映画を観る前に知っておきたいこと

ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男
比類なき英雄の実話

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ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男

アメリカ史が封印してきた
黒人を率いた白人の英雄
彼の衝撃と感動の実話

1862年9月、時のアメリカ大統領エイブラハム・リンカーンによる奴隷解放宣言はあまりに有名だが、彼より一足先に肌の色、貧富の差、宗教や思想に関係なく、誰もが平等な“自由州”の設立を宣言した男の存在はあまり知られていない。男の名は、ニュートン・ナイト。

『ビッグ』(88)『シービスケット』(03)など、その脚本には特に定評があるゲイリー・ロス監督が史実を基に描き出す、アメリカ史が封印してきた実在の英雄ニュートン・ナイト、奇跡の実話。

『ダラス・バイヤーズクラブ』(13)でアカデミー賞を始め、その年の主演男優賞を総なめにしたマシュー・マコノヒーが、自身のカリスマ性と重ね合わせながら、黒人奴隷約500人を率いた反乱軍のリーダー、ニュートンを演じきる。

予告

あらすじ

それは、14歳の少年の夢を砕いた1発の銃弾からはじまった……

時は1862年、南北戦争で二つに引き裂かれたアメリカ。南軍に身を置くニュートン・ナイト(マシュー・マコノヒー)は、日に日に激化する戦争に倒れる南軍の衛生兵を見つめてきた。

しかし、甥のダニエル(ジェイコブ・ロフランド))が目の前で銃弾に倒れた時、ニュートンの忍耐の糸が切れた。彼はダニエルの遺体を家族に届けようと南軍を脱走するのだった。

ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男

© 2016 STX Financing, LLC.

故郷のミシシッピ州ジョーンズ郡で、仲間の農民たちから農作物を奪う南軍と衝突した彼は、追われる身となって湿原に身を隠す。そこは黒人の逃亡奴隷たちの隠れ場所だった。自分と同じく自由を求める彼らと心通わせ、友情を築いたニュートンは南軍に対して反撃に出ることを決意する。

ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男

© 2016 STX Financing, LLC.

1863年、ニュートンが率いる“自由反乱軍”に貧しい白人の農民たちも加わり、メンバーは増え続けていた。その翌年、反乱軍は南軍に全面攻撃を仕掛け、エリスビルの司令部を占拠し、その勢いで隣接する3つの郡を奪う。南軍のさらなる攻撃に対抗するため、北軍に援助を要請するが断られてしまったニュートンは、北部にも南部にも属さない“ジョーンズ自由州”の設立を高らかに宣言するのだった。

1865年、南北戦争は終結する。しかし、それは新たな戦いの幕開けにすぎなかった……

映画を観る前に知っておきたいこと

奴隷制度が廃止された現代でも、人種にまつわる争いは様々な形で起こっている。今こそ、この比類なき英雄の実話に耳を傾け、その歴史を紐解く必要があるのかもしれない。

南北戦争

1861年から1865年まで続いたアメリカの南北戦争は、世界で初めて近代的な機械技術が主戦力として投入された戦争としても知られる。

南北戦争が勃発するきっかけとなったのが、奴隷制存続の是非である。

1860年11月に行われた大統領選挙では、奴隷制がひとつの争点となっていた。奴隷制の拡大に反対していた共和党のエイブラハム・リンカーンが当選したことにより、黒人労働奴隷により支えられていた農業が経済の中心であった南部に不安が広がることとなった。

対する北部ではすでに工業化が進められており、工場労働者にはある程度の教養が求められたことから奴隷制を必要としなくなっていた。

北部の自由州(奴隷制を認めない州)と南部の奴隷州の対立が一層激化してしまった裏には、こうした南北の経済の違いが深く関係している。

その結果、制度存続を主張するアメリカ南部諸州のうち11州が合衆国を脱退し、アメリカ連合国を結成。合衆国に留まった北部23州との間で南北戦争まで発展することとなったのだ。

映画でニュートン・ナイトが、その設立を宣言した“ジョーンズ自由州”は、アメリカ連合国にも合衆国にも属さない独立した州ということになる。

リンカーンとニュートンの違い

奴隷解放の立役者として広く知られるのは、第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンである。しかし、本来奴隷解放論者ではない彼の奴隷解放宣言は、道徳的な観点からではなく、ただの政治判断だったとも取れる。

実際に、奴隷解放宣言後も奴隷制が認められていた北部領域では奴隷の解放は行われていない。リンカーンの国際社会を欺いたに等しいこの宣言は、南部州における奴隷の反乱・逃亡・ボイコットを促すことがその目的であった。事実、奴隷解放宣言よって南部有利の戦況はやがて揺らいでいったのだ。

ゲイリー・ロス監督が10余年の歳月をかけ、徹底したリサーチの基に撮ったというこの映画が限りなく真実を映し出しているとするならば、ニュートン・ナイトは奴隷解放においてリンカーン以上の意義を持った人物ということになる。

彼は、自由のためなら死をも恐れなかったのだから。

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