映画を観る前に知っておきたいこと

リリーのすべて
夫が女性として生きたいと願った時、妻はすべてを受け入れた

投稿日:2016年2月16日 更新日:

リリーのすべて

あなたの愛で、本当の自分になれた。

原作はアメリカの作家デヴィッド・エバーショフによる、世界初の性別適合手術を受けた女性リリー・エルベの半生を題材にした小説「The Danish Girl」。“あるデンマークの少女”と題された実話ベースのこの物語は、夫­が女性として生きたいと願った時、妻がすべてを受け入れるという衝撃的かつ胸に迫る伝記ドラマとなっている。

2011年アカデミー賞で4冠を達成した『英国王のスピーチ』の監督トム・フーパーとオスカー俳優エディ・レッドメインのタッグは『レ・ミゼラブル』(12)以来となった。そして、ゲルタ・ゴッドライプを演じたアリシア・ヴィキャンデルが2015年アカデミー助演女優賞を獲得している。


予告

あらすじ

1926年、アイナー・ベルナー(エディ・レッドメイン)とゲルタ・ゴットライプ(アリシア・ヴィキャンデル)の二人は、画家として生計を立てながら幸せな結婚生活を送っていた。肖像画家のゲルダは女性モデルが不在だったため、中性的な容姿の夫に代役を頼んだ。

リリーのすべて

© 2015 Universal Studios.

女性の格好をすることに最初は戸惑うアイナーだったが、それがきっかけとなり自分の中にある女性としての人格を徐々に意識するようになっていく。男性の身体に女性の心という矛盾した性に葛藤するアイナーは、いつしかリリー・エルベを名乗るようになった。リリーとして過ごす時間は日に日に増えていくアイナーだった。

リリーのすべて

© 2015 Universal Studios.

そんな夫の様子に最初は戸惑いを隠せないゲルダだったが、少しずつリリーを受け入れていくようになる……


映画を見る前に知っておきたいこと

もしも、僕がゲルダの立場だったらすべてを受け入れられるだろうか。トランスジェンダーへの理解も深まった今の時代でも、「なぜ結婚する前に教えてくれなかったのか」と、ただそう考え苦悩する自分の姿しか想像できない。

原作小説の中で、妻ゲルダの心境についてはあまり踏み込まれていないという。伝記としての側面が強かったのだろう。

映画ではアカデミー助演女優賞を獲得したアリシア・ヴィキャンデルの演技によってゲルタの内面まで伝えてくれる。

実在のリリー・エルベの人生

リリー・エルベ
1882年にデンマークに生まれ、ゲルダ・ゴットライプと結婚したのは1904年の22歳の時だった。アイナーが女性として生活をするようになったのは二人がパリに移住した1912年、30歳の頃である。

もともと中性的な見た目のアイナーは、男性として振舞っていた頃もズボンを履いた男装する女性のようだった。リリー・エルベを名を名乗るようになった1920年頃からは、もう男性の格好をすることはなくなっていた。

1930年、アイナーは世界初の性別適合手術を受ける。性別適合手術への理解が乏しいこの時代に手術にアイナーが手術を決断するのは容易なことではなかった。

性に寛容なパリでは、リリーとして自由に生きられたアイナーだったが、やはりその時間は夫婦に危機感を与え始めた。

二人はパリの医者のもとに相談に行くが、医者からは服装倒錯(異性の服装を身に着けることで、性的満足を得ること)と診断され、具体的な処方はされなかった。「女の格好をするのを我慢しろ」ということだ。

その後しばらくして、リリーの体から奇妙な出血が見られるようになる。それは月に1回、まるで女性の生理の様に起こった。

それは、リリーにとって戸惑い以上に女性の人格をより強く意識するきっかけとなり、さらに苛烈に“女性”を求めるようになっていく。そして二人は、当時ジェンダー研究の最先端だったドイツに向かい、そこで驚くべき診断を下されることになる。

リリーの体内に未発達の卵巣があり、それが女性の人格を生み出しているというのだ。

そうして初めて、アイナーには服装だけでなく身体もリリーに作り変えるという選択肢が与えられたのだ。性別適合手術を目の前に戸惑うアイナーの背中を押したのは、他ならぬゲルダだった。

そうしてアイナーは睾丸摘出、陰茎除去、卵巣移植、子宮移植と、1年間かけて計5回の手術を受けた。中でも卵巣移植には拒絶反応を起こし、数度の手術を経て再摘出された。

しかし理解を示していたゲルダも、夫の身を案じて引っ切りなしに繰り返される手術には反対していたようだ。

こうしてアイナーは法的にもリリーとして生きることを認められ、リリー・エルベの名前でパスポートも手に入れている。しかし、手術のことを知った当時のデンマーク国王に婚姻を無効にされ、その後二人は別々の人生を歩むことになった。

別れてすぐにリリーはフランス人画家のクロード・ルジュンと恋に落ちた。女性に目覚めて初めて恋をしたリリーは、次第に母性を求めるようになる。そして5回目となる子宮移植の手術を受け、リリーはその数ヵ月後に心臓発作でこの世を去った。

当時は移植免疫拒絶反応について解明されておらず、そもそも臓器移植という考え方そのものが議論されていない時代だった。そんな時代に、リリーは命をかけてでも母親になることを求めた。

それは内から湧き出る性への渇望だったのか、あるいは恋人に対しての引け目だったのかは知る由も無い……

-ヒューマンドラマ, 伝記
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