映画を観る前に知っておきたいこと

こころに剣士を
悲劇の国エストニアで生まれた感動の実話

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こころに剣士を

勇気の先に未来がある

1950年初頭のエストニア、自由に生きることが許されない国民は鬱屈とした生活を強いられていた。ソ連の秘密警察に追われ、田舎町で小学校教師として身を隠す元フェンシング選手エンデル。彼は、身の危険を顧みずフェンシングを教えることで子供たちに勇気を与えようとした……

本作を含め、これまで4度もアカデミー外国語映画賞のフィンランド代表作品に選ばれているクラウス・ハロ監督が実話をベースに、伝説のフェンシング選手と子供たちの絆を描き出した感動作。

フィンランド・アカデミー賞作品賞受賞。

予告

あらすじ

1950年初頭エストニア、子供たちの多くはソ連の圧政によって親を奪われた……

元フェンシング選手のエンデル(マルト・アバンディ)はソ連の秘密警察に追われ、小学校の教師として田舎町ハープサルに身を隠している。

こころに剣士を

© 2015 MAKING MOVIES/KICK FILM GmbH/ALLFILM

エンデルは課外授業として希望をなくした子供たちにフェンシングを教えることに。子供が苦手な彼を変えたのは、学ぶことの喜びに目を輝かせる子供たちの姿だった。そんな生徒たちの中で、幼い妹たちの面倒を見るマルタ(リーサ・コッペル)と、祖父(レンビット・ウルフサク)と二人暮らしのヤーン(ヨーナス・コッフ)は、とりわけエンデルを父のように慕った。

こころに剣士を

© 2015 MAKING MOVIES/KICK FILM GmbH/ALLFILM

レニングラードで開かれる全国大会に出たいという子供たちの願いを叶えてやりたいエンデルだったが、素性を隠している彼にとってそれは身の危険を伴う決断だった……

映画を観る前に知っておきたいこと

予告編の冒頭で「ナチスとスターリンに引き裂かれたエストニア」というテロップが流される。これはエストニアが大戦中のわずかな期間に、ドイツとソ連それぞれから支配を受けたことで国が分断された歴史を表している。そして、そこからこの物語は展開していく。

エストニアは日本人にとってあまり馴染みのない国かもしれないが、そこには敗戦国以上に辛い経験がある……

引き裂かれたエストニア

第二次世界大戦初期の1940年、ソ連はエストニアへ侵攻し、自分たちが承認する政府の設立を要求した。北欧の小国エストニアがソ連に対抗できるはずもなく、戦争を回避するため政府はソ連の要求を受け入れた。これにより国家としてのエストニアは事実上消滅することになる。

この時、エストニアの指導的政治家と将校の多くは処刑され、1万人のエストニア人がシベリアなどのソ連国内の遠い土地に追放され、強制労働の末にその半数以上が命を落とした。

しかしその翌年の独ソ戦を機に、エストニアはナチス・ドイツに占領されることになる。当初はソ連からの解放とも思われたが、この歴史はそんな生易しいものではなかった。

ドイツ軍とソ連軍のどちらにもエストニア人部隊が組織され、訳も分からないうちに国民同士が殺し合いをさせられる羽目になったのだ。

そして第二次世界大戦末期、ドイツの敗戦が濃厚になった1944年にエストニアは再びソ連の占領下となった。

終戦後も、ドイツに加担したエストニア人や反体制的と見なされた者は次々と処刑され、ソ連の秘密警察によって国民は監視下に置かれることとなる。

映画の舞台となる1950年初頭のエストニアは、他人を信用することができない自由を奪われた社会なのだ。国が鬱屈した空気に覆われる中、子供たちに希望を与えることは命以上の価値があったのかもしれない。

-ヒューマンドラマ, 洋画
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執筆者:


  1. Charlie より:

    豪州メルボルンで、この映画を観て、感動しました!
    子供向けにも大人向けにも素晴らしい映画だと思います。特に、沖縄の人々に観てもらいたい!

  2. 今川 幸緒 より:

    Charlieさんのコメントで、同じように戦争に翻弄された歴史と沖縄憲法など武道の精神が宿る土地として、この映画と沖縄の人々がどこか結びついたような心持ちです。

  3. 匿名 より:

    安倍首相、菅官房長官、岸田外務大臣、稲田防衛大臣、そして文部科学省の人間たちをはじめとする国会議員すべてに見てほしいかな。
    そのなかの誰一人として見ていなかったら悲しいが、実際そのいずれも見ていないよね、たぶん。

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