遠い異国の地で姿を消した娘を探す、父親の孤独な旅を幻想的に描いたロードムービー。「ロード・オブ・ザ・リング」のヴィゴ・モーテンセンが主演・製作・音楽までを手がけ、「―全てを捧げた」という謳い文句で話題になっている作品だ。
「死者たち」「リヴァプール」で有名なアルゼンチンの監督、リサンドロ・アロンソと、アキ・カウリスマキ作品を手がけるフィンランドの撮影監督ティモ・サルミネンがタッグを組み、国際映画批評家連盟賞を受賞した。
- 製作:2014年,アルゼンチン・デンマーク・フランス・メキシコ・アメリカ・ドイツ・ブラジル・オランダ合作
- 日本公開:2015年6月13日
- 上映時間:110分
- 原題:『Jauja』(ハウハ)神話の中で語り継がれる豊穣と幸福の理想郷。
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 ティモ・サルミネン
- 3.2 暗殺がきっかけ・・・?
予告
あらすじ
舞台は1882年、パタゴニアの荒野。デンマーク人のディネセン大尉(ヴィゴ・モーテンセン)は、アルゼンチン政府軍による先住民掃討作戦に参加していた。しかし作戦中、野営地にいたはずの娘・インゲボルグが忽然と姿を消してしまう。
娘を溺愛しているディネセンは必死で探すも、険しい荒野の地形や思わぬ障害に阻まれてしまう。やがて、乗っていた馬も失い広大な荒野で一人きりになってしまったディネセンは、一匹の犬に導かれるように不思議な世界に迷い込んでいくのだった・・・。
映画を見る前に知っておきたいこと
ティモ・サルミネン
四隅が丸い正方形の35mmフィルムを使用することで、独特の世界観を作り上げている。四隅の丸みが柔らかみのある何とも言えないユーモアを生み出している割に、正方形の狭いフィルムが父親の感じている孤独感、切迫感を表現している。
これは、撮影監督のティモ・サルミネンの仕事である。フィンランドの名匠アキ・カウリスマキ監督の全ての作品を手がけている撮影監督だが、日本では知名度はあまり高くない。映画マニアの中でも知る人ぞ知るというポジションのようだ。
特に色彩感覚について高い評価を得ていて、アキ・カウリスマキ監督の信頼も厚い。だが信じられないことに、実はこの人は色盲である。
余談だが、正方形の映像はグザヴィエ・ドラン監督が『Mommy/マミー』で使用したことでも話題になった。ドラン本人は途中からフルスクリーンにすることで、登場人物の心の開放を表現したかったと言っていた。ティモ・サルミネンはなぜ35mmフィルムでこの作品を撮ろうと思ったのか、興味が尽きない。
暗殺がきっかけ・・・?
数年前に、親友が故郷からはるか遠くの地で暗殺されたことを知らせるeメールを受け取った。彼女は映画について書いたり話したりするのが好きだった。時折、熱し過ぎることもあったが、とにかく、彼女に起こった悲劇に僕はひどく動揺しショックを受け、この物語を考え始めた。そして、かつての彼女の助言に従い、僕は今回の『約束の地』では、言葉と自分の願望に対してもっと余裕を持つことにした。
すると、奇妙な話だが、この映画の方から僕に訴えかけてきた。そして、人間が消え、説明できない完全に謎めいた方法で戻ってくるという非現実的な形を取ることで、この映画は我々が住んでいる世界や時代をもっと理解する手助けをしてくれるのだと。
–リサンドロ・アロンソ 公式サイトより
暗殺・・・?僕は平和ボケした日本人なので、まずどこまでが本当なのか疑ってしまう。ともあれ、僕にはとても彼の言葉の全てを理解することは出来なかった。これはもう作る側の感覚でしかないのだろう。
この映画は僕らが住んでいる、つまり現代社会をもっと理解する手助けをしてくれる。それは文明と原始の邂逅なのか、寄る辺を失い彷徨うディネセンの孤独なのか、あるいはその全てなのか。
幻想的で独創的な世界観やヴィゴ・モーテンセンのこの映画にかける想い、ティモ・サルミネンが映し出す美しい映像美。見所はいくらでもあるが、僕ならリサンドロ・アロンソのこの言葉を胸に閉まって見たいと思う。