映画を観る前に知っておきたいこと

【火の山のマリア】日本で初めて上映されるグアテマラ映画

投稿日:2016年1月26日 更新日:

火の山のマリア

グアテマラ、マヤ文明の地の今を生きる少女の大いなる“生”の物語。グアテマラ映画史に残る渾身の一作。

グアテマラの火山のふもとに暮らすマヤ人である17歳の少女・マリアは、地主のイグナシオに嫁ぐことが決まっていた。しかし、彼女はアメリカ文化への憧れる青年・ペペに惹かれていた。そしてマリアがペペの子供を身ごもっていることが発覚する。太古から継承してきた文化・伝統と現代文明の狭間で生きる少女が選ぶ人生とは?

グアテマラ出身のハイロ・ブスタマンテ監督の長編デビュー作。自身もマヤ文明の地で幼少期を過ごしたこと、役者に現地の先住民を起用したことが、グアテマラが抱える社会問題をドキュメンタリーのようなリアリティで浮き彫りにし、それを背景に力強い母娘の物語を作り上げた。

第65回ベルリン国際映画際銀熊賞(アルフレッド・バウアー賞)受賞作品。またグアテマラ映画として史上初の米国アカデミー賞外国語映画賞へのエントリーを果たしている。


  • 製作:2015年,グアテマラ・フランス合作
  • 日本公開:2016年2月13日
  • 上映時間:93分
  • 原題:『Ixcanul』

予告

あらすじ

グアテマラの高地。そこは古代マヤ文明繁栄の地だった。そこで17歳になるマヤ人の少女・マリアは両親ととも農業を営みながら暮らしていた。その生活は過酷な自然に囲まれた極めて原始的なものだった。火の山のマリア火山付近の肥沃な土壌でありながらも、借地での農業は家族を経済的に圧迫していた。作物が収穫できないことは、家族が土地を追われることを意味していた。そこで両親は地主であり、コーヒー農園の主任であるイグナシオのもとにマリアを嫁がせようとしていた。イグナシオは妻に先立たれ、3人の子供を育てる父だった。火の山のマリアしかし、マリアはそんな両親の思いに反してコーヒー農園で働く青年・ペペに惹かれていた。アメリカ文化に憧れるペペに対し、マリアは一緒に連れて行ってほしいと頼むが、彼は彼女の処女を捧げることを条件とした。控えめで真面目なマリアは悩んだ末にペペに身を任せてしまうが、ペペは一人で旅立ってしまう。火の山のマリア一方、両親や村人たちの農場では蛇の被害に悩まされていた。強力な農薬も効かず、誰もが頭を抱えていた。火の山のマリアそんな時、マリアがペペの子供を身ごもっていることが発覚する。堕ろすこともできず途方に暮れるマリアだったが、「この子は生きる運命だ」という母フアナの言葉に力付けられ産み育てることを決意する。果たして、マリアと赤ん坊の運命は……


映画を見る前に知っておきたいこと

ベルリン国際映画際銀熊賞(アルフレッド・バウアー賞)とは?

ベルリン国際映画祭の初代ディレクターだったアルフレッド・バウアーの名前が与えられたこの賞について少し。1986年にアルフレッド・バウアー氏が亡くなったことを受け、その翌年から始まったのがこのアルフレッド・バウアー賞であり、ベルリン国際映画際の銀熊賞の一部門である。ベルリン国際映画際の最高賞(グランプリ)として知られるのが金熊賞であるが、銀熊賞にはそれにに次ぐ賞である審査員グランプリを初め、監督賞、男優・女優賞、最優秀短編映画賞、芸術貢献賞がある。ベルリン国際映画際の中における最高賞(グランプリ)以外の主要な賞という位置付けだ。

アルフレッド・バウアー賞もそんな銀熊賞の一つで、映画に「新たな視点」をもたらしたと評価された作品に与えられる。よって新人監督が受賞することが多いのがこの賞の特徴でもある。カンヌ国際映画祭でいうところのメインのコンペティション部門を補う意味で、新しい才能が紹介されることが多い監督週間や批評家週間に近い賞だと言えるかもしれない。

グアテマラ映画とは?

グアテマラ映画と聞いてもピンとこない人が大半だと思う。もちろん僕もそんな一人である。それもそのはずで本作『火の山のマリア』は正式に上映されたグアテマラ映画としては日本で初めての作品である。

グアテマラは映画においてはまだまだ後進国というイメージがある。これまで何本か目にしたグアテマラ映画はほとんどがドキュメンタリーであった。グアテマラ軍が民兵組織を使って20万人以上の国民を拷問し殺害した1980年代の大量殺戮を扱った作品や、グアテマラにある太古から継承してきた文化・伝統を通して人間の死生観をテーマにしたものだ。

本作もある意味ではドキュメンタリーに近い臨場感を持った作品であるが、しっかりとした人間ドラマが描かれている。しかし、まだまだ映画が娯楽というレベルには達していないというのが印象だが、そこに新鮮さがある。

グアテマラ映画は楽しむものという感じがしない分、社会問題に対するメッセージや、人間の在り方を問うことを目指しているので、そこにある芸術性や映画の持つエネルギーをダイレクトに味わうことができる。今の時代に本作のような映画の原点とも言える作品が、「新たな視点」をもたらしたと評価されたことは、昨今の話題性重視で映画が評価される風潮に一石投じることになると思う。

2015年の第68回カンヌ国際映画祭でもこうした動きがあった。パルム・ドール(最高賞)を巡って、審査員とメディアや批評家の意見が分かれてしまった。審査員長を務めたコーエン兄弟を筆頭に審査員は満場一致で『ディーパンの闘い』を指示したのに対し、メディアや批評家は話題性のある『キャロル』を推した。

カンヌやベルリンに続き、世界中でこうした動きがあれば、これから日本でももっとグアテマラ映画が紹介されるようになるかもしれない。

グアテマラという国

グアテマラ映画が日本ではまだまだ紹介されていない現状なので、少しでもイメージを膨らますためにグアテマラがどんな国なのかを紹介したい。映画はその国の特徴を必ず反映することと、グアテマラ映画が社会問題や文化・伝統を扱った作品が多いので、国を知っておくことに意味はあるはずだ。

ーグアテマラー
南米メキシコの南に位置し、国土面積は北海道と四国を合わせた広さより少し大きい108,889㎢。日本と同じ火山国で、地震も多く、温泉もある。気候は暑くも寒くもなく、一年中過ごしやすいため「常春の国」と呼ばれる。人口は約1547万人(2013年)。そのうち46%を本作の主人公でもあるマヤ系先住民が占めているが、社会の末端に追いやられ、教育や保健医療といった基本サービスの利用も制限され、貧困率は80%にも上る。また、国民の約1割(150万人以上)が米国に移住し、海外送金が貧困地域の家計を支える。日本とは伝統的に友好関係を築き、2015年には外交関係樹立80周年を迎えた。

-ヒューマンドラマ, 洋画
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