2014年・第67回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞した重厚なヒューマンドラマ。文豪チェーホフの著作に着想を得て、カッパドキアの地名の由来になった馬、シェイクスピアの一節を引用。壮大な大自然の中で描かれる物語なのに、開放感はまるでない。息のつまる閉塞感に満ちた部屋で、登場人物はむき出しの感情をさらけ出し対峙する。監督はトルコの巨匠ヌリ・ビルゲ・ジェイラン。
- 製作:2014,トルコ・フランス・ドイツ合作
- 日本公開:2015年6月27日
- 原題:『Kis Uykusu』
- 上映時間:196分
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 カンヌ国際映画祭最高賞・パルムドール受賞作品
- 3.2 文豪、アントン・チェーホフ
- 3.3 チェーホフの作風
- 3.4 海外のレビュー
予告
あらすじ
トルコ・カッパドキア。
元舞台俳優のアイドゥンは親から莫大な資産を受け継ぎ、ホテルのオーナーとして経済的には何の不自由もなく暮らしていた。しかし、若くて美しい妻のニハルとはうまくいかず、夫を捨てて身を寄せている妹のネジラともぎくしゃくしている。さらに家を貸していた一家からは、思わぬことで恨みを買ってしまう。
冬になり、彼らの閉ざされた心は凍てつき、ささくれだっていく。窓の外の風景が枯れていく中、鬱屈した気持ちを抑えきれない彼らの、すれ違う会話。善き人であること、人を赦すこと、豊かさとは何か。人を愛することは人には無理なのか。
互いの気持ちは交わらぬまま、アイドゥンは「別れたい」というニハルを一人残し、イスタンブールへ旅立つ決意をする。雪は大地を白く染める。彼らの人生をも真っ白に塗り替えるかのように。
映画を見る前に知っておきたいこと
カンヌ国際映画祭最高賞・パルムドール受賞作品
裕福なものとそうでないもの、西洋的な世界とイスラム的な世界、男と女、老いと若さ、エゴイズムとプライド、そして愛と憎しみといった様々な普遍的要素が対峙されていく。人を赦すこと、愛すること、分かり合うことは、こんなにも苦しく困難なものなのだろうか。
-公式サイト
カンヌ国際映画祭にはジャン=リュック・ゴダールの『さらば、愛の言葉よ』、ベネット・ミラーの『フォックスキャッチャー』、グザヴィエ・ドランの『Mommy/マミー』などの注目作品が集まる中で、『雪の轍』は映画祭3日目という早い段階で上映されるや否や、メディアから絶賛が相次ぎ、一気に最高賞の有力候補となった。
監督はトルコが誇る巨匠ヌリ・ビルゲ・ジェイラン。『冬の街』『昔々、アナトリアで』『スリー・モンキーズ』などで過去の作品でもカンヌで受賞を果たしているが、この監督の映画が日本で公開されるのは初めて。日本でどういうリアクションが得られるのか楽しみなところ。
舞台となったトルコ・カッパドキアはCappadocia (美しい馬の地)を意味する。”妖精の煙突”と呼ばれる奇妙な形をした岩が各所にそびえ立つ広大な大地で、世界遺産にも登録されている。
文豪、アントン・チェーホフ
ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督は、ロシアの文豪アントン・チェーホフのある短編小説に着想を得てこの映画の企画を思いついたという。と言われても僕は文学にはあまり明るくないので、彼について少し調べてみたのだが、これがなかなかおもしろい。
監督本人は「観客の想像をあまり方向づけてしまうといけない」という理由でどの作品かを名言することを避けていたので、チェーホフについても彼の意向を尊重して伏せておく。内容はチェーホフの作風、この映画の方向性の話だ。どうしても読みたい、という人だけ自己責任でお願いします。
海外のレビュー
最後に、この映画についての海外メディアのレビューを、気になる一文だけを抜粋して締めようと思う。
魅惑的で、陶然たる美しさに心が奪われる。
普遍的な人間のもろさを描きながら、観客に豊かさをもたらす作品。
―バラエティ誌/ジャスティン・チャン
観れば無傷では帰れない、その記憶が焼きついて離れないこの映画は、
私たちの心の中に恐怖とメランコリーを引き起こす。
それは、観客が自己喪失寸前の登場人物たちに一体化し、
いつか自分も、彼らのようになるかもしれないという無限の苦しみでもある。
―テレラマ誌/ピエール・ミュラ
ヌリ・ビルゲ・ジェイランは、哲学者である。
あらゆるものを蝕む様々な矛盾と、人間としての条件を残酷かつ静謐に捉える。
それでも、この映画は光に満ちている。
―ル・ジュルナル・デュ・ディマンシュ紙/アレクシス・カンピオン
自分の観た映画の確認に、参考にさせていただいています。
本来は見る前の予習として情報を提供いただいているようですが、私は気紛れに映画を観るタイプであり、また予備知識なしで見る方が好きなので、本来の目的と逆ですみません。
それにしても、採り上げる作品の数と、毎作すごい情報量で非常に勉強になっています。
お二人で運営なさっているようですが、業界の方なのでしょうか?趣味で運営なさっているとしたら、立派ですね。
お二人のプロフィールを楽しみにしています。
また、今後も参考にさせていただきます。
頑張ってください。
コメントありがとうございます。
随分とお返事をお待たせしてしまい、申し訳ありません。
応援のメッセージとして、とても嬉しく思いながら読ませていただきました。
運営は完全に趣味で、業界とは全く何の関係もありません。
残念ながら(笑)
ずっとおざなりにしていたプロフィールですが、ytokumarさんにコメントを頂いて
「そろそろちゃんと作らないといけないね」と、今月中には形にする方向で話し合いを進めています。
最後に、コメントを読んで、応援がこんなに勇気付けられるものなのかと驚きました。
本当にありがとうございました。
今後も、ytokumarさんに参考にしてもらえるようなサイトであれるように頑張っていきます。
こんなにスッキリしない映画は見たことがない。
感謝を知らないあの主人公の糞禿には死んでほしかった。
ぜひ続編ではニハルにはあの役立たずを刺し殺してほしい。
それよりももっと気持ち悪いのが、この映画を観て「素晴らしい」
と悦に入る連中。
あんな豆知識おやじの自分メルヘン祭りのラストシーンには本当に
虫唾が走る。本当に死ねばいいのに。
と私は思いました。
私はね。
まあそれだけこの映画にはのめり込まされました。
いやいや、結構的を射た感想だと思います。
「登場人物を通して、人間の魂の暗部を探索したかった。」というヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の思惑を見事に汲み取ったのでは?
「観れば無傷では帰れない」と海外の批評家が言っていたのがより印象的になりました。
僕もこういう映画を手放しで褒める人はあまり好きじゃありません。
努力家の兄に対して言いがかりをつけるバツイチの妹、
優しく純粋な女性をヘコませてやろうという邪悪な男。
この2人はさすがに醜いと思うけれど、
他の人たちはさほど悪くない気がする。
それぞれ魂の暗部はあっても懸命にもがきながら
だれかの役に立ち自分も幸せになりたいと願っている。
主人公は’良い人間’演じるのはやめて
’ニハル愛してるぜ~’ って叫べばいいのに(笑)
夫婦円満にしたいならたまにはバカやってほしいです。
ところで、曲者が多い登場人物の中で
農場で暮らす友人は一番安心できるキャラだった。