映画を観る前に知っておきたいこと

【葛城事件】『その夜の侍』赤堀雅秋監督待望の2作目は家族の悲哀を描いた問題作

投稿日:2016年5月17日 更新日:

葛城事件

堺雅人主演の『その夜の侍』(12)で監督デビューを果たし、同年の新藤兼人賞金賞、ヨコハマ映画祭・森田芳光メモリアル新人監督賞を受賞。さらにはモントリオール世界映画祭、ロンドン映画祭、台北金馬奨映画祭などに正式出品されるなど国内外で高い評価を得た赤堀雅秋監督による待望の2作目は、人間の本質に根ざす無様さや滑稽さ、残酷さや狂気までをあぶり出した問題作!

次男が無差別殺傷事件を起こし死刑囚となったある家族の壮絶な物語り。抑圧的な父親。リストラされ孤立する長男。精神を病んだ母親。そして、死刑反対の立場から次男と獄中結婚した女。それぞれの立場が交錯し、家族の悲哀、贖罪、死刑制度の存廃問題など様々なテーマを同時に映し出す。

主演は善人から悪役、コミカルな役など幅広くこなせる日本を代表する俳優・三浦友和。「父親・清役は三浦さん以外に考えられない」という赤堀雅秋監督の熱烈オファーにより決定した。、次第に精神を病んでいく妻の伸子役に南果歩、長男の保役は舞台版「葛城事件」では稔役を演じた新井浩文、次男の稔役にはオーディションで選ばれた若葉竜也、さらに死刑制度反対の立場から稔と獄中結婚する女性に田中麗奈と実力派俳優が集結した。


  • 製作:2016年,日本
  • 日本公開:2016年6月18日
  • 上映時間:120分
  • 映倫区分:PG12
  • 原作:舞台「葛城事件」赤堀雅秋

予告

あらすじ

ありふれた郊外の住宅地。葛城清はボソボソと「バラが咲いた」を歌いながら、古びた自宅の外壁に大量に落書きされた「人殺し」「死刑」などの誹謗中傷をペンキで消していた。葛城事件やがて庭へと移動し庭木にホースで水を撒きながら、ふと、この家を建てた時に植えた、みかんの木に生る青い果実に手を延ばす……葛城事件清は親が始めた金物屋を引き継ぎ、懸命に切り盛りしてきた。美しい妻・伸子との間には2人の息子に恵まれ、念願のマイホームを建て、思い描いた理想の家庭を作れたはずだった。しかし、清の抑圧的な性格は、気付かないうちに家族を支配するようになっていた。葛城事件 長男・保は幼い頃から従順なよくできた子供だったが、対人関係に悩み、会社からのリストラを誰にも言い出せずに苦しんでいた。次男・稔は堪え性がなく、アルバイトも長続きしない。何かと清にそれを責められ、理不尽な思いを募らせていた。清に言動を抑圧され、思考停止のまま過ごしていた妻の伸子は、ある日、清への不満が爆発してしまい、稔を連れて家出する。そのことがきっかけで家族は修羅場となり、葛城家は一気に崩壊へと向かっていくのだった。葛城事件そして、21歳になった稔は8人を殺傷する無差別殺人事件を起こしてしまう。清は稔の育て方が間違っていたのかと自問自答し、伸子はさらに精神を病んでいった。葛城事件死刑囚となった稔は、死刑制度廃止を訴える女性・星野順子と獄中結婚するのだが……


映画を見る前に知っておきたいこと

日本映画界の異端・赤堀雅秋監督

僕が赤堀雅秋監督のデビュー作『その夜の侍』(12)に出会ったきっかけは、堺雅人が好きだったからだ。この映画、主演が堺雅人と知って見始めたのだが、主人公の強烈なキャラクターで一瞬、堺雅人だとわからなかった。堺雅人の演技がうまいのもあるが、しばらくして演出や脚本がそうさせていることに気付いた。どこか淡々とした演出は妙にリアルで、人間の本質を浮き彫りにするようなストーリーにどんどん引き込まれていった。

邦画らしくない、まるでヨーロッパ映画を見たような気分にさせられたのを覚えている。当時、監督が誰なのかも知らなかったし、ましてやデビュー作だなんて思いもよらなかった。知っていたらもっと感心しただろう。後になってこの映画がモントリオール世界映画祭、ロンドン映画祭などヨーロッパの映画祭で評価されたと知って、僕の感想もあながち間違っていなかったと納得した。

しかし、赤堀雅秋監督はデビュー作でなぜこれほどの映画を撮れたのか。それは舞台作家としてのキャリアが彼をただの新人監督ではなくしている。『その夜の侍』ももとは、赤堀雅秋監督の舞台作品で、戯曲(舞台の台本)や演出を手掛けたものを、自身で監督・脚本を務め映画化したものだ。舞台作家として、その独特の世界観は“赤堀ワールド”と言われ、すでに熱狂的なファンを持っている。舞台から映画へそのまま作品を輸出したことがデビュー作で『その夜の侍』を撮ることができたカラクリである。

そして、2作目となる本作も同様のアプローチが成されている。ただ、赤堀雅秋監督は『その夜の侍』で中毒になるくらい映画を監督する作業が面白かったと語っており、本作は戯曲(舞台の台本)の時点から映画を意識して書いたようだ。そういう意味ではより映画監督としてアジャストした作品だと言える。『その夜の侍』を見たら、新作は期待せずにはいられない。

僕は『その夜の侍』を見て以来、赤堀雅秋監督のファンだが、あくまで映画監督・赤堀雅秋のファンであって、舞台の方はまったく知らない。映画の制作スパンが長いのでファンとしては複雑な思いもあるが、舞台あっての人だと思うのでそこは仕方がない。

はっきり言って、日本の映画界においては異端な立ち位置であるため、巨匠、新鋭、どう呼べばしっくりくるのかわからないが、その実力はジョーカー的存在だ。

-6月公開, ヒューマンドラマ, 邦画
-,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。