映画を観る前に知っておきたいこと

【スティーヴ・マックィーン その男とル・マン】名作『栄光のル・マン』製作のすべて

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スティーヴ・マックィーン その男とル・マン

1971年に公開されたカーレース映画の名作にして、スティーブ・マックィーンの代表作である『栄光のル・マン』の製作過程を描いたドキュメンタリー。

マックィーンは自身もカーレーサーとして高い技術と情熱を持っていた。『栄光のル・マン』はフランスのル・マン近郊で行われるル・マン24時間レースの実際の映像と、映画用に撮影された映像とを巧みに編集し構成されている。そのため実際のレースさながらの臨場感、チーム同士の駆け引き、レーサーの孤独や緊張などが余すことなく映し出されている。実際のモータースポーツのファンにも強く支持された映画だ。

本作は『栄光のル・マン』の未公開シーンや、危険過ぎる撮影の裏側、マックィーンのボイスレコーディング、当時の関係者のインタビューなどからスティーブ・マックィーンという男、そして『栄光のル・マン』の製作の真実に迫る。執念、裏切り、雪辱、人生を変えた壮絶な映画製作のすべて!

このドキュメンタリー映画は『栄光のル・マン』を知らないことには見てもおもしろさは半減してしまうので、今回は『栄光のル・マン』のあらすじを紹介しておく。

  • 製作:2015年,アメリカ・イギリス合作
  • 日本公開:2016年5月21日
  • 上映時間:112分
  • 原題:『Steve McQueen: The Man & Le Mans』

予告

『栄光のル・マン』(1971)のあらすじ

モータースポーツの祭典と呼ばれるル・マン24時間レース。フランスのル・マン郊外で開催されるそのレースに、アメリカ人レーサーのデラニーはガルフ・ポルシェチームの一員として戻ってきた。前年の大会ではフェラーリの1台と衝突してリタイアし、相手のドライバーが死亡するという悲劇を経験していた。そのドライバーの未亡人リサが姿をみせ、フェラーリチームの伊達男オーラックの傍に居ることにデラニーは戸惑う。スティーヴ・マックィーン その男とル・マンデラニーはポルシェ20号車に乗ってスタートし、降りしきる雨の中、宿命のライバルであるスターラーが乗るフェラーリ8号車とトップを争う。ドライバー交代の合間、食堂でリサに声をかけるデラニーだった。ここへなぜ戻ってきたのか尋ねると、彼女は自分のためと答えた。スティーヴ・マックィーン その男とル・マン夜が明けた頃、大事故が発生する。フェラーリ7号車のオーラックがコース外へ飛び出し、マシンが爆発して重傷を負う。その事故に気を取られたデラニーも周回遅れに絡んでクラッシュし、なんとか無事だったものの20号車は大破してしまう。リサは悪夢の再現に震えていた。リサに「そんなに大切なの?早く走ることが?」と問われると、デラニーは「世の中苦手なことばかり。運転が得意なものにとってレースは、人生なんだ」と答えるのだった。スティーヴ・マックィーン その男とル・マンレースはポルシェとフェラーリが接戦のまま終盤を迎え、デラニーは選手交代して21号車をドライブするようチーム監督から要請される。激しく競り合いながら、先行車2台に迫るデラニーとストーラー。勝負は最終周回までもつれ込む。そして大観衆が見守る中、デラニーはストーラーを交わし、ついにトップに躍り出る。男たちが命の危険を顧みず闘い、限界を超えた過酷な24時間レースはその幕を閉じるのだった……

映画を見る前に知っておきたいこと

『栄光のル・マン』はレースそのものを映した映画

このドキュメンタリーを見てもらえばわかると思うが、『栄光のル・マン』という作品はどこまでもレースのリアリティを追い求めた作品である。スティーブ・マックィーンはレースのすべてを映画で見せることだけにひたすら拘った。当初『栄光のル・マン』の監督を務めたのは『荒野の七人』『大脱走』でコンビを組んだジョン・スタージェス監督だったが、観客の心に響くストーリーを求めたことで、人間ドラマを排除しようとするマックィーンとの確執が生まれ降板となった。

『栄光のル・マン』は1971年当時、あまりにレースにスポットを当てたことで一般層への受けが悪く、興行的には失敗してしまう。(なぜか日本ではヒットしている)そのためマックイーンは自身のプロダクションを解散するという代償を支払うこととなった。

しかし興行的な失敗を恐れず、自分が撮りたいものに拘ったことがこの映画を未だに色あせさせない。現代においてもこれ以上レースの臨場感を表現した映画は他にない。実際その拘りのために、現役レーシングドライバであるデビッド・パイパーは撮影に協力し、片足を切断する事故を起こしているほど、この映画の完成には多くの犠牲が払われている。『スティーヴ・マックィーン その男とル・マン』は、ドキュメンタリー映画の製作を追ったドキュメンタリー映画と言えるほど、『栄光のル・マン』はリアリティに特化した作品なのだ。

ここまで余分なものを削ぎ落とした映画はもはや芸術的と言っても過言ではない。同時にスティーブ・マックィーンという男が愛される理由もそこにある。ロマンに狂った男の姿は時代を超えてなお格好良いものである。

ル・マン24時間レースとは?

ル・マン24時間レースとは、フランスのル・マン近郊で行われる、24時間でのサーキット周回数を競う耐久レースである。1923年にスタートした歴史あるレースで、フォーミュラ1のモナコグランプリとアメリカのインディ500と並び「世界三大レース」と呼ばれる。またデイトナ24時間レース、スパ・フランコルシャン24時間レースとともに「世界三大耐久レース」とも呼ばれる。世界最高峰のレースの一つである。

マックィーンは『栄光のル・マン』の撮影でル・マン24時間レースのコースを走ったことで自信を持ち、同年のル・マン24時間レースへ参加しようとしていた。しかし、プロダクションの反対により実現はしなかった。生涯ル・マン24時間レースへ参加する機会に恵まれなかったマックイーンはそのことを悔やんでいたが、後に長男のチャド・マックイーンが選手として出場し、父親の思いを果たしている。

-5月公開, ドキュメンタリー, 洋画
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