映画を観る前に知っておきたいこと

天の茶助 自分の運命は天によって決められているのか?

投稿日:2015年5月30日 更新日:

天の茶助

天界ではたくさんの脚本家が存在し、人々の人生のシナリオを書いていた。天界の茶番頭、茶助は一人の若い女性を事故死から救うため、地上に降り立つ。笑いと涙、愛とスリルのファンタジードラマ。

監督は『弾丸ランナー』『うさぎドロップ』のSABU。主演に『うさぎドロップ』以来2度目のタッグとなる松山ケンイチを迎え、自身で書いた小説を映画化した。SABU監督は脚本をオフィス北野にオファー。天才・北野武を擁するオフィス北野が製作に参加している。ベルリン映画祭正式出品作品。

    • 製作:2015年,日本
    • 日本公開:2015年6月27日
    • 上映時間:105分
    • 原作:小説『天の茶助』SABU

天の茶助 (幻冬舎文庫)

予告

あらすじ

―天界。

白い霧が漂い、行き当たることがないかのように思えるほどの広間。そこでは数えきれぬほどの天界の脚本家が、巻紙に下界の人間たちの「シナリオ」を書いていた。外界の人間たちは、天界の脚本家のシナリオ通りの人生を生き、それぞれの運命を全うしている。
天の茶助

茶番頭の茶助と口のきけないユリ

茶助(松山ケンイチ)は天界の茶番頭。脚本家たちに茶を配りながら、決められたシナリオを生きている人間たちの姿を興味深く眺めていた。中でも、口のきけない可憐で清純な女性・新城ユリ(大野いと)への関心には恋心にも似た感情があった。

だが、ユリは車に跳ねられて死ぬ運命にあった・・・。その事を知った茶助はなんとかユリを助けたいと思うようになっていた。ユリを救う方法はたったひとつ。シナリオに影響されない天界の住人である茶助が自ら外界に降り、彼女を事故の運命から回避させるしかなかった。

果たして茶助はユリを救うことが出来るのか―。
天の茶助

映画を見る前に知っておきたいこと

映画監督・SABU

天の茶助
専門学校でファッション・デザインを学ぶ傍ら、パンクバンドで音楽活動も行っていた。元々はミュージシャンを目指していたが、所属事務所の意向で俳優業に転向。ひょんな事から書いた脚本が評価され、『弾丸ランナー』で映画監督デビュー。国内外にその名を知らしめた。自身が音楽活動をしていた過去からか、本作には人気バンドOrange RangeのRYOやDJ KEINなど、日本の音楽シーンを牽引するミュージシャン達が出演している。

映画はオリジナルストーリーだが、小説を原作としている。というのもSABU監督は「小説の映画化が非常に多いので、それなら小説から書いてやれと思った」とインタビューで答えている。映画を作るために脚本ではなく、小説から書いたというのも新しい試みだ。

ベルリン映画祭での評価

天の茶助
『天の茶助』は2015年2月に開催されたベルリン映画祭のコンペティション部門に正式出品された。選ばれた19作品の中の”大トリ”として最後に上映され、上映終了後には観客席から「ブラボー!!」と歓声が場内に鳴り響いた。

「SABU監督は運命を書き直すエネルギッシュなロマンティック・ファンタジーで衝撃を走らせた」
―米ヴァラエティ誌

と、海外からの評価も高い。

SABU監督の作品は、過去に『弾丸ランナー』『疾走』がパノラマ部門、『アンラッキー・モンキー』『MONDAY マンデイ』『幸福の鐘』『蟹工船』がフォーラム部門に選出されているが、コンペティション部門に選出されたのは実は本作が初めて。自身のコメディースタイルを崩さずに辿りつけたことに、深い感慨を抱いたようだ。

死生観と運命論

数年前、死について現実的に考える機会がありました。なぜ自分は生かされているのかを考えることが大切だと思う一方で、自ら生きているんだと思うことも大切だと思うんです。そのせいか「死=マイナスイメージ」はあまり有りません。たしかに死は悲しいですけれど、それですべてが終わりではない筈なんです。
―SABU監督

”何かに生かされている”という感覚がある一方で、生きる活力とでも言うのだろうか、そういうのは自分で捻り出さなければ、待っていても何も起こらない。

運命は螺旋だという話もある。消極的にうずくまっていると、人生は底なし。どこまでも堕ちて行く。自ら生きると前を向いて行くと、どこまでも登っていく。自分がどの地点にいるのかを考えることはあまり意味がない。ただ、前向きなエネルギーと後ろ向きなエネルギー、どちらも死してなお、周りの人々に影響を与えるのは確かだ。

そんなふうに自分自身の運命論や死生観と対比しながら、この映画のユーモアやスリル、ドラマを楽しむのもまた一興だ。

-ヒューマンドラマ, ファンタジー, 恋愛, 邦画

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