世界から何かをひとつずつ消しながら1日の余命を生きながらえる青年の葛藤を描いた感動ドラマ。『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』などを制作した映画プロデューサー・川村元気による同名小説の映画化。
日本中の人を涙させた感動の名作としてベストセラーになった原作であるが、悪い評価も目立ち、それが話題を呼んだ作品である。「映画を見る前に知っておきたいこと」では、原作の評価が割れた背景とこの作品の感情的な価値について掘り下る。
Contents
- 1 予告
- 2 あらすじ
- 3
映画を見る前に知っておきたいこと
- 3.1 賛否が割れた原作
- 3.2 日常では得がたい感情
予告
あらすじ
郵便配達員の仕事をしている30歳の青年。母が他界してから愛猫のキャベツと二人暮らし。実家の父とは疎遠になっていた。恋人はいない。別れてしまった彼女のことを、今でも引きずっている。趣味は映画鑑賞で、映画マニアの友達が一人。
そんな彼は、ある日突然、脳腫瘍で余命わずかと宣告され、死を前にした漠然とした不安に押しつぶされそうになっていた。
すると、彼の目の前に自分とそっくりな悪魔がどこからともなく現れ、「お前は明日には死ぬから、寿命を延ばすための取引をしないか」と持ちかける。世界から何かひとつずつ消すごとに、一日だけ寿命を延ばしてくれるというのだ。
青年は取引に応じ、世界から電話、映画、時計・・・と一日毎に様々なものを消されながら生きながらえた。世界から何かが消える、それは“何か”と育んだ思い出の記憶をも消してしまうことだった。
そして明日に死を控えた毎日の中で、元恋人との再会、親友や疎遠になった父との関わり、亡き母の手紙などを通して、命や人との関わりについて特別な思いを馳せてゆく。大切な人たちとの思い出を失いながら。
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賛否が割れた原作
原作の感想は「感動して涙が止まらなかった」と「稚拙な文章と浅いテーマに入り込めなかった」のふたつの意見に大きく割れている。
書籍化して販売されたものの元の媒体はLINEアカウントからの配信だったこともあって、文芸というよりはケータイ小説に近い。良く言えば「親しみやすい」悪く言えば「稚拙」と言われている根本的な理由はその辺りにありそうだ。
酷評の理由
原作者が映画プロデューサーであることも関係してかとてもビジュアル的で分かり易く読みやすい文章だった。映像化はそれほど難しくなかっただろう。
反面、下地の全くない突発的な設定の違和感や、読み手の想像力を働かせる余地があまりない文体は、文章に良く触れている人ほど受け入れがたいという意見には納得がいく。
それでも直接涙腺を刺激するようなパワフルな作品だっただけに「感動を押し付けられている」と感じる読者も少なくないのかもしれない。
親しみやすさと間口の広さ
僕は人生で大切なのは感情よりも方法論だと思っている。「大切だと気付く」よりも「どうやって大切にするか」、その方法論を身につけない限りは同じことを繰り返してしまうのは必然だ。
そして方法論は小手先の感情では絶対に身につかない。かけがえのないことに気付くのは素晴らしいことだが、本当に大切なことはいつも気付いたその先にあるのだと思う。
その点で物語は寓話的ではあるが、矜持や教訓を学ぶにはいささか物足りない。しかし、そこが同時にこの作品の魅力にもなっている。
設定や世界観に粗を見つけると途端に入り込めなくなる反面、親しみやすさと間口の広さで多くの読者の涙腺を決壊させた。この親しみやすさは、小説というよりも童話に近いかもしれない。
例えば絵本として子供向けにして装幀してあるとしたら、酷評を受けることなく、それこそ万人向けの名作とされたのかもしれない。
日常では得がたい感情
映画でも、原作同様の酷評はあった。
しかし、「自分のまわりにあるものはかけがえのないもの」というそんな当たり前のことを、より感覚的に理解させるためにとった手法がそんな酷評を生んでいる原因でもある。
僕たちは大切なものを失う経験をしても、何とか折り合いをつけるだけで精一杯だ。落ち込む自分を何とか倒れないように支えることに必死で、「自分のまわりにあるものはかけがえのないもの」だと気付ける心の余裕はない。
そう考えると「自分のまわりにあるものはかけがえのないもの」という改まった感情は、実体験の中ではなかなか得難いものだ。
説得力やリアリティを放棄して、その感情の一点を伝えようとしたのであれば、貴重な作品である。
粗を探さずに全てを受け入れた感情を開放させてあげたい。そんな映画である。
今、映画を見終えました。
とても、感動しました。
昨年、赤ちゃんの時から育てた愛猫をなくしてしまったので、レタスとリンクして、胸が痛くなりました。
明日は、普通に訪れる
と、何気なく過ごしていますが、改めて身近なものや、周りの人との関わりを考えさせられました。
観てよかったです。
Hanaさん、コメントありがとうございます。
猫を飼ってると、また映画を捉える視点も変わってきますよね。
僕も愛猫を亡くした経験がありますが、生きている時には何気ない日常の重要性に気付けないものですね。僕たちに比べると寿命も短いので、一緒に過ごせる時間は大事にしてあげたいです。
こんにちは。
昨日読書感想文のためこの小説を読みました。
目が痛くなるほど感動致しました。
読んでいると同感する場面がいくつもあり、逆に見習う部分も沢山ありました。
DVDが発売致しましたら、すぐに観ようと思っております。
快くお待ちしております。
それと、この記事はすっごく詳しく書かれていてとてもわかりやすく、見ていて楽しかったです。
あと、あらすじの部分を少し読書感想文に書かせて頂きました。勝手ながらすみません。
とても暖かく、感動する映画と小説ありがとうございました。
>yuyu
コメントありがとうございます。
読書感想文は夏休みの宿題でしょうか?
少しでもお役に立てたなら幸いです。
僕は、この作品は小説の方が好きです。
これからDVDを見ようというのに水を差してしまったらすいません。
映画がおもしろくないという意味ではなく、原作と映画の好みが少し割れる所もこの作品のおもしろさだと思っています。
是非、機会があれば映画の感想も聞かせて下さい。
私はこの世界から猫が消えたならは中学校全体の読書感想文の課題図書ですー
世界から猫が消えたならを中学生が学校でスクリーンで見ます。それを見るのは中学生だけで他の学年は見る事は出来ません。毎年読書会の本が毎年変わります。
去年はくちびるに歌をでした。今年は世界から猫が消えたならです。
最初に読んだ時は脳腫瘍グレード4て書いてあったのでとても怖いと思いました。
見る前は「また感動の押し売り邦画作品か」「動物もので泣かせにくる系ね」っと正直決めつけていたんですが、実際に映画を見ると、演出面では疑問があるシーンもあるものの、この映画のメッセージ性「この世界おける自分の存在、思い出」が思っていた以上に良くて楽しめました。
私自身、猫を飼っていることもあり
後半の猫のくだりはすごく切ない感覚に襲われました。
(過去にペットロスをしているので余計に。。)
面白い映画を紹介していただき、ありがとうございます。
谷下 豪志さん
コメントありがとうございます。
過去に飼っていた猫を亡くした経験は僕にもあります。
この作品が心に響くのは、同じような感情を抱いている人が多いですね。