映画を観る前に知っておきたいこと

溺れるナイフ
ジョージ朝倉と映画

投稿日:2016年10月31日 更新日:

溺れるナイフ

恋をした。
目が回るほど、
息が止まるほど、
震えるほどー。

「ナイフ」とは「10代の自意識」。時に鋭い光を放ち、そして沈んでゆく……それは気高く危うい10代の破裂しそうな恋と衝動を鮮烈に描き出した、まだ誰も出会ったことのないラブストーリー。講談社「別冊フレンド」に連載され(04~13)、洗練された世界観とリアルな心理描写で熱狂的に愛され続ける少女漫画「溺れるナイフ」、待望の映画化!

小松菜奈、菅田将暉W主演、重岡大毅(ジャニーズWEST)、上白石萌音という最旬キャストは、映画からさらなるファンの獲得を予感させる。

監督を務めたのは、思春期の少女たちを主人公とした青春映画を得意とする注目の新鋭・山戸結希。

予告

あらすじ

それは15歳の夏。人気モデルの望月夏芽(小松菜奈)は東京から遠く離れた浮雲町に越してきた。退屈でウンザリするような田舎町。夏芽はこの町で体を貫くような“閃光”と出会ってしまう。それは、コウと呼ばれる少年・長谷川航一朗(菅田将暉)だった。

溺れるナイフ

© 2016「溺れるナイフ」製作委員会

傲慢なほどに激しく自由なコウに反発しながらも、どうしようもなく惹かれてゆく夏芽。コウもまた、夏芽の美しさに対等な力を感じ、やがてふたりは付き合いはじめる。「一緒にいれば無敵!」という予感に満たされるふたり。しかし浮雲の夏祭りの夜、全てを変える事件が起きるのだった―

溺れるナイフ

© 2016「溺れるナイフ」製作委員会

失われた全能感、途切れてしまった絆。傷ついた二人は、再び輝きを取り戻すことができるのか。未来への一歩を踏み出すために、いま、二人が下す決断とは―!?

映画を観る前に知っておきたいこと

「ピース オブ ケイク」や「溺れるナイフ」を読んだのはもう随分と前のことだが、普段少女漫画をあまり読まない僕がなぜジョージ朝倉の作品には惹かれたのか。

今にしてみれば、彼女が描き出すリアルな心理描写はどこか映画監督の演出を匂わせた。遠回しに描く感情の機微、ストレートに閃光のように描く激情、そして時に抽象的でもある。そんな緩急のある多彩な心理描写はやはり他の少女漫画とは一味違う。そうした手法を自然と使い分けられるのは彼女が大の映画好きだからかもしれない。

ジョージ朝倉と映画

2008年の『平凡ポンチ』にはじまり、昨年の『ピース オブ ケイク』、そして本作と映画化が続くジョージ朝倉の作品。

冴えない自主映画監督と女優志望の美少女の破天荒な逃避行を描いた『平凡ポンチ』。レンタルビデオ店で働く25歳・女子のリアルな恋愛を描いた『ピース オブ ケイク』。原作の設定の中にもジョージ朝倉の映画に対する愛情を感じることができる。

また、自身もレンタルビデオ店で働いていたというジョージ朝倉の映画の守備範囲は広い。

ピース オブ ケイク』では、レンタルビデオ屋で働く主人公・志乃が『赫い髪の女』という映画を観て感激する件がある。もう10年以上も前の話だが、もう10年以上も前の話だが、僕はこの件に惹かれ、兄を誘って『赫い髪の女』のリバイバル上映を観に行った。

『赫い髪の女』は70年代に流行った日活ロマンポルノの名作とされる映画ではあるが、しかしポルノ映画である。当時何も知らない僕は、ジョージ朝倉のおかげで兄弟並んでポルノ映画を観るはめになった、くはは。

それでも、懲りずにジョージ朝倉の映画の趣味に付き合いに行ったのが2006年のこと。「平凡ポンチ」完結記念という口実で開催されたイベント「ジョージ朝倉Night」。その内容は、ジョージ朝倉が選んだ映画3本をファンと夜通し鑑賞するというものだ。

『着信アリ』(04)や『十三人の刺客』(10)で知られる三池崇史監督の中でも怪作とされる『極道恐怖大劇場 牛頭』(03)に始まり、アメリカから20年ぶりに祖国日本へ帰国した空手の達人が、各国の武道の達人を相手に活躍するアクション映画『ザ・カラテ』(74)、締めは女性映画の名手として知られる成瀬巳喜男監督が1956年に残した名作『驟雨(しゅうう)』。

『驟雨』こそ、倦怠期の夫婦をテーマに市井に生きる飾らない妻の姿を生き生きと映し出した名作ではあるが、それも決して成瀬監督の代表作というわけではない。後の2本に関してはいわゆるB級映画だ。

そんな彼女が今では映画の原作者という立場にいるのだからおもしろい。

溺れるナイフが!才能輝く監督の撮った!!
観るべき映画の原作になってしまって!!!嬉しくて、秋。
若い子が観て人生が狂っちまえばいいなっ!って酷く思いました。
昔の日本映画にあった、あの妙な熱が、うねりが、フィルムに焼き付いてるなんて!
日本映画好きなおっさん、悶えたらよいですよ。私のように。
一緒に観たナイフ担当編集が一言、「映画は100点じゃなくていい」。
100点の向こう側!最高だ!!
よろしくお願いします。

ジョージ朝倉

出典 公式サイトのコメントより

あとがき

因みに、僕の本棚にはジョージの全ての単行本と共に『赫い髪の女』のDVDが並んでいる。兄と並んでポルノ映画を観たという思い出はともかく、ジョージが巡り合わせてくれたこの作品に志乃の如くすっかり感動してしまったのだ。「ジョージ朝倉Night」の『ザ・カラテ』だって、ちょっとやそっとじゃお目にかかれないその超B級映画っぷりを心底楽しんだ。

ジョージ朝倉の漫画を読んで、また魅力的な映画と巡り合えるのが待ち切れない。

-恋愛, 邦画
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