映画を観る前に知っておきたいこと

【孤独のススメ】持たざる者の幸せと求める者の葛藤をオランダの暖かい光で描く

孤独のススメ

妻に先立たれ“全てを失った男”と、言葉すら持たない“何も持たない男”の奇妙な共同生活を描いたオランダ産のコメディドラマ。

監督は、ディーデリク・エビンゲという人物で、オランダでは俳優としても活躍していた。本作が長編デビュー作となる。声をあげて笑うようなものではなく、静かに心に湧き上がる奇妙なおかしみが特徴的。

国際映画祭ではデビュー作にしてあちこちで観客賞を受賞。見る側にとっては、審査員が机に肘を立てて選ぶ賞よりも、ある意味信頼できる賞である。

日本でも2014年にSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で上映され、最優秀作品賞を受賞した。

原題の『Matterhorn(マッターホルン)』は、スイスとイタリアの国境をまたぐアルプスの霊峰の名称だ。


  • 製作:2013年,オランダ
  • 日本公開:2016年4月9日
  • 上映時間:86分
  • 原題:『Matterhorn』

予告

あらすじ

フレッドは、オランダの田舎町で人を避けるように孤独で単調な毎日を過ごしている。

そんなフレッドの前に、ある日突然テオという男が現れる。なんとこの男、言葉を持たない。当然、お金もなければ帰る場所も分からない。
孤独のススメそうして、やむを得ず始まったテオとの奇妙な共同生活は、少しずつフレッドの日常を変えて行く。フレッドは以前よりも怒り、悲しみ、そして笑うようになった。

いつしか二人の間には友情のようなものが芽生え、フレッドの前にはひとりでは見えるはずのなかった鮮やかな景色が広がっているのだった。


映画を見る前に知っておきたいこと

しがらみを手放せば楽になる

孤独のススメ
しがらみを手放せば楽になる。テオはちょっと手放しすぎ。

誰でも簡単に分かるようなことが、なんで僕らにはこんなにも難しいんだろう。

手に入れる豊かさよりも、手放す豊さの方が遥かに幸せに近い。捨てる生き方こそが幸せを運んでくる。

たくさんの偉人の名言やことわざで何度も繰り返し言われているのに、なぜか僕らは捨てられない。手に入れることを渇望し、かつてあったモノを嘆き、それなのに未来は渇いて見える。

『孤独のススメ』は、孤独というシリアスなテーマをコミカルに優しく描いた物語だ。

“全てを失った男”が出会った“何も持たない男”は、何も持たないからこそ持てるものを持っていた。

何かを手に入れようと躍起になっている人、失ったものを、あるいは何も持たないことを嘆いている人に、ふと立ち止まってこの映画を見ることをおすすめしたい。

1時間半だ。そんなに長い時間じゃない。

心の休息の隙間に、“優しい何か”を少しだけ詰め込んでくれる、良い機会になると思う。

マッターホルンには悪魔が住んでいる

mattarhorn
映画の原題になっているマッターホルン。標高は4478m。人を寄せ付けない独特の切り立った見た目が特徴的な、アルプス山脈に属する山のひとつである。

この山にまつわる伝説は星の数ほど存在し、地元住民はおろか、登山家からも「魔の山」として畏怖されてきた伝説の霊峰だ。

初登頂を果たしたエドワード・ウィンパーも、「※メンバーが事故にあった後、雲の上に大きな十字架が現れた」と話している。
※下山途中の滑落事故によりパーティーの7人中4人が死亡した。

最近では登頂ルートも確立されていて、技術は必要だが登頂はそれほど難しくないとされている。しかし、毎年何人か、熟練していない登山家が不幸にも命を落としている。

オランダ映画と絵画

オランダの映画産業は、ヨーロッパ各国に比べて比較的小規だ。

ここでオランダの映画産業について長々と語ることも出来るけれども、今回はオランダの芸術とこの映画の奇妙な共通点についての話をしようと思う。

というのも、最近エルマンニ・オルミ監督の代表作『木靴の樹』を見させてもらう機会に恵まれ、映画の映像美を楽しむということを覚えてから、そんな話をしたくて仕方がない。

しかしリアルでそんな話が盛り上がる相手もおらず、ネットにぶちまけてしまおうというわけだ。

オランダの暖かくて優しい光

フェルメールオランダ出身の画家と言えば「炎の画家」フィンセント・ファン・ゴッホ、「光の画家」ヨハネス・フェルメール辺りが有名だろうか。他にレンブラント・ファン・レインも光を描く画家として有名だ。

『孤独のススメ』の映像の雰囲気は、オランダを代表する画家たちが描く絵画の雰囲気と不思議な共通点を持っているように思う。

どちらもオレンジや黄色などの明るい暖色を基調として、明るく暖かい、そして優しい雰囲気を持っている。

光の魔術師、光の画家と称される画家は他にもたくさんいるが、オランダのこの空気を持っている画家を、僕は他に知らない。クロード・モネはオランダの光にはない透明感が特徴的だし、ウィリアム・ターナーはもっと荘厳で壮大な作品を描いた。

ましてやオランダの芸術のこれらの共通点が、意図的に繋ぎ止められたものだとは考えにくい。そう考えると、このオレンジ色の暖かい光のイメージは、オランダの地域的な特徴なのではないだろうか。

しかし調べて見ると、山がない土地柄のせいかオランダの天気が落ち込みやすく、どよーんとした暗い雲に覆われることが多いらしい。

だからこそ光の暖かさに憧れたのか。あるいは山がないので西日が町をよく照らすのだろうか。建物に照り返る夕日の見事なオレンジは、壁の色と合わさって、なんともノスタルジックな暖かさを醸し出している。

僕は芸術は好きなだけで詳しいわけではないし、この話はイメージからの推論に過ぎない。正直なところ、すごく適当なことを言っている気もする。

それでも、こうして考えを巡らせていると、オランダの光に少しだけ憧れたりしている。好きなものがまたひとつ増えそうだ。

コメント2件

  • 不屈の紫芋ようかん より:

    【孤独のススメ】という邦題が全く意味なし。

  • 箱の中 より:

    同感です。
    見終わった後で、タイトルと中身の違和感を覚えました。美しい映画なのに残念です。

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