2008年のリーマンショックの裏側で、経済破綻に喘ぐ投資家達を出し抜いて巨額の富を得た4人の男達の実話。原作はマイケル・ルイスによるノンフィクション「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」だ。
パラマウント映画が製作権を獲得し、ブラッド・ピットが代表を務めるプランBエンターテインメントが製作に携わった。監督は『アントマン』で脚本を手がけたアダム・マッケイ。
クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピットの4人が型破りな投資家をそれぞれ熱演。リーマンショックとは一体なんだったのか、語られるべくして語られず、そしてこれからも語られることのないであろう真実をエンターテイメントに紡いでみせた。
- 製作:2015年,アメリカ
- 日本公開:2016年3月4日
- 上映時間:130分
- 原題:『The Big Short』
- 原作:ノンフィクション「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」マイケル・ルイス
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 専門用語を簡単に解説
- 3.2 金融界の大物を辞任に追い込んだ男、マイケル・ルイス
- 3.3 実際のマイケル・バーリ
予告
あらすじ
ヘヴィメタルを愛する変わり者で有名なヘッジファンド・マネージャーであるマイケル・バーリは、米国の不動産市場の動きを調べて行く中で、格付けの高いはずの商品が少しずつ利回りを下げていることに気付く。
サブプライム・ローンのおかげでバブルのように膨らんだ不動産市場は、少しずつだが確実に破綻に向けかっていると確信。しかし、その予想は「変わり者の戯言」と投資家からもバカにされ、全く相手にされなかった。
マイケルは、2007年の前半には必ず市場崩壊が起こると信じ「CDS(クレジット・ディフォルト・スワップ、債権の保険みたいなもの)」という金融取引に目をつける。そしてサブプライム・ローンの価値が暴落したときに巨額の保険金を手に出来るよう、市場の安定を信じて疑わない投資銀行にCDS取引を受け入れさせることに成功する。
そんなマイケルの戦略を察知したのが、ウォール街の若き銀行家ジャレッド・ベネットだった。知り合いの銀行家からマイケルの動きを耳にした彼は、市場崩壊の予想を正しいと確信、自身もCDSに大金を投じる。
ジャレッドのそのことを知らされたマーク・バウムもまた、彼に続く。マークは信用力の低い多くの低所得者に、頭金なしで住宅ローンを組ませている大手銀行に対して不信感を募らせていた。
また、既に引退した伝説の銀行家・ベン・リカートは、ウォール街で地位を築こうと野心に燃える若き投資家ジェイミーとチャーリーの2人のCDS市場への参戦を相談されていた。話を聞いたベンは、彼らのウォール街への挑戦を後押しすることを決意。
そして2008年、いよいよ住宅ローンの破綻に端を発する市場崩壊の兆候が現れる。マイケル、マーク、ジャレド、ベンの世紀の大勝負が始まろうとしていた。
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映画を見る前に知っておきたいこと
専門用語を簡単に解説
色々な要素が複雑に絡み合っている為、きちんと説明をするのが難しいので、ざっくりさっぱり簡単に説明する。
まぁ大体こんな感じという輪郭さえ掴めていれば、映画を見るにあたって不自由はしないはず。
リーマンショックとは
2008年にアメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズの倒産に端を発した世界規模の金融危機。
きっかけは2007年のサブプライム・ローン問題だった。
信用の少ない低所得者向けの住宅ローンをまとめてリスク分散していたため、格付けAのはずの商品が一気に値下がりを始めた。
これにより、自分達が所有している資産の、どの商品にサブプライム・ローンが混ざっているのか分からなくなった世界中の投資家達が一気に売り方向へ。株価は世界中で急激な下落を見せる。
