映画を観る前に知っておきたいこと

屍者の帝国
伊藤計劃、未完の絶筆

投稿日:2015年9月11日 更新日:

屍者の帝国

求めたのは、21グラムの
魂と君の言葉

2007年にデビューしてからわずか2年程で早逝した、夭折のSF作家・伊藤計劃の残したオリジナル長編3作品をアニメーション映画化する「Project Itoh」第1弾!

死者蘇生技術が発達し、屍者を労働力として活用している19世紀末のロンドンを舞台に、まるで生者のように意思を持ち言葉を話す最初の屍者ザ・ワンを生み出す究極の技術が記されているという「ヴィクターの手記」を巡る壮大なドラマ。

伊藤計劃による未完の絶筆を親友であり芥川賞作家の円城 塔が完成させた長編小説『屍者の帝国』を原作に、『ハル』(13)の牧原亮太郎監督が映像化。『進撃の巨人』シリーズ(14/15)を手掛けたWIT STUDIOがアニメーション制作を担当した。


予告

あらすじ

19世紀末のロンドン。死者蘇生技術の進歩により、屍者が労働力として活用されていた。医学生ジョン・H・ワトソンは親友フライデーとの生前の約束に従い、自らの手で違法に屍者化を試みる。

屍者の帝国

© Project Itoh & Toh EnJoe / THE EMPIRE OF CORPSES

その行為は英国政府の諜報機関、ウォルシンガム機関の知るところとなり、ワトソンはその技術と魂の再生への野心を見込まれてある任務を命じられる。それは、一世紀前にヴィクター・フランケンシュタイン博士が遺した、まるで生者のように意思を持ち言葉を話す最初の屍者ザ・ワンを生み出す究極の技術が記されているという「ヴィクターの手記」の捜索だった。

屍者の帝国

© Project Itoh & Toh EnJoe / THE EMPIRE OF CORPSES

ワトソンは屍者フライデーを伴いロンドンを発つことに。親友の魂を取り戻すための世界を巡る壮大な旅が始まろうとしていた ──


映画を見る前に知っておきたいこと

「Project Itoh」第1弾にしていきなり未完の絶筆というのが、伊藤計劃の刹那の作家人生を物語っている。冒頭30枚の原稿が残されていた『屍者の帝国』は、生前親交の深かった円城 塔が遺族の承諾を得て書き継ぐ形で世に送り出された。

それはまさに、屍者の魂を取り戻すかのような過酷な作業であったと想像するが、どれだけ評価に恵まれようと、伊藤ならどう書いたのかという想いは拭えない。しかし、円城以外に書くことが許される作家もいなければ、彼なしでは完成を見なかったのもまた事実なのだ。想いは乖離するばかりである。

伊藤計劃と円城 塔

パスティーシュ小説(パロディの一種)の体がとられた『屍者の帝国』は、フランケンシュタインによる屍体蘇生術が普及した19世紀の世界を舞台に、著名なフィクションのキャラクターたちに加え、ナイチンゲール、楠本イネら歴史上の人物も登場する。主人公のワトソンとはシャーロック・ホームズの相棒ワトソンであり、カラマーゾフとはロシアの小説家ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』(1880)の主人公だ。

屍者の蘇生を巡る物語は、こうした伊藤の歴史ロマン溢れる設定から円城へと引き継がれる形となっている。

この二人は、2006年に第7回小松左京賞で落選後に当時SFマガジン編集長であった塩澤快浩に見出されるなど、デビューまでの苦節の道程を同じくしたことから、同世代の作家として親交が深い。それがこの未完の絶筆完成の最も重要な動機である一方、SFにおける伊藤と円城の作風は随分違って見える。

徹底的な描写を旨とする伊藤に対して、数理的小説の第一人者と称された円城の文体は、理論を真面目に突き詰める形で精緻に組み立てられていく。もちろんその持ち味は『屍者の帝国』でも存分に発揮されているわけだが、そこには夭折の作家となった友人の作に手を入れることへの覚悟が感じられる。

2012年、『道化師の蝶』で第146回芥川賞を受賞した円城はその記者会見の席で『屍者の帝国』を完成させることを初めて明言した。彼は多くの批判に晒されることを承知の上で、芥川賞作家になってようやくその資格を得たとしたのではないだろうか。

「大変優れた書き手であって、大変僕も影響を受けた作家」

円城 塔

出典:ja.wikipedia.org

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