映画を観る前に知っておきたいこと

【人生の約束】「絆」と「再生」の感動の人間ドラマ

投稿日:2015年12月21日 更新日:

人生の約束

数々のテレビドラマを世に送り出してきた巨匠・石橋冠が78歳で初めて映画に挑む!「池中玄太80キロ」シリーズをはじめ「新宿鮫」シリーズ、「点と線」、「刑事一代」などのヒットドラマを手がけながら長年胸に秘めていたのは「1本だけ映画を撮りたい」という想いだった。そして、ここにきてようやく探し求めたテーマと巡り会い、満を持して今の日本に必要なメッセージを銀幕に描く。2016年の始まりに相応しい「絆」と「再生」の感動の人間ドラマが誕生した。

石橋監督の集大成とも言える本作には、日本を代表する俳優が顔を揃えた。主演には40代半ばにして脂がのった演技を見せる竹野内豊。共演は石橋冠に並々ならぬ想いを寄せる江口洋介。石橋監督の代弁者とも言える役所を演じる西田敏行。さらに優香、松坂桃李、ビートたけし、柄本明、小池栄子なども出演する。

人生はやり直せない。ただ変われるのなら変わりたかった。人生の中で見失い置き去りにした大切なものが見えてくる。

  • 製作:2016年,日本
  • 日本公開:2016年1月9日
  • 上映時間:120分

予告

あらすじ

IT関連企業のCEO中原祐馬(竹野内豊)は、会社を大きくすることにしか興味がなかった。そんな祐馬の携帯にここ数日、かつて共に会社を興しながらも追い出す形で決別した親友・航平から何度も着信があった。無言の留守番電話に胸騒ぎを覚えた祐馬は航平の故郷の富山県・新湊へと向かう。そこで待っていたのは思いがけない親友の死だった……

人生の約束

祐馬は町内会長の西村玄太郎(西田敏行)から、病に冒され余命わずかだった航平が曳山(ひきやま)につながりたいと故郷に戻ってきたこことを聞かされる。事態が飲み込めない祐馬が線香をあげると、航平の義理の兄・鉄也(江口洋介)は祐馬のことが許せず殴り掛かってしまう。故人を惜しむ場が荒れるのを防いだのは航平の娘・瞳の冷静な対応だった。航平に子供がいたことに驚いた祐馬は、自分に何かできることはないかと瞳に尋ねる。すると瞳は「西町から四十物町の曳山を取り返してくれますか?」と言うのだった。四十物町(あいものちょう)では前代未聞の曳山譲渡に町が揺れており、約束を反古にした西町に対して航平は最後まで抗議していたのだった。

人生の約束

一方、東京では祐馬の会社が不正取引の疑惑で強制捜査を受けることとなっていた。これによって祐馬は会社も仲間も失ってしまうのだった。そして、すべてを失った祐馬に一つだけ残ったものは瞳との約束だった。約束を果たすため再び新湊へと向かう祐馬。そこでは祭りが間近に迫っていた……

映画を見る前に知っておきたいこと

石橋冠という監督

映画としては石橋冠初の監督作品なので、彼の作風を紐解く時どうしても比較するものがテレビドラマになってしまう。ただ映画を撮ってもまったく問題ないほどその制作キャリアは長い。本作は78歳で「1本だけ映画を撮りたい」という想いを叶えた作品だが、これまでテレビドラマでは55年の制作キャリアを誇る。

石橋冠監督はテレビドラマ制作においてもかなり強い拘りを持っており、決して侮れない。石橋監督の「良いドラマは良いサスペンスの文体を持っている」という持論は、見る者にある種の混乱を与えることが大切としている。ドラマはおもしろいことが第一であり観客の心を感動で満たすことを信条とするエンターテイメント性を重視する反面、ただわかりやすいだけでなく深く心に刻まれるような作品を生み出すことを心がけている。

また、70年代から現在に至るまで数多くのヒットドラマを手掛けてきた石橋監督は、昨今のテレビドラマに苦言を呈している。本来ドラマは人々の日常を描き、そこにある心情や絆を丹念に表現し、人生の応援歌でならなければならないのに、昨今のドラマはファッション化してしまっていると語る。

昨今、視聴率ばかりを気にしたわかりやすい作品が増えたのは事実だ。そこにはテレビの規制というものも大きく関係しているが、それを招いたのは視聴者かもしれない。

煙草を吸うシーンが子供に悪影響だと苦情を出すのはわかるが、テレビドラマに出てくる不良はいつしか煙草を吸わなくなり、作品自体がどこか不自然なものになってしまった。これでは悪影響すら与えることができない。

そんな時代だからこそ、70年代からテレビドラマを撮り続けた石橋監督が映画に挑戦するということには意味がある。別に本作で今のテレビで流せないような表現が出てくるわけではないが、視聴率を気にしたわかりやすいものを作る必要もないので石橋冠らしい人間ドラマが見られるはずだ。

石橋監督だから実現したキャスト

この映画には石橋監督でなくてはこうはならなかったという要素が多くある。「絆」と「再生」というテーマも石橋監督らしいものだが、作品の内容以外の部分でも石橋監督ならではと言えるのがキャスティングの豪華さである。

それは石橋監督がこれまでのテレビドラマで積み上げたキャリアによるところが大きい。過去に石橋作品に出演し、その素晴らしさを知る彼らは快く本作への出演を快諾したという。

そんな中、石橋作品に初参加の主演・竹野内豊は、これまでにはないフレッシュな要素を石橋監督が求めたキャスティングだった。これにより本作では竹野内豊と江口洋介の初共演も実現している。

最初は映画の内容と同様に二人は撮影中も距離を置いていたという。しかし、撮影が進むにつれ飲みに行くような間柄となった二人の間にある空気感はそのままスクリーンにも現れている。

-ヒューマンドラマ, 邦画
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執筆者:


  1. ractyan より:

    全体的にはいい出来だと思いますが、どうもしっくりこない。
    例えば、瞳(高橋ひかり)が何故父(航平)のことを、”あの人”と冷たくいうのか?また、秘密の場所に裕馬をわざわざ連れて行く理由も変だ。
    兎に角、重要な存在の瞳に演じさせる事柄がどうも不自然なのです。
    しかし、
    富山県の漁村を舞台にしたのは非常に良かったと思います。

  2. スネ夫 より:

    うーん なんか薄っぺらいストーリー。
    冷酷無比な社長である主人公が、見捨てた友の死を機に、友の願いを叶えるべく熱く動き出す。
    まわりの人々も単純に泣いたり怒ったり歌ったり。
    ひと昔前のお涙ちょうだいの青春ものみたい。

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