリバリ活躍する贅沢な起用も話題だが、実はブロードウェイの第一線で活躍する舞台俳優が主。彼らが魅せる舞台ならではの臨場感を劇場の大スクリーンで楽しんでもらいたい。

登場人物&キャスト

エミリー・ブラント:(パン屋の妻)

エミリー・ブラントイギリス出身。吃音症(どもり)がなかなか収まらなかったが「違った声で何かを演じてみて」と先生に言われて克服。この経験から「もっと誰か他の人を演じてみたい」と思い女優を志望するようになったという素敵な生い立ちを持つ。最近の有名な出演作品では「プラダを着た悪魔」で助演女優賞を獲得している。意外なとこでは宮崎駿の「風たちぬ」英語版で声優として出演している。最近では「オール・ユー・ニード・イズ・キル」でアクションを披露した。今回はどんな演技を見せてくれるのか楽しみ。

ジェームズ・コーデン:(パン屋)

ジェームズ・コーデンイギリス出身のコメディ俳優。このキャスティングすごい分かる。すごいパン作ってそう。「One Man,Two Guvnors」という作品でトニー賞※アカデミー賞のブロードウェイ版を獲得。イギリスだけでなくアメリカでも人気を博す一躍時の人に。

クリス・パイン:(シンデレラの王子)

クリス・パイン甘いマスクのイケメン王子。テレビドラマ「ER緊急救命室」でデビュー。最近は「エージェント:ライアン」「スター・トレック」で主演を演じた。

アナ・ケンドリック:(シンデレラ)

アナ・ケンドリック1998年にミュージカル『High Society』でデビューした。史上3番目の若さでトニー賞にノミネートされた実力派。2015年は「ピッチパーフェクト2」にも出演する。

リラ・クロフォード:(赤ずきん)

リラ・クロフォード赤いずきんが似合う黒髪の可愛らしい少女。この純朴な愛らしさで、ディズニーが懸念を示すほどの”セクシーな狼”にどう対峙するのか見もの。本職ブロードウェイらしく映画ではなかなかお目にかかれない。そういう意味ではこの映画はまさに彼女の舞台。

マッケンジー・マウジー:(ラプンツェル)

マッケンジー・マウジーラプンツェルそのもの!なブロンド美女。魔女との微妙で複雑な関係も見事に演じ切る実力派。彼女も舞台女優でブロードウェイで活躍中。なじみがない人も多いと思う。

メリル・ストリープ:(魔女)

メリル・ストリープ『プラダを着た悪魔』その人。魔女の恐ろしさとは裏腹に、日本に来日した際、田舎の広大な敷地に引っ越した時に池に浮いている大きな亀を見て、スーツケースが浮かんでいると勘違いした本当はお茶目な人。でも魔女はハマリ役。めっちゃ怖い。

ジョニー・デップ:(オオカミ)

ジョニー・デップまた何ともジョニー・デップらしい役である。今回はとびきりセクシーな狼(どんなやねん・・・)を要求されたらしい。”狼がセクシーすぎて、赤ずきんとの関係がセクシャルなものになっている”とディズニーが懸念するほどセクシーな狼。ちなみに出演時間は5分。・・・5分。

感想・評価まとめ

ブログなどでは批評酷評が多いが、SNSなどのメディアでの感想は予想に反して好評な様子。批評、酷評も多数あるが、構えて映画を評価しようとしている人は酷評、何も考えずエンターテイメントとして楽しんでいる人は高評しているという印象。コメディ要素も強く、笑いのツボが合うかどうかもポイントかも。

特に解釈が人それぞれ過ぎる、というのが賛否両論を呼ぶ原因になっている。さすがはロブ・マーシャル。”見た人を映す鏡のようなミュージカル”というソンドハイムの舞台の評価をそのまま輸入してきたようだ。2回目、3回目のほうが面白いスルメ映画なのかも。その辺も含めて「とっ散らかってておもしろくない」と酷評する人は自分でテーマを救い上げることができなかった人だと思う。

楽しめる人と楽しめない人がはっきりする映画

感想や評価を眺めていて思うのは、特に何も考えてないけど目の前にあるものを楽しもうとする人、随所に散りばめられたメッセージを広いあげて考察できる人は面白かったと。楽しませてくれるのをただ待ちながら映画を評価している人は酷評を投げかけているのかなと。

ディズニー映画というだけに、子供が見ても楽しめるかどうかを気にしている人が結構いるみたい。これだけ賛否両論ある中で楽しめるかどうかとなると分からないけれど、見させて反応を楽しむのも一興かと。もし子供が気に入れば、2回、3回と見ていくうちに自ずから色々と発見していき、子供にとって大切な映画になるかもしれない。

最後に、イントゥ・ザ・ウッズの感想で、分かり易い視点からの解説と多様性をテーマにした映画の独自解釈が面白いブログを勝手に紹介する。

映画は飽きるほども見てないけど 「イントゥ・ザ・ウッズ」はじわじわと染み入って最高だった

-ミュージカル, 洋画

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