証券を保有していた銀行などの金融機関にもその波は押し寄せ、巨額の損失を出した。こうして世界の全市場が大荒れ、日本経済も大きな打撃を受けた。
サブプライム・ローン
低所得者向けの住宅ローン。米国では、信用力のある優良客を「プライム」とよび、その下層を指して「サブプライム」と呼ぶ。
なぜこれが問題になったかと言うと、リスク分散のためにあらゆる商品に組み合わされて売られたからだ。ある商品が回収不能に陥っても、関連性の低い他の商品と一緒ならばリスクが低いと考えられた。
組み合わされたサブプライム・ローンには、“分散投資をあらかじめしてある商品”として、単体では決して得られないような信用力に見合わない高い格付けがなされた。
こうしてサブプライム・ローン時限爆弾は世界中にバラ撒かれた。
CDS(クレジット・ディフォルト・スワップ)とは
ある会社の売掛債権が回収不能に陥るリスク、つまり倒産しても売掛債権を回収出来るように、銀行から購入する保険のような金融商品。購入者は銀行へ固定金利を支払うことで、会社倒産のリスクを限りなく0に出来るというのが売りだった。
しかし、保険とは違ってCDSは飽くまで「証券」であり、会社に対する債権を持っていないくても銀行から購入できる。そうすると会社が倒産した場合、会社にカネを貸していなくても銀行からカネがもらえる。
保障と言うと耳障りが良いが、実態は倒産するかしないかに賭けるギャンブルに近いものである。
金融界の大物を辞任に追い込んだ男、マイケル・ルイス
原作者のマイケル・ルイスという男がなかなか面白い人物である。1985年、当時のニューヨークタイムズにウォールの帝王と言われたソロモン・ブラザーズに、それこそ尋常ではない数の就職希望者を押しのけて入社。トレーダーの世界に足を踏み入れた。
しかし、3年後にはマイケル曰く“特に理由もなく”辞めて、「ライアーズ・ポーカー」を執筆。金融界のトレーダーの実態を実名で生々しく暴き、当時のソロモン・ブラザーズ会長ジョン・グッドフレンドを辞任にまで追い込んだ。この鮮烈な作家デビューで一躍有名人となった男だ。
金融業界には正しいかどうか、優しいかどうかと言った道徳観念はまるでない。カネが全て、顧客のことなど知らん、人を踏みにじってもカネを手に入れる、そしてそれにまつわる名声を手に入れる。トレーダーっていうのはそういうヤツらだっていう話がスリリングにドラマチックに展開する。
しかも凄いことに、難しい金融の話が驚くほど分かりやすく腑に落ちる。
金融業界の話と言われると、難しい専門知識がいくつも出てきてついて行けないのではないかと考えてしまうが、彼の作品はどれもストーリーに重きが置かれていて非常に読みやすく、ドラマチックで面白い。
実際、リーマンショック、サブプライムローンなんて世界中の誰もが知っているけれども、何が起きたのかを深く正しく把握している人はどれだけいるだろう?把握していたとして、それを人に分かり易く説明出来る人がどれだけいるだろう?
そんな一般の人には難しいリーマンショックにまつわる疑問の数々に、ポツンとひとつの波紋に繋がる答えを落としてくれるのがこの本「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」である。
ストーリー仕立てでリーマンショックを正しく面白く理解出来る本なんて、ある意味では閉じられている金融の世界において恐ろしく重要な価値を持つ原作本だと思う。
実際のマイケル・バーリ
先の予想があまりにも的確すぎる天才投資家。リーマンショックの当時からその手腕は凄まじく、誰でも入手可能な財務諸表を精読するだけで、将来の動きを驚くほど正確に予測していたという。
リーマンショックの事件のことがあまりにもセンセーショナルだったので過去の人物と思われがちだが、一線でバリバリ活躍する現役だ。彼の一挙一動を注視している会社は多い。
世界最大の投資持株会社バークシャー・ハサウェイの筆頭株主兼CEOのウォーレン・エドワード・バフェットの影響を強く受けていて、「目覚しい成功を収めたければ、目覚しい非凡さを身につけろ」という彼の言葉を地で行く一級モノの変人らしい。