押したら、さいご。
人生において決して押してはならないスイッチを押してしまったために、絶望的な不運の連鎖に巻き込まれていく6つのショートストーリーからなるオムニバス。全編先読みできない展開と驚愕のオチで観るものに笑いと衝撃を与えるブラック・コメディ。
監督・脚本はこれが長編映画3作目となるアルゼンチンの新鋭ダミアン・ジフロン。彼の脚本を気に入った『オール・アバウト・マイ・マザー』(99)『トーク・トゥ・ハー』(02)の監督ペドロ・アルモドバルがプロデューサーを務めた。
2014年にアルゼンチンで入場者400万人超という爆発的大ヒットで歴代興収第1位を記録。同時にカンヌ国際映画祭コンペティション部門でも高い評価を受けた。
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を観る前に知っておきたいこと
- 3.1 国別ヒット映画
予告
あらすじ
本作は何と言っても先読みできない展開がおもしろい。できれば事前情報なしで観ることをおすすめする。それでもあらすじが気になるという人は、ネタバレはしないので下をクリック!
映画を観る前に知っておきたいこと
アルゼンチン国内で入場者400万人超という史上最大のヒットを記録した作品ですが、実際アルゼンチン映画と言われピンとくる人がどれだけいるでしょうか。少し回りくどいですが、ヒット映画にはその国の特色がよく表れるので、他の国と比較しながらアルゼンチン映画の特徴を簡単に紹介しておきます。
国別ヒット映画
アメリカは『アバター』(09)が歴代興行収入1位。全体的に見てもハリウッドらしいエンターテイメント色の強い作品が上位に並ぶ。
日本国内では『千と千尋の神隠し』(01)が歴代興行収入1位。こちらもアニメ大国日本ならではといえる。ジブリ作品が別格ともいえそうだが……
今や映画市場が、日本を抜いてアメリカに次ぐ第2位となった中国では、『カンフー・パンダ2』(11)が歴代興行収入1位アニメではあるが、やはりカンフー映画の人気が根強い。
ただ、2014年に公開された(中国では2015年公開)『STAND BY ME ドラえもん』は中国で爆発的なヒットとなった。中国で公開されたアニメ映画の1日における興行収入では『カンフー・パンダ2』を抜いてしまった。日本円にすると105億円余りの興行収入となった。中国人は本当はカンフー映画よりアニメ好きなのかもしれないと思わせる最近の映画事情だ。
とまあ簡単に前置きしたわけだが、アルゼンチンという国は映画を娯楽として捉える以前に、どこか社会風刺的な作品が好まれる傾向がある。1980年代まで軍事政権が続き、政治的にも安定しないアルゼンチンは、2001年と2014年に2度の債務不履行も経験している。
経済が破綻している社会で治安の混乱や困窮した市民の生活があるのかと思いきや、意外にもこの国の人々の表情はなんとのどかで楽し気である。世界的に見ても『人生スイッチ』のようなブラック・コメディが歴代興行収入1位になるケースはない。アルゼンチンには貧しい生活をユーモアで乗り切ろうという明るい国民性がある。ただ、あくまでブラック・コメディだ。
さて、アルゼンチン映画に興味を持った人のためにもう1本紹介したい。
2016年、再びアルゼンチン映画の記録を塗り替えようとするヒット作が生まれた。オープニング動員記録では『人生スイッチ』を抜き、すでに本国で300万人を動員した『エル・クラン』という映画だ。アルゼンチン国民全員が知る衝撃の実話を基に描かれるこの映画、社会風刺的でありながらブラック・コメディともとれる。
実はこの作品も『人生スイッチ』のプロデュースであるペドロ・アルモドバルが製作を担当している。