映画を観る前に知っておきたいこと

フランス組曲
アウシュビッツに散った作家が綴った禁断の愛

投稿日:2015年12月5日 更新日:

1942年、ナチス・ドイツ占領下のアウシュビッツに散った作家イレーヌ・ネミロフスキーが残したひとつのトランク。そこには命の危険にさらされながら書き続けた未完の小説「フランス組曲」が眠っていた。彼女の死後350万部を越えるベストセラーとなり、70年の時を経てついに映画化される!

監督は『ある公爵夫人の生涯』のソウル・ディブ。キャストには『マリリン 7日間の恋』のミシェル・ウィリアムズ、『君と歩く世界』のマティアス・スーナールツら実力派を迎え、使命に翻弄されたフランス人女性とドイツ軍中尉の禁断の愛を映し出す。


  • 製作:2014年,イギリス・フランス・ベルギー合作
  • 日本公開:2016年1月8日
  • 上映時間:107分
  • 原題:『Suite Francaise』
  • 映倫区分:PG12
  • 原作:小説「フランス組曲」イレーヌ・ネミロフスキー

予告

あらすじ

1940年6月フランス・パリ。ドイツ軍の爆撃によって、パリは無防備都市となったことで市民はフランス中部の田舎町ビュシーに避難した。その頃ドイツとフランスで休戦協定が結ばれた。その結果フランスはナチス・ドイツの占領下に置かれることとなった。

フランス組曲

田舎町ビュシーで戦地に行った夫を待つリュシルは、厳格な義母と大きな屋敷で暮らしていた。結婚してから3年、彼女が窮屈な日々を送っているその屋敷に、ドイツ軍の中尉ブルーノが滞在することになる。心すさむ占領下の生活で、ピアノと音楽への愛を共有する二人は、いつしか互いの存在だけが心のよりどころになっていく。

フランス組曲

それは同時に、狭い世界に生きる従順な女性だったリュシルが、より広い世界へと目を向ける転機にもなっていくのだった。使命に翻弄される二人の禁断の愛が過酷な運命を引き寄せる……


映画を見る前に知っておきたいこと

原作者であるイレーヌ・ネミロフスキーはロシア帝国領だったウクライナ・キエフに生まれたユダヤ人だった。ロシア革命後に夫と二人の娘とフランスに移住したが、そこでフランス憲兵に拘束され、1942年アウシュヴィッツで亡くなった。

その時、イレーヌが残したトランクを二人の娘は母の形見としてそれを大事に持っていたが、辛い思い出に蓋をし続けた結果、トランクの中身が確認されることはなかった。その中には日記が入っていると思い込み、まさか未完の小説が入っているとは考えなかったのだ。

そのため「フランス組曲」がトランクの中に眠っていた期間は実に60年に及んだ。2004年に出版されると、たちまち全世界で350万部を越えるベストセラーとなり、らさらに10年後に映画化されることとなったのだ。

本作が出来上がるまでには70年という歳月が流れている。イレーヌもともと人気作家であったため、その歳月はキャリアを悲観するものではないが、そこには家族の悲しい歴史がある。

イレーヌ・ネミロフスキーの冷静さと心の強さ

本来、「フランス組曲」は5部構成で完成する予定だったが、実際に書かれたのは2部までであった。そのため物語はフランスに駐留するドイツ兵たちがロシア戦線へ送られるところで終わっている。

ここまで未完の作品がベストセラーとなったのは、日の目を見るまでの過程に多くの人が興味を持ったというのもあるだろう。それと同時にイレーヌの作家としての信念に多くの人が感動させられたのではないだろうか。ユダヤ人迫害によって命が危険にさらされる中、最期まで執筆し続けたことには驚きと賞賛しかない。

また“ナチス”という言葉を一度も使用せず一面的な捉え方では決して描くことのできない敵、味方を越えた視点で書かれた「フランス組曲」は彼女の人間としての強さも感じる。

それは自身の運命をただ呪うわけではなく、冷静に国と戦争を見つめることによって初めてできることだ。フランス人女性とドイツ軍中尉の禁断の愛を描くことは、渦中のユダヤ人にとって生半可なことではない。これこそ作家魂である。

彼女が残したメモの中にはこう書かれていた。

「1952年の読者も2052年の読者も同じように引きつけることのできる出来事や争点を、なるだけふんだんに盛り込まないといけない」

迫害を受けながら冷静さと心の強さを保つことで、70年後も普遍的な価値観を持った作品を残すことに成功している。

本作はそんな彼女の意思を継ぐ形で、原作に忠実に制作されている。映画を見るだけでもイレーヌの小説に触れる事ができる。

最期に、彼女が39歳という若さで亡くなる1年前の1941年に書き残した文章を紹介したい。それはイレーヌ・ネミロフスキーがどのような人間であったか、どのような作家であったかを端的に表したものである。

「いったいこの国は私をどうするつもりだろう。国が私を拒絶するなら、こちらは国を平然と観察し、その名誉と生命が失われていくのを眺めていよう。それにほかの国々が私にとって何だろう。すべての帝国は滅びる。ただそれだけの話だ。それを神秘的な観点から眺めようが、個人的な観点から眺めようが、結局は同じこと。冷静さを保とう。心を強く持とう。じっと待とう」

1941年 イレーヌ・ネミロフスキーのメモより

-ラブストーリー, 洋画
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執筆者:


  1. 柴山登美子 より:

    一言では言い表せませんが 心に残りました。他の人達にもみて欲しいです

  2. yuki より:

    人生の転機になる(なった)作品です‥状況を教えてくださりありがとうございます

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