「フーシ、君のような人が増えたなら、世界はもっと幸せになれるのにー」
フランシス・フォード・コッポラ
『ゴッドファーザー』の監督、あのフランシス・フォード・コッポラが絶賛した2015年の北欧映画No.1!
43歳独身、デブでオタクでシャイで冴えない心優しい大男フーシが、吹雪の夜に心に傷を負った一人の女性と出会い運命的な恋をした……
彼女を守りたい一心で知らず知らずのうちに自分の殻を破るフーシをチャーミングに描いた、心揺さぶるオフビート・ロマンス。アイスランドの片隅から、誰もが虜にる切なくも感動的な愛の物語りが届けられた。
- 製作:2015年,アイスランド・デンマーク合作
- 日本公開:2016年6月18日
- 上映時間:94分
- 原題:『Fusi』
- 映倫区分:R15+
Contents
予告
あらすじ
アイスランドの首都レイキャビクの空港で荷物係として働く43歳のフーシ。母親と二人暮らしで、会社では単調な作業をこなし、金曜日は馴染みのレストランでパッタイを食べる、それが彼の日常だった。ささやかな楽しみは戦車や兵士の小さなフィギュアでジオラマを作り、エル・アラメインの戦いを再現すること。大好きなヘビメタをラジオ番組にリクエストすること。職場の同僚は大人しいフーシを馬鹿にして、何かにつけてからかってくる。未だに独身で彼女ができたこともない彼を心配した母親と母の彼氏は、フーシに出会いのきっかけを作ろうと、誕生日にカウボーイハットとダンス・スクールのクーポンをプレゼントする。
ある時、ヘラという少女がフーシと同じアパートに引っ越してくる。父親の留守で家に入れないのを見かねて自分の家に入れ、ケーキとミルクをご馳走して一緒に遊ぶフーシ。ヘラはフーシに「どうして大人なのに奥さんいないの?」と痛い質問をしてくるが、フーシの優しさを知る理解者でもあった。それからフーシは母親にせき立てられてしぶしぶダンス・スクールへと向かうが、結局中に入る勇気が持てず、自分の車の中でヘビメタを聴いていた。するとスクールから出てきた小柄な女性シェヴンが突然フーシに話しかけてくる。吹雪が怖くて歩いて帰れないという彼女を車で送ったフーシは、次のダンスレッスンに誘われ、思わずOKしてしまうのだった。
レッスンを終えたフーシは、パッタイの店でシェヴンと夕食を共にし、車の中でいつものラジオ番組に彼女の好きなカントリー音楽をリクエストする。家でお茶を飲んでいかないかと誘われたフーシは、初めての恋の感触に胸をときめかせる。そんなフーシに親友モルドゥルは「男ってのはやるときゃしっかりやるもんだ」と発破をかける。シェヴンが好きな旅行の計画を立て、彼女の職場の花屋を訪ねたフーシは、店主に彼女が既に働いていないことを知らされる。「あなたを誤解させたみたい」と突然フーシを突き放すシェヴンだった。
落ち込んでいると、同僚から仲直りにとパーティに誘われるが、酔った彼らは女性経験のないフーシに無理やりコールガールを押し付ける。それに耐えかねたフーシは思わず暴力を振るってしまう。翌日仮病を使って会社を休むが、ヘラにせがまれ車でドライブに連れていくと、幼女誘拐と間違われて警察に連行されてしまう。
何をやってもうまくいかないフーシだったが、意を決して再びシェヴンを訪ねることに。しかし、彼女は荒れ放題の部屋に閉じこもっていた。シェヴンは心に深い傷を抱えていたのだ。フーシは彼女を守りたい一心で、初めて自分から行動を開始する……
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映画を見る前に知っておきたいこと
その年の最も優れた北欧映画に送られるノルディック映画賞
あのフランシス・フォード・コッポラ監督や、『天使にラブ・ソングを…』(92)の主演女優ウーピー・ゴールドバーグが絶賛したことで話題となっているアイスランド映画だが、2015年のノルディック映画賞を受賞している。この映画賞はその年の最も優れた北欧映画に送られる。
ノルディック映画賞に参加しているのはデンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンの北欧五ヵ国で、それぞれの国から1作品がノミネートされ選考される。
この受賞歴が、本作の「北欧映画No.1!」というキャッチコピーになっているのだ。
北欧映画という括りは本来デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンの五ヵ国で製作された映画という意味だが、難解で暗く重たい映画を連想する人は多いと思う。
それはカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00)による印象が強いからだと思われる。アイスランドの女性シンガーであるビョークが主演だったことも影響して日本でもヒットした映画だ。当時、話題作として『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を見た人は、その暗く重たい雰囲気に驚いたのではないだろうか。
また、北欧で起こったリアリズムを追求した映画運動“ドグマ95”や、大自然による映像美も北欧映画に共通しており、その芸術性に大きく影響している。
本作は「北欧映画No.1!」と評されてはいるが、いわゆる北欧映画のイメージとは異なる作品だ。あらすじだけ見ればハリウッドのロマンチック・コメディのようでもあるが、それもまた違う。
主人公フーシのキャラクターをチャーミングに描いた独特のオフビート感やユーモアは作品にどこか温かい空気を与えているが、北欧映画らしいリアリティはしっかりと追求されている。
リアルだからこそハッピーエンドとは限らない。平凡だけど先が読めない。そんな映画だ。