映画を観る前に知っておきたいこと

【人生スイッチ】アルゼンチンで入場者400万人超のブラック・コメディ!

投稿日:2015年6月27日 更新日:

人生スイッチ

押したら、さいご。

人生において決して押してはならないスイッチを押してしまったために、絶望的な不運の連鎖に巻き込まれていく6つのショートストーリーからなるオムニバス。全編先読みできない展開と驚愕のオチで観るものに笑いと衝撃を与えるブラック・コメディ。

監督・脚本はこれが長編映画3作目となるアルゼンチンの新鋭ダミアン・ジフロン。彼の脚本を気に入った『オール・アバウト・マイ・マザー』(99)『トーク・トゥ・ハー』(02)の監督ペドロ・アルモドバルがプロデューサーを務めた。

2014年にアルゼンチンで入場者400万人超という爆発的大ヒットで歴代興収第1位を記録。同時にカンヌ国際映画祭コンペティション部門でも高い評価を受けた。

予告

あらすじ

本作は何と言っても先読みできない展開がおもしろい。できれば事前情報なしで観ることをおすすめする。それでもあらすじが気になるという人は、ネタバレはしないので下をクリック!

Click!※あらすじ

人生スイッチ仕事の依頼を受けて、指定された飛行機に乗ったファッションモデル。話しかけてきた隣の席の男が、彼女の元カレを知っていた。ところが、元カレの名前を口にした途端、「小学校の教え子だった」「同級生だ」「元部下だ」と乗客全員が彼と関わりがあることが判明。しかも、みんな彼にひどい仕打ちをしていた。息をのみ顔を見合わせる乗客たち。そのとき、CAが発した一言に機内は凍りつく──。人生スイッチ郊外のレストランでウェイトレスとして働く女。客が誰もいない雨の日、父親を自殺に追いやり、母親を誘惑してきた高利貸しの男が店に現れる。調理担当の女に打ち明けると、彼女は「猫いらずを入れな」と物騒な提案を。一度は止めたものの、男の傲慢な態度に恨みが激しく再燃し、猫いらず入りと知りつつポテトフライを出してしまう。ところが男は、バクバク食べてピンピンしている。そこへ男の息子が来店、目を疑う行動に出る──。人生スイッチ雄大な山に囲まれた一本道を新車で走り抜ける男。前方を走るポンコツ車がノロノロ運転のくせに追い越しを邪魔する。ようやく抜き去る時に、「トロいんだよ、田舎者!」と捨て台詞を吐く男。ところが、程なくしてまさかのパンク。タイヤを取り換えていると、例のポンコツ車が追いついてくる。男は車に逃げ込むが、降りてきた運転手はスパナで新車をボコボコに。満足して立ち去ろうとする運転手に、男はあり得ない逆襲に出る──。人生スイッチほんの数分で見事にビルを爆破する解体職人の男。仕事を終えて娘の誕生会のケーキを買っていると、駐車禁止区域じゃないのに車をレッカー移動されてしまう。翌日、陸運局の窓口で訴えるが無視され、大暴れしてしまう男。その姿がハデに報道され会社はクビに。日頃から家庭を顧みない夫に腹を立てていた妻からは離婚を言い渡される。職探しで停めていた車を再びレッカー移動された男は、イチかバチかの計画を思いつく──。人生スイッチ瀟洒な屋敷に暮らす裕福な男。ある朝、息子が酒を飲んだ帰りに人を轢いてしまう。テレビをつけると、既に悪質なひき逃げ事件だと報道。顧問弁護士に相談し、使用人に50万ドルで身代わりになってもらうことに。ところが、検察官にすぐにバレ、100万ドルで買収することに。交渉役の弁護士は50万ドル、使用人は追加でマンションを、検察官は必要経費を上乗せろと要求。息子に「自首しろ」とキレた男と、金の亡者たちのとんでもない交渉が始まる──。人生スイッチ盛大な結婚式の最中に、花婿が招待した同僚が浮気相手だと気付く花嫁。ショックのあまり泣きながら屋上に出るが、休憩していたシェフに慰められ、コトに及んでいるところへ花婿が捜しに来る。開き直った花嫁は「全財産はぎ取ってやる!」と恫喝して会場へ。帰ろうとする浮気相手を引きとめ、一緒に踊り始めた花嫁は、彼女に恐るべき復讐を果たす。だが、花嫁が断固としてやり通した式の終わりには、まさかの結末が待っていた──。

映画を観る前に知っておきたいこと

アルゼンチン国内で入場者400万人超という史上最大のヒットを記録した作品ですが、実際アルゼンチン映画と言われピンとくる人がどれだけいるでしょうか。少し回りくどいですが、ヒット映画にはその国の特色がよく表れるので、他の国と比較しながらアルゼンチン映画の特徴を簡単に紹介しておきます。

国別ヒット映画

アメリカは『アバター』(09)が歴代興行収入1位。全体的に見てもハリウッドらしいエンターテイメント色の強い作品が上位に並ぶ。

日本国内では『千と千尋の神隠し』(01)が歴代興行収入1位。こちらもアニメ大国日本ならではといえる。ジブリ作品が別格ともいえそうだが……

今や映画市場が、日本を抜いてアメリカに次ぐ第2位となった中国では、『カンフー・パンダ2』(11)が歴代興行収入1位アニメではあるが、やはりカンフー映画の人気が根強い。

ただ、2014年に公開された(中国では2015年公開)『STAND BY ME ドラえもん』は中国で爆発的なヒットとなった。中国で公開されたアニメ映画の1日における興行収入では『カンフー・パンダ2』を抜いてしまった。日本円にすると105億円余りの興行収入となった。中国人は本当はカンフー映画よりアニメ好きなのかもしれないと思わせる最近の映画事情だ。

とまあ簡単に前置きしたわけだが、アルゼンチンという国は映画を娯楽として捉える以前に、どこか社会風刺的な作品が好まれる傾向がある。1980年代まで軍事政権が続き、政治的にも安定しないアルゼンチンは、2001年と2014年に2度の債務不履行も経験している。

経済が破綻している社会で治安の混乱や困窮した市民の生活があるのかと思いきや、意外にもこの国の人々の表情はなんとのどかで楽し気である。世界的に見ても『人生スイッチ』のようなブラック・コメディが歴代興行収入1位になるケースはない。アルゼンチンには貧しい生活をユーモアで乗り切ろうという明るい国民性がある。ただ、あくまでブラック・コメディだ。

さて、アルゼンチン映画に興味を持った人のためにもう1本紹介したい。

2016年、再びアルゼンチン映画の記録を塗り替えようとするヒット作が生まれた。オープニング動員記録では『人生スイッチ』を抜き、すでに本国で300万人を動員した『エル・クラン』という映画だ。アルゼンチン国民全員が知る衝撃の実話を基に描かれるこの映画、社会風刺的でありながらブラック・コメディともとれる。

実はこの作品も『人生スイッチ』のプロデュースであるペドロ・アルモドバルが製作を担当している。

-コメディ, ヒューマンドラマ
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