映画を観る前に知っておきたいこと

【ディーン 君がいた瞬間(とき)】ジェームズ・ディーン、死の直前のリアル

投稿日:2015年11月23日 更新日:

ディーン 君がいた瞬間

20世紀の伝説ジェームズ・ディーンと彼を追った写真家デニス・ストックの二週間の旅と友情を描いたヒューマンドラマ。傷ついた青春アイコン、叛逆のヒーローなどの異名で今なお多くの人に愛されるジェームズ・ディーン。本作は彼が急死する前の二週間の旅路をスターとしてのディーンではなく、人間としての仕事の面からリアルに迫ったドラマだ。

監督は、自身もまた伝説と呼ばれるロック写真家、アントン・コービン。ジェームズ・ディーンを演じるという危険な挑戦を受けたのは『アメイジング・スパイダーマン2』『クロニクル』のデイン・デーハン。写真家デニス・ストック役にはトワイライト』シリーズのロバート・パティンソンが起用された。

  • 製作:2015年,カナダ・ドイツ・オーストラリア合作
  • 日本公開:2015年12月19日
  • 上映時間:112分
  • 原題:『Life』

予告

あらすじ

俳優、ジェームズ・ディーンと写真家、デニス・ストック。1955年、この二人の男の出会いと一枚の写真が時代を大きく変えていく。

野心に燃える写真家のデニス・ストックは、世界をあっと言わせる衝撃的な写真を撮らなければならないと焦っていた。そんな時に出会ったのが、無名の新人俳優ジェームズ・ディーンだった。ディーン 君がいた瞬間ジェームズ・ディーンの中に潜むスター性をいち早く察知したストックは、彼の密着取材を開始する。最初はなかなか噛み合わない二人だったが、LA、NY、ディーンの故郷であるインディアナまで、共に旅をするうちにお互いの才能に感化され、確かな信頼関係を築いていく。ディーン 君がいた瞬間そんな中、思わぬ形で誕生した一枚の写真は、彼らの人生だけでなく時代を大きく変えていくことになるが―。

映画を見る前に知っておきたいこと

アントン・コービン

anton_corbijn_948x464_2008彼の2007年の作品、多くのロックファンに愛される伝説のバンド・JOY DIVISIONのイアン・カーティスの半生を描いた『コントロール』を見て驚いたのは、まず主演のサム・ライリーがイアンそっくりだと言うことだった。

いや、実際にイアンが動いている映像なんてLIVE映像ぐらいしか、それも数えるほどしか見たことがない。しかし、映画を見ている間は、僕はサム・ライリーが演じるイアン・カーティスに完全に惹きこまれていた。

JOY DIVISIONが好きで見た“ロック映画”のはずの『コントロール』は完全にラブストーリーの主人公だったし、そいつはともすれば僕のイメージしているイアン・カーティス本人よりも魅力的だった。

僕はJOY DIVISIONの相当なファンだが、アントン・コービンのイメージの中のイアン・カーティスこそがイアン・カーティスだと、少なくとも僕の中の彼のイメージはもう重なってしまった。

これと同じことがあのジェームズ・ディーンでも可能であるとすれば、写真家アントン・コービンの実力は想像を絶すると言わざるを得ない。だってあのジェームズ・ディーンだもの。

イアン・カーティスは言っても音楽と詩を生業に生きてきた人間であり、映画はやっぱり畑が違う。その分やり易さはあったと思う。

比べて、ジェームズ・ディーンはまさに映画によって、人々の心の中に強く印象付けられている。彼を改めて映画化しようというのは間違いなく世界に対する挑戦である。

実際、ジェームズ・ディーンを演じるのデイン・デハーンは、最初はこの話を断ったという。それはそうだ。俳優からしたら危険極まりない仕事である。

しかし、アントン・コービンならやってのけそうな気がする。彼もまた伝説と呼ばれた男だ。

被写体とカメラマンの関係

ディーン 君がいた瞬間そのアントン・コービン本人は、ジェームズ・ディーンよりもカメラマンのデニス・ストックの方に興味をそそられたと語る。

「元々僕は、40年以上カメラマンをやっていることもあり、デニス・ストックのほうに興味があった。なので、この映画はカメラマンとその被写体との関係、その両者のバランスについての話なのです。たまたま、その被写体がジャームズ・ディーンだったということが、この作品を面白くしているのです」
引用:アントン・コービン、7年ぶりの来日!ジェームズ・ディーンは「とても重要な人物」

(引用先の東京映画祭でのコメントは読み応えもあるし面白いので、この映画に興味がある人は読んでみるとより深くこの映画について掘り下げることが出来るだろう。内容は映画について、役者について、そして原題について)

彼は40年以上ロックミュージシャンを被写体として写真を取っていく中で、被写体との間に家族のような信頼関係を築くことが出来たという。だからこそ、彼にしか撮れないユニークな写真を撮れたのだと。

この映画には、デニス・ストックとジェームズ・ディーンのカメラマンと被写体のそのような関係について描かれている。

この映画の大きな見所は、ジェームズ・ディーンの写真の数々が映像とリンクして見られるところ。その写真がどういった経緯で撮られたのか、その写真を撮ったカメラマンと被写体の様子を感じられる。

誰もが一度は見たことがあるであろう有名な写真の裏側が見られるのは楽しみだ。
ディーン 君がいた瞬間
当時の反逆のヒーロー、ジェームズ・ディーンもやはり人であり、人生を生きた。現代の目線から改めて、ヒーローではなく人間としての彼を見るには、この映画は最高の入り口ではないだろうか。

ジェームズ・ディーンの魅力

ディーン 君がいた瞬間20世紀最大のスター、叛逆のヒーロー、傷ついた青春アイコンなど、数々の異名で世界中に愛されたジェームズ・ディーン。僕は全く世代ではないのだが、現代の視点から「どうしてジェームズ・ディーンが世紀の名優と呼ばれているのか」ということについて考えてみようと思う。

彼の魅力について一言で言うならば、今となっては「時代を変えた男」だと言うしかない。

映画の中のジェームズ・ディーンは、男前な顔立ちはもちろん、あの甘い雰囲気と佇まいが最大の魅力だ。当時主流だった「守られたい男性像」とは正反対の「守ってあげたい男性像」が女性のハートを鷲掴みにし、男性の多くは憧れの対象として彼を見ていた。

現代では使い古され、当たり前にもなりつつあるキャラクター像だが、1950年代当時はジェームズ・ディーンのスタイルは完全なマイノリティだったのだ。以来、彼のフォロワーと言える俳優が世界各国に現れたことを考えても、ジェームズ・ディーンの存在の大きさが伺える。

ジェームズ・ディーンは、時代に選ばれた人間だった。

しかし、二つ名からイメージされるキャラクター像とは裏腹に、彼自身は賢く、聡明で大胆な行動力のある人物だったと言われている。

今では当たり前になりつつある貪欲な役作りの手法「デ・ニーロアプローチ」を最初に行ったのは彼だと言われていたり、自分の演技だけでなく、映画全体のテーマに沿って他の俳優との関わり方を考えていたり。

彼の映画との関わり方には「守ってあげたい男性像」とは全く別の、革新と躍進を求める貪欲なバイタリティが見え隠れする。

ジェームズ・ディーンが名優と言われる理由は、その手法から生み出された“役”が時代をも変えてしまったところにあるのではないだろうか。

-ヒューマンドラマ, 洋画
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