映画を観る前に知っておきたいこと

【ら】監督・水井真希本人が体験した拉致・暴行事件を映画化した問題作

ら

水井真希は10代の頃、園子温監督の作品に影響を受け撮影現場を見学するようになったことから映画業界に入り、その後はメイクアップアーティストでもある西村喜廣監督の元でスタッフとして映画を学んだ。そして自らの実体験を映画化した「ら」が水井真希の監督デビュー作となる。主人公まゆか役は元AKB48のメンバーの加弥乃が務める。2014年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアターコンペティション入選作品。


  • 製作:2014年,日本
  • 日本公開:2015年3月7日
  • 上映時間:70分

予告

あらすじ

ある夏の夜、まゆかはアルバイトの帰り道で突然見ず知らずの男に拉致される。暴行を受けたまゆかは心に深い傷を負ってしまう。

ら ふくろう2

解放されたまゆかは日常生活に戻るのだがその心の傷はやがて具現化してゆく。拉致事件の被害者のはずのまゆかは自らを責め、それは自傷行為として現れる……


映画を見る前に知っておきたいこと

異色の経歴を持つ水井真希の異色な実体験

ら ふくろう

この「ら」という作品は実際に起こった連続拉致事件がもとになっている。しかも水井真希自身が被害者として体験した出来事だ。被害者が監督であるというこの異常な状態がそのままこの映画の核心といえる。

なくなることのない性犯罪をテーマにした社会派映画でもあるが、被害者が心の傷とどう向かい合っていくのかを描いた人間ドラマの側面が圧倒的に強いのだ。それは被害者まゆかの心理描写が圧倒的にリアルであることがそうさせている。

またこの映画のおもしろいところは、そこまでリアルでありながらファンタジーも融合させているところだ。水井真希のそうした挑戦的ともいえる表現が、この映画を映像芸術へと昇華させている。

彼女のこうした挑戦的な表現と、被害者でありながらこのテーマに挑んだ勇気は賞賛したい。ただこれは問題作である。

水井真希が巻き込まれた事件を題材とした理由

この事件を題材とした理由に世間が求めるものは「映画にすることで自身の気持ちと折り合いをつけたかった」そんなところだろう。だが、世間の反響をよそに本人は至って淡白な様子だ。

水井真希自身は、この映画について「作品にしたことで気持ちに何か劇的な変化があったかというと、特にない。拉致を題材にしたのも、5カ月後の映画祭に間に合わせるためには、そのほうが何かと都合がいいっていう現実的な判断が先にあったから」とコメントしている。

とは言え、実際に何も気にしていないということはないだろう。劇的とは言わずとも、映画にすることで少なからず、何かしらの思いは沸いていると思う。不謹慎ながら、被害者が監督という話題性が映画の一番の見所であるのもまた事実である。

本人が映画にするまでの10年で、ある程度折り合いをつけれる精神状態になったのか、映画にすることでそこに救いを求めたのかは知る由もない。

事件の内容をファンタジーに描いた

事件そのものは未遂に終わり、被害者は加害者の男を通報することはなかった。その後、男は被害者を増やし続け、連続暴行事件に発展していくことになるのだが、一番最初の被害者マユカは「私が暴行を受けていれば、次の被害者は生まれなかったのではないか」と苦悩する。『ら』は主人公の苦悩の精神世界を、かなりファンタジーに描いている。

「まじめなメッセージを伝えるだけの映画ならドキュメンタリーがやればいい。映画はエンターテイメントとしてみんなが楽しめるものであるべき。」それはそんな水井真希監督のポリシーに所以依拠するところだろう。

ファンタジーとして精神世界を描くことで、10年間の水井真希本人の苦悩が観客の中に蘇る。「実体験という話題性がなくても楽しめる映画にしたかった」という本人の思いとは裏腹に、この映画のリアリティはもはや実体験というファクターなしには語れない。

監督・キャスト

監督:水井真希

水井真希10代の頃、園子温監督の作品に影響を受け撮影現場を見学するようになったことから映画業界に入り、その後はメイクアップアーティストでもある西村喜廣監督の元でスタッフとして映画を学んだ。そのかたわらで女優やグラビアアイドルとしても活躍している。映画『終わらない青』では主演を務めている。この異色の経歴が彼女の作品に影響しているように思う。

感想・評価まとめ

自分ではどうしようもできない、止めようのない負の感情のループは、普通に生活をしている人ならあらゆる人が経験している事だと思う。そのループに同情するのか、共感するのか、感動とは違う涙を流させる映画。

見た人の感想を眺めていると、誰もが直視を避ける残酷さを直視させられる強制力がこの映画にはあるようだ。”引きずり込まれる”という表現が正しいのかどうかわからないが、そういう類の残酷性を感じさせる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。