映画を観る前に知っておきたいこと

午後8時の訪問者
ダルデンヌ兄弟史上最もミステリアスな物語

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午後8時の訪問者

あの時、ドアを開けていれば ──

午後8時に診療所のドアベルを鳴らした訪問者。翌日発見された名もなき少女の遺体。あの時、ドアを開けていれば少女は助かったかもしれない。

カンヌ国際映画祭で2度のパルム・ドールに輝いたベルギーの名匠ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌが放つ、最もミステリアスなヒューマン・サスペンス。診療時間外の対応を断った若き女医の後悔と良心についての葛藤と、その先に辿り着く少女の意外な死の真相を映し出す。

セザール賞女優アデル・エネルを主演に迎え、『ある子供』(05)のジェレミー・レニエ、『息子のまなざし』(02)のオリヴィエ・グルメが共演する。

予告

あらすじ

診療時間を過ぎた午後8時、診療所に訪れた何者かによってドアベルが鳴らされた。女医のジェニー(アデル・エネル)はそれに応じなかった。

午後8時の訪問者

© LES FILMS DU FLEUVE – ARCHIPEL 35 – SAVAGE FILM – FRANCE 2 CINEMA – VOO et Be tv – RTBF (Television belge)

翌日、近所で身元不明の少女の遺体が見つかり、診療所の監視カメラにはその少女が助けを求める姿が収められていた。彼女は誰なのか。何故死んだのか。助けを求めてドアベルを鳴らしたのか。溢れかえる疑問と自責の念がジェニーを支配していく。

午後8時の訪問者

© LES FILMS DU FLEUVE – ARCHIPEL 35 – SAVAGE FILM – FRANCE 2 CINEMA – VOO et Be tv – RTBF (Television belge)

ジェニーは亡くなる直前の少女の足取りを探り始めた。少女の名を知ろうと必死で真実のかけらを集めるうちに、彼女の身にも危険が及ぶ ──

映画を観る前に知っておきたいこと

『ロゼッタ』(99)と『ある子供』(05)で2度のパルム・ドールに輝いたダルデンヌ兄弟は独自の世界観を創出しながら、現在もヨーロッパ映画界を席巻している。

異例の7作品連続でのカンヌ国際映画祭コンペティション部門出品となった本作は、そのキャリアの中で最もミステリアスな物語である。

ダルデンヌ兄弟特有の緊迫感

サスペンス、ヒューマンドラマ、ミステリー、社会派、様々な側面から映画を組み上げていくダルデンヌ兄弟だが、彼らが掲げる深遠なテーマの答えは常に登場人物の心の中に用意されている。それは前作『サンドラの週末』(14)のような社会派のメッセージを持つ作品でも同じだ。

しかし演出面においては、サスペンスとしての緊迫感が映画全体を包み込むほど広く横たわっている。無用な音楽を排し、起伏少なく淡々と紡がれるドラマはどこまでも現実的であるが故、観る者はどうしようもなく不安感を煽られるのだ。僕がダルデンヌ兄弟を敬愛する理由もそこにある。

取り分けストーリー自体がミステリーに満ちている本作は、自然とこれまで以上の緊迫感をみなぎらせる。ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ特有のリアリティに裏打ちされた緊迫感を、“少女の謎の死”という使い古されたワードを通して味わうのはこの上ない贅沢だ。

そこに若き女医の後悔と良心についての葛藤が絡み合うことで、彼ららしい深遠なテーマに対する答えが用意されているのだろう。

-ミステリー・サスペンス
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