映画を観る前に知っておきたいこと

【マレーナ】大人の女性に憧れる少年の青春映画に見せかけた欲望と誘惑の哲学ドラマ

マレーナ

あの頃、あなたが世界の全てだったー

街で一番の美女マレーナの人生を、彼女に夢中になった12歳の少年の目線から描く青春ドラマではない。これは人の欲望に問いかける哲学的な映画である。

監督は『ニューシネマパラダイス』や『海の上のピアニスト』で知られるイタリアきっての名匠ジュゼッペ・トルナトーレ。“イタリアの宝石”モニカ・ベルッチが世界に羽ばたくきっかけとなった作品でもある。トルナトーレ監督作品で常に音楽を手掛けてきたエンリオ・モリコーネも健在だ。


予告

あらすじ

1940年、第二次世界単線中のイタリア、シチリア島。この街にはマレーナという美しい女性が住んでいた。すれ違う男はみんなマレーナを振り返り、その美しさにあてられて立ち尽くす。反面、街の女性はそんなマレーナを嫉妬と憎悪の対象として疎んじていた。マレーナ12歳の少年レナートもまた、彼女に夢中だった。常に彼女のことで頭がいっぱいで、少年らしいできる限りの努力をしてマレーナに近付き、彼女を見守る毎日を過ごしていた。

マレーナは結婚していたが、夫は戦場に向かい帰らぬ人となった。さらに父親までも空爆で亡くしてしまい、生きる術をなくした彼女は生活に困窮していく。そして、街に駐屯するドイツ兵を相手に娼婦の商売を始めるようになる。マレーナ街では根も葉もない噂が一人歩きし、マレーナの居場所はすでになくなっていた。やがて大戦は終結し、ドイツ兵が街から引き上げていくと、ヒステリーを起こした女性がここぞとばかりにマレーナを引きずり回し、リンチにかける。そして彼女はシチリアの街を去っていく。マレーナそれからしばらくして、彼女のいなくなった街に戦死したはずの夫が帰ってくる。男は必死にマレーナを探すが「あの売女の」と全く相手にされず、マレーナが待っているはずの家には浮浪者たちが住み着いていた。

この街でマレーナの真実を知るのは、レナート少年ただ一人だった……

映画を観る前に知っておきたいこと

『ニューシネマパラダイス』に涙した人には贈らない

『ニューシネマパラダイス』『海の上のピアニスト』のジュゼッペ・トルナトーレ監督作品として有名な本作だが、テーマが哲学的、あるいは宗教的で難解な部類の映画である。どちらかというと処女作である『教授と呼ばれた男』の方に近い。この作品もジュゼッペ・トルナトーレ監督作品を掘り下げる努力が求められる。

宗教的解釈

教会を兼用した小さな映画館を舞台にした『ニューシネマパラダイス』は、キリスト教が物語の重要なキーとなっていた。『マレーナ』もまた宗教的に解釈することで新たな顔を覗かせる。

マレーナの本名はマッダレーナ。劇中でもマリア様の格好をしていことからもわかる様に、マレーナは娼婦から聖女になったキリストの弟子「マグダラのマリア」の象徴として描かれている。カトリックの一部の宗派では「罪深い女」として貶められることの多い存在だ。娼婦であった、イエスと結婚していたなど、彼女とイエスの関係については研究者の間で様々な議論がなされている。マレーナ一方レナート少年は、ラテン語でレナトゥス(再生・生まれ変わりを意味する)という名前や、ミケランジェロのピエタを模した映像の構図、新約聖書の「荒野の誘惑」を模したエピソードから、イエス・キリストを象徴しているのではないかと思われる。俯瞰してマレーナと人々を眺める彼の目線は、言わば神の視点である。
※「荒野の誘惑」とは、サタンがイエスに課す3つの試練が語られる、新約聖書のエピソードのひとつ。

劇中、マレーナのセリフは殆どない。それでも、人々はマレーナにそれぞれの想いを馳せていく。羨望、欲望、妬み、憎しみ……それをマレーナは一身に受け、彼女の人生は目も当てられないものになっていく。そこには美しさに霞ませたトルナトーレ監督の無邪気な悪意をひしひしと感じる。

物語の中心はあくまでマレーナだが、レナート少年の視点から描き出すことで、映画は別の表情を見せる。それが最も重要なラストシーンを読み解くヒントにもなっている。

トルナトーレ監督作品はテーマを、あくまで表現で暗喩する。掘り下げる程、どこまでも深く人間の本質について考えさせられる。彼のどの作品も踏み込む価値がある。

“イタリアの宝石”モニカ・ベルッチ

モニカ・ベルッチもともと弁護士を目指していたモニカ・ベルッチがモデルの仕事を始めたのは学費を稼ぐためだった。今では“イタリアの宝石”と呼ばれ、国際的に活躍する大女優となった。『マレーナ』は、そんな彼女の出世作としても知られる。

映画では純朴なレナート少年の目線からセクシーでミステリアスな大人の女性の魅力を余すとこなく伝えている。レナート少年のように彼女のことが知りたいなら外せない映画だ。

ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品

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