映画を観る前に知っておきたいこと

MUD マッド
男たちの友情と愚かな愛の物語

投稿日:2017年2月13日 更新日:

MUD マッド

あの夏、ぼくらは逃亡犯と友達になった ──

アメリカ南部の田舎町に暮らす二人の少年は、ミシシッピ川に浮かぶ島で訳有り風の男と出会った。奇妙な友情で結ばれていく彼らに、思わぬ現実が牙を剥く。

『テイク・シェルター』(11)で一躍脚光を浴び、近い将来必ずアメリカを代表する監督になると言われているジェフ・ニコルズによる、少年と逃亡犯の友情を綴ったヒューマンドラマ。

主演は、本作の直後に『ダラス・バイヤーズクラブ』(13)でオスカー俳優となったマシュー・マコノヒー。二人の少年役には、『ツリー・オブ・ライフ』(11)の美少年タイ・シェリダン、若き日のリバー・フェニックスを彷彿とさせる新人ジェイコブ・ロフランド。更に、ヒロインにはオスカー女優リース・ウィザースプーンと、今となっては非常に豪華なメンツだ。


予告

あらすじ

アメリカ南部、アーカンソー州の川岸。14歳の少年エリス(タイ・シェリダン)は急場ごしらえのボートハウスに両親と暮らしていた。ある日、親友のネックボーン(ジェイコブ・ロフランド)と二人で、ミシシッピ川に浮かぶ島の木に引っかかったボートを見に出かける。彼らはそこで訳有り風の男マッド(マシュー・マコノヒー)に出会った。

MUD マッド

© 2012, Neckbone Productions, LLC.

マッドは幼馴染の恋人ジェニパー(リース・ウィザースプーン)に会うために助けを借りたいと話す。素性の知れないマッドに警戒するネックボーンをよそに、エリスは協力的だった。両親が離婚を決めていたエリスにとって、マッドの愛はどこまでも純粋なものに映っていたのだ。

MUD マッド

© 2012, Neckbone Productions, LLC.

その頃、町では殺人犯を追うために検問が敷かれ、エリスはそこで初めてマッドが指名手配されていることを知る。それでも、彼はマッドを助けることを止めようとしなかった……


映画を観る前に知っておきたいこと

どこか閉塞感漂う小さな田舎町を舞台に、少年たちの成長を綴ったこの映画は、2013年に現代版『スタンド・バイ・ミー』として紹介された。しかし、主演が大人のマコノヒーであるように、それはこの映画の一つの側面でしかない。

『テイク・シェルター』以降、僕の中でも最も注目すべき監督の一人となっているジェフ・ニコルズ。彼が手がける青春映画は、もう少し特殊だ。事実、僕は少年たちの成長物語としてではなく、男たちの友情と愚かな愛の物語としてこの作品に惹かれている。

男たちの美学

MUD マッド

© 2012, Neckbone Productions, LLC.

この物語は、二人の少年のうちタイ・シェリダン演じるエリスの視点を主に描かれる。まだ愛が何たるかも知らない14歳の彼は、両親の離婚という厳しい現実を目の前にマッドと出会う。そして、幼馴染の恋人を守るために生きるマッドに、彼は自身の青臭い恋愛観を重ね合わせていく。

そんなエリスにとって、マッドはまるでヒーローだった。そう、それはマッドが恋人と再会を果たすことで両親の間に愛が戻ると錯覚するほどに。しかし、エリスの強い眼差しに答えられないぐらい、マッドもまた愛に喘いでいるのだ。

この映画に登場する男たちは、愛ゆえに身を持ち崩す者たちであり、彼らはそれを友情によって支え合い、繋ぎ止めていく。愛の入り口に立つ少年、まだ愛に殉じようとする大人、もう愛を達観してしまった更なる大人。『MUD マッド』は、全ての世代の男たちの美学が詰まった、友情と愚かな愛の物語なのである。

映画を覆う閉塞感

MUD マッド

© 2012, Neckbone Productions, LLC.

監督のニコルズが映画の舞台に選んだのは、自身の生まれ故郷でもあるアメリカ南部のアーカンソー州。取り分け、黒人や貧困層が多く暮らす南部では、一見してリベラルな思想が求められそうなものだが、そこには貧困ゆえの政治に対する諦め、キリスト教的な清貧で実直な生活を旨とする伝統主義が静かに横たわっている。そのため、保守的な文化が根を下ろす南部独特の閉塞感が、少年たちの行き場のなさと重ねられるように映し出されていく。

そんな中でも、少年たちが暮らす人口3292人のデイウィットという田舎町は、『スタンド・バイ・ミー』のキャッスルロックの如く、彼らの未来を封じ込めるにはあまりにも小さな世界である。しかし、これがアメリカにおける一つの現実であり、作品の息苦しいまでのリアリティとなっている。

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