映画を観る前に知っておきたいこと

手紙は憶えている
サスペンスとホロコースト映画の見事な融合

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手紙は憶えている

70年前、家族を殺したナチスを探せ。
容疑者は4人。手がかりは1通の手紙のみ。

失われていく記憶と忘れられない記憶。奇しくも、彼にとってアウシュヴィッツは後者だった。

目覚める度に亡き妻の記憶が遠ざかる90歳のゼヴに宛てられた1通の手紙。70年前に家族をナチスの兵士に殺された彼は復讐を決意する。手紙は老いた男の記憶となりながら、めくる度に謎を浮かび上がらせる衝撃のサスペンス。

監督は『スウィート ヒアアフター』(97)を始め、数々の名作を世に贈りだしてきたカナダの名匠アトム・エゴヤン。

『人生はビギナーズ』(10)で史上最高齢でのアカデミー賞助演男優賞に輝いたクリストファー・プラマーが、記憶もおぼつかない主人公ゼヴを演じる。


予告

あらすじ

最愛の妻ルースが死んだことすら覚えていられないほど、物忘れがひどくなった90歳の男ゼヴ・グットマン(クリストファー・プラマー)。ある日、彼は友人のマックス(マーティン・ランドー)から1通の手紙を託される。

手紙は憶えている

© 2014, Remember Productions Inc.

アウシュヴィッツの生存者である二人は、70年前に家族をナチスの兵士に皆殺しにされた同じ経験を持つ。マックスの手紙は、犯人が身分を偽り生きていることをゼヴに伝え、すでに容疑者は4名にまで絞り込まれていた。犯人の名はルディ・コランダー。

手紙は憶えている

© 2014, Remember Productions Inc.

体が不自由なマックスに代わり、復讐の旅へと出ることを決意したゼヴ。手紙と微かな記憶を頼りに、90歳のナチハンターが放たれる……


映画を観る前に知っておきたいこと

アルメニア人の血を持ち、オスマン帝国によるアルメニア人虐殺について扱った映画『アララトの聖母』(02)を撮ったアトム・エゴヤン監督。そんな彼をして「完膚なきまでに独創的なストーリー」と言わしめたこの映画の脚本は、ホロコーストを題材にしたこれまでの作品とは全く違うアプローチによって物語が構築されている。

しかもそれが、本作が脚本家デビューとなったベンジャミン・オーガストによるのだから驚きだ。

ホロコースト映画として

90歳は恐らく、アウシュヴィッツの生の記憶を持つ人間が復讐に身を投じることができるぎりぎりの年齢。

文字通りホロコーストの記憶を現代に甦らせていくこの映画の最も素晴らしい点は、過去の回想シーンが一切挟まれないことだ。

もし記憶のフラッシュバックを映像化してしまえば、どんなに観る者を欺くようなラストが用意されていたとしても、「完膚なきまでに独創的なストーリー」とまではいかないだろう。サスペンス、すなわち不安や緊張を最大限に引き出すために用いられた認知症という設定が巧みに活かされた構成が斬新なのだ。

決してホロコーストを直接的に伝えるような映画ではないが、そこには家族を殺された者と殺した者、ナチスとユダヤ人の今も決して埋まることのない溝が横たわり、真実に行き着いた先にはようやく過去の罪と向き合う人間らしさまでを映し出す。

それは、どちらも歴史に翻弄された被害者であると伝えるように……

-ミステリー・サスペンス
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